ゲスト 原田 謙介 NPO法人 YouthCreate 代表
皆さんと記者が一緒に考え、課題解決へ<朝日新聞・未来メディア塾 未来メディアカフェ vol.6>(2016/2/17開催)
イノベーション分野のスペシャリストをゲストに招き、参加者と朝日新聞記者がともに社会的な課題を解決するためのアイデアを考える「朝日新聞・未来メディア塾 未来メディアカフェvol.6」が2016年2月17日、朝日新聞メディアラボ渋谷分室(東京・渋谷区)で開催された。
(上)に続き、今回は 「ついに来た!18歳選挙権」というテーマのもと、若者の政治参加を促すために参加者からだされたアイデアを紹介する。
ゲストのNPO法人Youth Create代表・原田謙介さんとコーディネーターの朝日新聞政治部・土佐茂生記者から18歳選挙権の意義や政治の本質に関する話を聞いた後、後半はグループワークからスタート。立場の異なる人たちの意見を一つにまとめて街に公園を作る"身近な政治"の難しさと面白さを体感した後、政治に関心を持つ若者を増やすためのアイデアとして会場から上がってきた意見とはーー。
住民たちの異なる意見をまとめるのも政治
「政治は学ぶものでもなければ知るものでもない。自分が暮らす社会や街を良くするためにどう使うかを考えることが重要」
と話す原田さんの主導でこの後、グループワークが行われた。
「公園をつくろう!」というテーマで行われたワークショップは、実際にYouth Createが高校や大学で行っているもの。5人1組でチームを作り、「近隣の住民」「公園を使う中学生」「幼児を連れて利用する母親」「お年寄りの方」「商店主(コンビニの店長)」という異なる立場が割り振られる。そして、各チーム毎に配られた未完成の公園の見取り図を前にそれぞれの立場になり切った参加者たちは、互いの意見をぶつけ合いながら自分たちの街の公園を作っていく。
はじめは戸惑っていた学生たちも「家の近所にできるなら、騒音が気になるのでなんとかしてほしい」「小さな子どもを連れて公園へ行くから、激しい遊びをする小中学生とはゾーン分けしてほしい」「中学生は学校のグラウンドで遊べばいいんじゃない?」「いや、中学生だって住民の一人なんだからグラウンドを作ってほしい」など、次第にそれぞれの立場になり切った意見を主張し、他の人の意見に賛成や反対を述べるうちに、話し合いの難しさと面白さを体験していった。
「民主主義において、話し合いによって一つのことを決めていくことはすごく大事なこと。いろんな意見がある中で合意形成していくのは、政治では多数決よりも多い手法かもしれない」
と原田さん。実際に原田さんが住む中野区でも1つの公園を作る話があり、「自転車を停めるスペースを増やして」という市民からの意見が反映され、駐輪場スペースが追加されたケースがあったという。
「一人の意見であっても、政治家や行政が全体的に必要なことだと判断すればその意見が通ることもある。政治に参加するということは、選挙だけではないことをこれからも意識してほしい」
と話した。
若者と政治がつながるためには、誰が何をすべき?
最後に、参加者全員で「若者と政治がつながるためには、誰が何をすべきか」というテーマについてチーム内で話し合ったアイデアを発表した。
「数十万単位でフォロワーを持つ若い著名人が、SNSで『選挙へ行った』『政治に対して僕はこう思う』など発信すれば、若者に対する影響力は大きいと思う」
と、若者にとって身近なSNSを活用したアイデアに続き、
「学校でもっと政治について考える機会を作った方がいい。TPPや国防予算について高校生はどう思うか。自分で考える経験が積めれば政治に対してもっと前向きになれるのでは」
「国の問題に意見を述べるのはハードルが高いが、今日のグループワークのような身近な問題だったら、普通の学生にでも意見が言えそう。それが政治参画への第一歩につながればいい」
「若者向けの街頭演説が少ないように思う。いろんな政党の政治家を学校に呼んで話をする機会を作れたら政治がもっと面白くなり、投票にも足を運ぶのでは」
など、教育現場で政治を考える機会、政治に触れる機会を作るというアイデアが続いた。中には、メディアに対する意見も。
「学校でメディアについて教えることも大事だと思う。たとえば、同じニュースでも姿勢の異なるメディアでは報道の仕方が変わってくる、ということを教えるべきでは」
「報道の仕方も問題があるの。不倫で取り上げられている政治家がいるが、その人間性ばかりにフォーカスを当ててスキャンダラスに報道するのではなく、議員としての政策や政治的意見を正しく伝えてほしい」
「新聞社の意見や考え方は難しい。もっと目線を下げて分かりやすく伝える工夫してほしい」
などの声が挙がった。
2016年を「若者の政治参画が始まった年」にしよう!
この日、最も多く挙がった意見は「政治についてもっと話せる場所がほしい」「話せる雰囲気を作りたい」というものだった。
「政治について自分の意見を話すこと自体、タブー視されている気がする。もっとオープンに語り合える雰囲気にできたらいいのに」
「フェイスブックやツィッターに自分の意見を書き込んだり、そういう人の意見にいいね!を押したりすると、他の友達から敬遠される気がする。ネットで政治的活動をしても嫌な思いをしないようなシステムが欲しい」
など、次々と要望を述べる学生たち。最後にその声を踏まえ土佐記者が
「僕自身、18歳の時には全く政治のことなんて考えてもいなかった。だからこそ言いたいのは、18歳選挙権になっても『大丈夫だよ』ということ。政治を難しく考える必要はない。まずは自分の近くにいる親や友達、先輩になんとなく話をしてみてほしい。そして、今日このイベントに参加したように、悩んだときはまず行動することが大事。動くことで初めて見えることもあると思う」
とまとめ、この日のイベントは終了した。
短い時間に政治を通して自分の意見を語り合った参加者たち。新たに加わった朝日新聞の記者たちを交え行われた交流会でも、積極的に意見や感想を交わしていた。
「今から10年後、2016年を振り返ったときに『選挙権が下がった年』で終わるのか、『若者の政治参画が始まった年』となるのか。それは僕も含めてみなさん一人ひとりの行動によると思う。これから若者の意識、社会全体の意識が変わっていくはず。僕はどんどん若い人の力が社会の中で、地域の中で活躍する世の中になっていってほしいと願っている」
と語った原田さんの言葉がいつまでも心に残った。