2015年世界で最も影響力のあった人物 村上春樹もランクイン

2015年、世界で最も発言力のあった人物とは?

ワールドポストとチューリッヒに拠点を置くシンクタンクのゴットリーブ・ドゥットヴァイラー研究所は、2015年の世界の思想的な指導者指標を発表した。これは、ネット上の世界の会話を解読し、影響力のある人々をランク付けした「集合知」の分析だ。結果はこちらにある。

この年次指標では2015年に初めて、世界で支配的な英語圏だけでなく、スペイン語や中国語、ドイツ語といった他の主要な言語圏も評価している。全体としてネットで話題になることの多い400人近い人々をランク付けした結果、1位はフランシスコ法王、4位はトルコの作家オルハン・パムク、5位はエドワード・スノーデン、9位はチェリストのヨーヨー・マなどとなった。上位に入った他に注目すべき人物は、28位に日本の作家の村上春樹、78位のギリシャの前財務大臣ヤニス・バルファキス、83位の中国の作家の莫言(モー・イエン)、99位のキューバ人ブロガー、ヨアニ・サンチェス、136位のインドの作家チェタン・バガットが含まれる。

スペイン語では、フィデル・カストロとペルー人作家のマリオ・バルガス・リョサが第1位で、メキシコの詩人オメロ アリディヒスが11位、ベネズエラの指揮者グスターボ・ドゥダメルが13位、スペインの映画製作者ペドロ・アルモドバル が48位だ。ドイツではエドワード・スノーデンが第1位で、哲学者のユルゲン・ハーバーマスが53位、ペーター・スローターダイクが83位だ。香港や台湾に住んでいる人は、ほぼ例外なくウィキペディアやTwitter、Googleを使用しているため、中国の「国外」のランキングは、世界での順位を反映している。しかし、中国の「内側」のランキングは、評価が中国最大の検索エンジンの百度(バイドゥ)の指標に最適化されており、中国国家主席の習近平と、アリババ会長のジャック・マーがトップ。村上春樹は興味深いことに8位、共産党理論家のワン・フーニンが10位となった。

図は、世界で影響力のある人々をランク付けしたGDI/ワールドポスト2015年の世界の思想的指導者指標。

地図と支配領域

世界の会話の地図は知的な支配領域と同じくらい興味深い。YouTubeは、アイデアを拡散するプラットフォームという点で間違いなく世界最大だ。閉鎖的で狭いFacebookの友達の輪よりも、Twitterの方がより広範囲に思想は伝わる。また、15カ国版のハフポストを含むワールドポスト/ハフポストは、ニューヨークタイムズガーディアンとともに思想を世界に広める最大のプラットフォームとなっている。ワールドポストはベルグレン研究所と提携して2年になるが、ハフポストの国際ポータルサイトとして機能している。スペインの新聞、エル・パイスはスペイン語圏の主要なプラットフォームとして位置づけられている。

ワールドポスト/GDI 2015年の世界の思想的指導者指標英語版ドイツ語版へのリンクはこちらに掲載されている。

この図は英語圏のブロゴスフィア (ブログコミュニティ)における影響の様子を現わしている。GDI/ワールドポスト2015年の世界の思想的指導者指標

分析の仕組み

ワールドポストの編集委員会と編集者が、2015年の最も影響力のある思想的指導者を推薦した。編集者は、エル・パイス、ユニビジョン/フュージョン、上海に拠点を置く時事問題のオンラインサイト、観察者の各編集者で構成される。GDIの2014年の調査結果が反映されており、ドイツ語圏の推薦はベルリンを本拠とするヨーロピアン・マガジンの創刊者兼編集者アレクサンダー・ゲルラッハが担当した。今後はアラビア語を皮切りに、他の言語圏も追加される予定だ。

推薦者はその後、マサチューセッツ工科大学のピーター・グロアによる「集合知」分析を使って処理された。彼は、推薦者とウィキペディアやツイート、ブログ(中国の同様のサービスを含む)上のメンションを関連付け(会話したり、話題に上ったりする「媒介中心性」スコアを計算して)、影響力ランクを決定した。この方法論の詳細は指標の中で説明されている。

この図はスペイン語圏のブロゴスフィア (ブログコミュニティ)における影響の様子を現わしている。GDI/ワールドポスト2015年の世界の思想的指導者指標

所見

ドイツ語とスペイン語圏では、世界共通の発言者たちがリストの上位を占め、英語圏の世界ランキングと重なる一方で、他言語圏で知られていない発言者は言語によらず、ランキングの下位半分に集中している。これはインターネット上で思想がほぼ自由に広まっていることを示している。1つ興味深いのは、ドイツ語圏でTwitterの利用が少ない点だ。プライバシー重視が原因のようだ。

中国の分析は、「1つの言語に、2つの情報空間が存在する」状況を示している。香港や台湾など本土から離散した「外」の中国語圏ランキングは、他の言語圏の上位の「世界的グループ」に類似した影響の受け方がみられる。しかし、中国「内」では百度の検索エンジンがアクセスした7億4000万ページ以上のインデックスが使用されるため、ランキングは著しく異なり、中国人以外の発言者はほとんど含まれない。このプロジェクトに協力してくれた鄧小平の元通訳のジェン・ウェイウェイは以下のように述べている。

中国のインターネット人口やIT産業の規模を考えれば、中国のインターネットの世界はそれ自体が既に宇宙です。多くの点で英語のインターネットの世界と肩を並べています。中国のアリババは、既にeBayとAmazonを合わせたより巨大です。

中国の「インターネット統治」方針やファイアウォール、検閲が全ての「内部」検索の結果を形成しているのは間違いない。

こうした考察を踏まえると、中国の最も影響力のある発言者の分析が、別の検索や分析法によるランキング結果とどれほど異なっているかが分かる。

百度とは、Googleに類似した中国最大の検索エンジンだ。

「世界的な思考回路」としてのインターネット

ワールドポストの狙いは、全世界が集う国境を超えた相互の意見交換の世界的な場を設けることだ。高い評価を受けるチューリッヒのゴットリーブ・ドゥットヴァイラー研究所と提携して傾向を図で示しつつ、情報空間の仮想支配領域を描くことは、インターネットを繋がりのない単なる点の集まりではなく、真の「世界的な思考回路」にするための重要な一歩だ。

この記事はワールドポストに掲載されたものを翻訳しました。

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