まちづくりと組織に必要な多様性の確保

経済成長を支え、我々の日々の暮らしに安心感を与えてくれる均質化に対し、なぜ相反する「多様性」が重要なのでしょうか?

2018年は大雨、地震、台風と天災の多い年でした。国際社会を見ても、地域紛争や貿易戦争など不安定な時代が続いています。いつ何が起こるか分からない不確実性が高まる社会において、我々はどのような準備をしたら良いのでしょうか?不確実な世の中に対しての備えのひとつとしての「多様性」が今回のテーマです。約15年にわたり街づくりに携わり、様々な団体で活動をしてきた視点から、地域活性においての多様性の大切さについてお話します。

戦後日本の高度成長を支えたのは、工業化やパッケージ化です。これらによる効率化は大量生産大量消費を実現し、我々の生活の質は劇的に向上しました。スーパーやコンビニには一年中新鮮な食べ物が並び、ネット通販は注文すればすぐに商品が届く。現在、国内どこで暮らそうともお金さえ払えば欲しいものはたいてい手に入ります。これはとても凄いことです。

また、テレビや雑誌などのメディアは様々な流行を生み出してきました。ファッション、住宅、レクリエーション、食、音楽など等、日本中が同じ興味・憧れを持ち、各地でそれらを実現していきます。

こうして、均質化がすすみ没個性が蔓延していきます。この言葉はあまり良い意味で使われることは少ないですが、しかし我々にとってはとても居心地が良い状態をつくっています。街を見れば、日本中どこに行っても似たようなチェーン店が並んでいます。味や品質、金額など期待値通りのものが出てくるとても安心できる店舗です。またコミュニティにおいても、似たような服装をしていれば、妬まれたりすることもなく周りの人と同化する事ができ安心です。

経済成長を支え、我々の日々の暮らしに安心感を与えてくれる均質化に対し、なぜ相反する「多様性」が重要なのでしょうか?

私はコミュニティは閉じるもの、だと感じています。これは普遍的な性質として持っているもので、人が集まればそこには関係性が生まれます。この関係性は、時間や回数の積み重ねにより強くなっていきます。こうして結びつきが強くなるほど新たな人が入りづらくなり、意図的か無自覚かにかかわらず排他的になっていくのです。排他的コミュニティは均質化が進みますから、所属する人にとっては安心感を得られますのですべてを否定すべきものではありません。しかし、世代的な継続性は難しくなってしまいます。

街づくりや組織にとっては、継続性は非常に重要です。だからこそ、排他的にならないための仕組みとして、多様性の確保を目指すのです。

人口減少が進む日本においては、生産性の向上や働き方改革が連日叫ばれています。これらは突き詰めれば効率性の話ですが、論理的に効率化を進めたり、成功事例を共有していくと同質化が進みます。こうした世の中の流れの中で他所とは違う差別化できる力の源泉が多様性です。

多様性の確保は、継続+差別化=発展を作っていく土台となります。異業種や様々な世代、バックグラウンドを持った人たちが集まって、地域活性に取り組む組織がもっと増えたらと思います。

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