【第3回】業界初「クルマのサブスクリプション」に挑む!新規事業のマーケティング【株式会社IDOM】

NORELはこのあとどうなるだろうか。

■過去記事

事例を元に、新規事業のマーケティングを紹介するエントリの第3回。

第1回目では業界初となる「クルマのサブスクリプション」ビジネスを立ち上げた際の状況と、その裏側で何を考え、実施してきたのかについて書いた。

そして第2回目では、インターネットマーケティングしか経験したことのなかった筆者が、自動車という商材のマーケティングで想像以上の苦戦を強いられ、暗中模索する中でどのような打ち手を考えたのかに触れた。

第3回目となる本稿では、調整期に行った打ち手の何が奏功したのかについて、問題ない範囲で紹介したいと思う。

ビジネスが反転する瞬間

第2回で触れた以下の調整期のグラフだが、2017年11月頃には様々な施策の手応えを感じ始めていた。

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赤棒グラフで示される「新規予約件数」が前月から比べて倍増したのだ。黄色い棒グラフ、新規訪問が増えていないことを考えると、単に広告を増やしたわけでないのは明白だ。何かが変わり始めていることが数字に現れていた。

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起爆剤となったのは、これまで主力だった中価格帯以上のプランではなく、11月6日にリリースされた月額19,800円のプランだ。

2017年4月1日のリリース時は最安プランは39,800円だった。その後、2017年8月に29,800円のプランを発表したが、グラフからもわかるとおり全く反響がなかった。ただ、定常的に実施していたアンケートからより安価なプランのニーズがあることは把握できていたため、私達は更にもう一段踏み込んだ限界プライスの月額19,800円の開発に着手していた。

19,800円プランの開発

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【上図:ある意味、高級車より希少な月額19,800円の車両たち】

対人・対物無制限の保険料込みで、月額19,800円である。

これは本当に限界に挑む商品開発だった。

自動車税や自賠責保険などを考慮すると、ほとんど無料に近い形でクルマを提供しなければならない。サービス開発の決め手となったのは、海外の輸出需要だった。NORELでは、流通市場の価格変動を予測して月額料金を設定しているが、運営母体である株式会社IDOM (旧社名:ガリバー・インターナショナル) は長年の経験から、海外の輸出需要が国内流通の値動きに影響を与えることを理解していた。

詳細を書くことはできないが、保険料込みで19,800円という破格のプランはこういった国内外の需給を織り込んだ上で、ある意味非常に希少な車両を特定することで実現することができた。

まさに新規事業と、母体となる企業のシナジーが生み出した商品プランということが出来るだろう。

様々な施策の成果が結実し、複合要因で成長が始まる

19,800円プランの登場はねとらぼなどで取り上げられ、メディアの注目を集めた。これにより今までリーチできていなかった層への認知が広がり、テレビやニュースメディアなどで紹介されることも徐々に増えていく。

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調整期にA/Bテストを繰り返し、チューニングしてあったLPは離脱率の上昇を防いだ。

内製化されていた運用型広告はCVRが上がるにつれ機械学習の精度をより改善させ、リードの質も向上した。

長期利用者向けの割引や、タイムセールと言った新提案が受け入れられ、成約数を伸ばすのに一役買った。

夏頃から仕込み始めたSEOが徐々に成果につながり始めた。

仕入先を開拓し、増やし続けた在庫数は需要増の機会損失を防ぐことに繋がった。

あらゆる施策が時間差で噛み合い始め、事務局は大忙しだった。この時のオペレーション改善についてはWantedlyにも書いたので興味のある方は参照していただきたい。実際、うまくいった施策の裏に、膨大な数の失敗も経験している。私はとにかく、仮説があれば試してみないと気が済まないたちなので、痛い目にもたくさんあったし、(会社には申し訳ないが) 成果につながらない予算も時には使ってしまった。

ただ、ありとあらゆる失敗は実験であり、失敗の中でこの結果があったのだと思っている。

4月を迎えて

3月は自動車流通業界の繁忙期だ。

好調は繁忙期の特需ではないかと気をもんだが、お陰様でこの4月も前月を上回るペースで成約を重ねている。認知が増えればビジネスが拡大する、好スパイラルに突入したと考えている。

私もようやくひと仕事を終えたと、ほっとした気持ちで、今この記事を書いている。

NORELを担当したこの1年間、本当に毎日ギリギリの状況だった。チームづくりのための採用から始まり、システムリプレイス、利益率改善、集客改善、運用改善、来る日も来る日も改善、改善、改善。。。

NORELはこのあとどうなるだろうか。人とクルマの、新しい関係を世の中に定着させることができるのか。挑戦はまだまだ続くだろう。私もNORELのこれからを、楽しみに見守りたいと思っている。

次回

最終となる次回は、NORELが今後取るべき戦略について、個人的な考察をまとめてみたいと思う。

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