遷移金属錯体は、光増感剤や光触媒として用いられる他、発光デバイスにも用いられている。こうした用途の場合、遷移金属錯体は、基底状態から電荷移動状態に励起される必要があり、この電荷移動状態は、効率的な性能を確保するには一般的に寿命が長くなければならない。このため、こうした錯体に用いられている希少な高性能貴金属を、地球上に豊富に存在するもっと安価で毒性の低い金属に置き換えることが困難であった。
今回P Cháberaたちは、電子的特性に優れた配位子を利用する設計戦略によって、電荷移動状態の寿命がこれまでになく長い鉄錯体が得られることを示している。この方法をさらに発展させれば、発光体や太陽エネルギーデバイスの光増感剤として使える鉄系材料が得られる可能性がある。
Nature543, 7647
2017年3月30日
原著論文:
Advertisement
doi:10.1038/nature21430
【関連記事】
担持触媒における水素スピルオーバー Nature541, 7635 2017年1月5日
活性化されていない脂肪族C-H結合の官能基化 Nature539, 7628 2016年11月10日
メタン生成の少ない、バイオマスからの低級オレフィン合成 Nature538, 7623 2016年10月6日
単純な有機系における振動反応 Nature537, 7622 2016年9月29日
電気的に駆動される酸化還元触媒反応 Nature531, 7592 2016年3月3日