床(とこ)ずれと予防

「床ずれ」は、一度出来たら治すのがとても大変なので予防が何よりも大切です。

「床ずれ」とは?

私達は普通、無意識のうちに眠っている間に寝返りをうったり、長時間椅子に座ったりするときにお尻を浮かせるなどして、同じ部位に長い時間の圧迫が加わらないようにしています。

しかし、何らかの事情によってそれを自分でできない人達もいます。すると、体重で長い時間圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、「床ずれ」ができてしまいます。

「床ずれ」とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤みをおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。また皮膚の表面だけでなく、皮膚の中にある骨に近い組織が傷ついている場合もあります。

「床ずれ」になる理由

「床ずれ」になりやすい人とは、自分で寝返りができず長期間寝たきりで、栄養状態が悪く、皮膚が弱っている人(高齢者、便や尿などの排泄物や汗により皮膚のふやけがある、むくみが強い、抗がん剤やステロイド [炎症を抑えたり,免疫の働きを弱めたりする薬で,もとは人間のからだの中で作られるホルモン] など薬の副作用で免疫力が低くなっている)です。圧迫だけでなく摩擦やずれなどの刺激が繰り返されている場合は「床ずれ」になりやすいといえます。

さらに、骨盤骨折、糖尿病、脳血管疾患、脊髄損傷(脊髄という背中を走る神経が損傷を受けること)などの病気になってしまうと、「床ずれ」が出来易いので注意が必要です。

このように、健康であれば寝返りなど自ら体位を変換させて床ずれを防ぐことができますが、病気や高齢によって循環が悪くなったり病的な骨の突出が出てくることで、「床ずれ」が出来易くなってしまいます。

「床ずれ」は基本的に骨が出ている部位に出来易いですが、その人が体をどの程度動かせるかにも左右されます。

「床ずれ」は予防が大切!病院では看護師が、患者の体圧の分散をサポートしている

「床ずれ」は、一度出来たら治すのがとても大変なので予防が何よりも大切です。予防手段として、体位変換を行ったり体圧分散寝具(接触部分にかかる圧力を調整しようとするもの)を使ったり、栄養状態を管理したりスキンケアを行うなど、様々な方法があります。

今まで看護師は、お尻の中央の骨の部分の床ずれを防ぐ際には、丁度その部位に圧力がかからないような形であるドーナツ型のクッションの使用してきました。しかし、それだとクッション部分の血流や神経機能の障害が起きてしまうことが分かりました。

現在では、身体にかかる圧力の分散、医療従事者の意識や知識の改善が床ずれの予防のために一番良い方法だとされています。

「床ずれ」を防ぐ方法

現在、多くの看護研究のもと開発が進んでいる「床ずれ」を防ぐための体圧の分散のサポートについてご紹介したいと思います。

まず、仰向けで寝ている状態からその人の上体を起こすときについてです。以下の図のように、ベッドの上体をアップする前に、股関節(こかんせつ)の曲がりとベッドの上体のアップの曲がりを一致させること(基点合致)が重要です。

なぜなら、ベッドを拳上するときは膝上げを行ってから頭側を上げることで、身体のズレ力を最も低減できるからです。特に、ベッドを拳上させた時の上体の角度が30度であれば、ズレによって起こる力は一つ程度で済みます。

一方で、ベッドを拳上させた時の状態の角度が80度になるとズレ力を解除するために、ベッドと体を離す動作「背抜き」を行わなくてはならないということも分かっています。「背抜き」とは、ベッドを拳上した後に抱きかかえるようにして背中をベッドから浮かせてずれをなくすことです。

ベッドから上体が持ち上がるときに、背中の皮膚が引っ張られることで、皮膚と体内の組織の間にずれが生じ、そのずれが「床ずれ」の原因とされているからです。

さらに、仰向けで寝ている状態からお尻を軸にしてその人の体の向きを変える時、お尻を軸に回転させるのではなく、細かい動作を繰り返しながら向きを変えるやり方の方が良いと言われています。なぜなら、多くの場合、お尻とベッドの接点を回転させることで、摩擦やズレが生じて床ずれができてしまうからです。

また、健康な人が動くときに 接地面と浮かせているところの間に体のひねりをいれながら移動動作を行っているように、下半身を移動させてからお尻を移動させ、さらに反対側のお尻を浮かせてから下半身を引き寄せてお尻を戻す・・・といった細かい動作を繰り返す支援が効果的だとされています。

このように、一つ一つの体位に根拠を持って介助すれば、床ずれを防ぐことができるのです。

ところが、実際の看護の現場では忙しくて動作が急いでしまい丁寧にできないことも多いそうです。急ぐ動作は患者さんの安全・心地よさ、そして動作の合理性を犠牲にし、患者さんの体の組織や心理的にも負担をかけてしまいます。

看護する側がどんなに忙しい状況にあっても、自分で体を動かすことが出来ない人のことを思いやる気持ちを忘れずに、かつその人がどんな動きをしたいのかを考えながら支援することが重要だと言えるでしょう。

みなさんも、もし身近に自分で体を動かすことができない人がいたら、その人の考えていることを尊重することを忘れずに関わってくださいね。

文責:聖路加国際大学看護学部4年 松井晴菜

引用・参考文献:

・菱沼典子・川島みどり編集(2013) , 看護技術の科学と検証 第2版―研究から実践へ、実践から研究へ―,株式会社 日本看護協会出版, p9-p16

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