新聞記者と参加者が、ともに社会課題解決へのアイデアを探る新しい試み(続き)

様々な社会課題に向けて、新聞記者と参加者がともに解決策を模索する新しい試み、「未来メディア塾『未来メディアキャンプ』」その2日目の模様を伝える。

~2015年 朝日新聞・未来メディア塾「未来メディアキャンプ」第2日目の開催報告(2015/12/6開催)

様々な社会課題に向けて、ワークショップやフィールドワークを通じて新聞記者と参加者がともに解決策を模索する新しい試み、「未来メディア塾『未来メディアキャンプ』」(主催:朝日新聞社 特別協力:慶應義塾大学SDM研究科 協力:Think the Earth)。その2日目の模様を伝える。

第1日目(11月8日)から約1ヶ月後の12月6日、慶應義塾大学・三田キャンパスに集結した約50人のプログラム参加者と9人の朝日新聞記者。その会場となった同大学グローバルセキュリティ研究所に突然、「号外で〜す!」のかけ声が響き渡った。

朝日新聞社の赤い配達ジャージに身を包んだ慶應義塾大学SDM研究科の生徒たちが、テーマごとに分けられた9チームそれぞれのフィールドワークの様子を記載した「号外新聞」を配ってくれた。このサプライズ演出に、会場は活気づいた。

プログラム1日目後の約1ヶ月間、各チームは、初対面だったメンバーとわずか7時間で練り上げた仮説の解決アイデアを検証するため、関連する様々な現場へのフィールドワークやキーパーソンへのインタビューを繰り返してきた。

「課題の本質は何か」

「実用的で革新的な解決策とは何か」

「メディアをいかに活用するか」

新たな仮説、そしてまた修正。仕事や授業など日中はそれぞれの生活が忙しい中、全員が必ず毎週集まって議論を重ねたグループもあれば、刻々と迫る2日目の前日、深夜までファミレスで粘ったところもあったようだ。

そうしたフィールドワークの各チームからの経過報告を事務局側が凝縮してみせたのが、この記念の「号外新聞」だった。

これらの検証作業の期間を経て、再び各チームが集まった2日目。蓄積したデータを踏まえ、チームごとに議論が改めて繰り返され、アイデアの収束、発表準備へとプログラムはさらに進んだ。

2日目後半、各チームのリーダーが発表の順番を決めるくじを引いた。そして、解決アイデアの評価を行う審査員3名(ロフトワーク代表取締役 林千晶氏、朝日新聞メディアラボ室長 堀江隆氏、CNET Japan編集長 別井貴志氏) を前にいよいよ、9チームによる課題解決アイデアの最終発表が始まった。

⇒9チームのアイデアと各賞発表、審査員講評はこちらからhttp://www.asahi.com/miraimedia/juku/campaward2015.html

控え室にて審査が行われている間、メインルームでは慶應義塾大学SDM研究科の佐藤亮や竹田和広を中心とする学生主導で未来メディアキャンプ全体の振り返りが行われた。『ワールドカフェ』という、異なるチームのメンバーが混ざり合う、創発的性に富んだ会話の手法だ。テーブルからは、キャンプを通して初めて体験した『SDM的』課題解決プロセスの斬新さについて、様々な感想が興奮と共に聞こえてきた。

大切なのは「会議のあり方」ではないか。振返ってそう指摘したのは、二つの賞を獲得したNEWS TECHのチームに所属した朝日新聞社の竹下隆一郎記者だ。「初めて会う人と対等に話し、短期間でアイデアを出し合い、何より、バックグラウンドもお互いの知識も異なる者同士が生み出すパワーを大事にすれば日本も変わるのかもしれません」と。

たった1ヶ月という期間。システム思考やデザイン思考の手法を用い、記者と参加者の協働が生んだ社会課題解決のアイデアの数々。こうしたキャンプの成果は、メディアの未来に向けてひとつの試金石になりうるものかもしれない。

メディアの価値とは何か。商品としての「情報発信機能」だけであろうか。そのプロセスで活躍する「記者」の情報感度、幅広い知識、ネットワーク、物事への大局的視点...こうした「存在」そのものもまた、メディアの付加価値ではないだろうか。

その記者が、人々と同じステージでともに思考する。いま一度、メディアというものの定義を広く考えてみることで、これまでとは違った新たな社会貢献の形が見えてくるのかもしれない。

(慶應義塾大学SDM研究科 世羅侑未)

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