企業は障害者雇用にどう対応すべきか

どちらにも問題があり、だからこそ、障害者が退職してしまっているという現実。企業・障害者双方の壁がなくなり、皆がイキイキして働けて、企業の価値創造につながることができれば、素晴らしいCSRになると思います。

先日、内閣府より「平成25年版障害者白書」が発表されました。また、先月の9月は障害者雇用の推進を図ることなどを目的とした「障害者雇用支援月間」でした。今年4月から民間企業の「法定雇用率」が従来の1.8%から2.0%に引き上げられ、今年度は企業も色々なアクションを強いられているところだと思います。

「平成25年版障害者白書」の推計によると日本の障害者は身体障害者366.3万人、知的障害者54.7万人、精神障害者320.1万人の合計741万人。国民の約6%に該当する計算だ。このようにごく一部の人々とは言えない障害者だが、雇用面では遅れが目立つ。

従業員5人以上の規模の事業所で働く障害者は身体障害者34.6万人、知的障害者7.3万人、精神障害者2.9万人で合計約45万人。精神障害者は事業者に伝えずに働くケースもあり、実態よりかなり低めの数字になっている可能性もあるが、それでも障害者雇用が進んでいるとは言えない状況だ。

「障害者雇用率ランキング」トップ100

上記のように、実際の人数より採用されている人数がいかに低いかがおわかりいただけるかと思います。

私はCSRコンサルタントとして名乗り、CSR関連のお仕事をさせていただいておりますが、障害者雇用もCSRの一部とはいえ、ちょっと特殊で現場の空気感までわからないのが現状です。僕でさえそうなので、一般事業会社の担当者はもっと理解していないとも言えるでしょう。

障害者雇用とCSR。なかなか、簡単な話ではないみたいです。企業と障害者の壁はなぜ存在するのか、現場の声はどういうものなのでしょうか。

==障害者の働くことへの本音==

障害のある人自身は、あまり意識していない人も多いかもしれませんが、企業からはこのような声を多く聞きます。これは、私が日々障害者雇用のコンサルをする中で聞く声です。「障害を理由に仕事を断る」、「成果を出す意識が低い」、仕事に対して甘えがある」など。まとめて言ってしまえば、仕事に対してのコミットメントが弱いということです。

もちろん、すべての障害のある人がこうではありません。しかし、障害があることで、両親が子どもに対して、「障害があるからできる限りやってあげよう」というご家庭で育った障害のある人や福祉に守られて育ってきた人にはこういう人が多い傾向にあるのは、私も人事担当者の方も同意見です。

なぜ障害者は退職してしまうのか。障害者と企業の間にある大きな溝とは?

これは障害があるないに関わらず、ビジネスパーソンとして甘えがある(ありすぎる)ことは、喜ばしいことではありませんね。障害者であろうがなかろうが、タスクの難易度がどうかは別としても、課せられた仕事は的確にこなさなければなりません。

もちろん障害の配慮は働く上での前提条件です。ですから、配慮があり、働ける土壌があるなら、まずは「自分に何ができるのか?」にフォーカスし、全力でそれを果たして行くことが大事なのです。残念ながら「認めてくれない」という言い分は、まだあなたが価値を出していない証拠です。

なぜ障害者は退職してしまうのか。障害者と企業の間にある大きな溝とは?

配慮に関しても、ダイバーシティやコンプライアンスなども含め、これも障害があるないではなく、マイノリティもマジョリティーも関係なく、現場には必要なことですよね。

==企業側の本音==

通常の採用であれば、経営戦略や売上アップ、仕事量の分配等のために人を雇用します。しかし、障害者雇用は、法律遵守のために障害者手帳の所持者を雇用します。そのため、入社後の配属部署では、「何のためにこの人は自分の部署に来たのか」と部署の人たちは思うでしょう。その理由は「法律だから採用しなきゃいけないんだ」と説明を受けます。

それは事実であり間違いではありませんが、ただでさえ「障害」はあまり身近ではないため、戸惑いを持ちがちです。にも関わらず、それだけの説明で、しっかりと育成、評価され、本当にそこで働く障害のある人がモチベーション高く働けるでしょうか。

なぜ障害者は退職してしまうのか。障害者と企業の間にある大きな溝とは?

もちろん企業側にも問題はある。本当の意味での"配慮"ができているのでしょうか?こちらも同様に、障害者であれ、健常者であれ、従業員のモチベーションの維持・向上を組織として、仕組み化できているのでしょうか?法律だから採用することは当たり前の事実なのですが、障害者本人のモチベーションにはなりえない気もします。

参考記事の筆者は、「障害者の退職の背景には、双方に大きな壁があるからだ」としています。どちらにも問題があり、だからこそ、障害者が退職してしまっているという現実。企業・障害者双方の壁がなくなり、皆がイキイキして働けて、企業の価値創造につながることができれば、素晴らしいCSRになると思います。

特例子会社(障害者雇用に特別な配慮をし、障害者の雇用の促進等に関する法律により、一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の認可を受けて、障害者雇用率の算定において親会社の一事業所と見なされる子会社)という制度もありますし、色んな形での実践は不可能ではないでしょう。

従業員の雇用(労働環境)については、不備があるとすぐにブラック企業のレッテルを貼られてしまう昨今。今後は、長時間労働とならび障害者雇用もブラック測定の1項目になるのかもしれません。

障害者福祉、障害者雇用について詳しく知りたい方は、以下の政府機関の資料が参考になるかと思います。ぜひどうぞ。

[「CSRのその先へ」2013年10月2日の記事を再編集して転載しました]

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