環状の軌道を動くナノマシン

分子マシンは、燃料が存在するかぎり回転運動を続ける分子モーターであり、さらなる化学物質の投入や外部刺激を必要としない。

分子モーターは、まず、分子スケールで支配的な力となるブラウン運動に打ち勝つ運動を発生させなければならず、方向制御の手段として角運動量を利用できない。

D Leighたちは、こうした制約があるにもかかわらず、1種類の化学燃料を消費して分子マシンを動かすシステムを開発した。この分子マシンは、燃料が存在するかぎり回転運動を続ける分子モーターであり、さらなる化学物質の投入や外部刺激を必要としない。

このモーターは、連結した2つの分子の輪で構成されており、化学燃料の不可逆反応によって動力を得ると、小さな輪(マクロ環)が大きな輪(環状分子の軌道)の周りを一方向に連続的に輸送される。

軌道に付加される化学燃料の反応速度がマクロ環の位置によって異なり、この非対称性から方向性のある運動が実現されるため、マクロ環は、元の反応点に向かって逆戻りすることなく、同じ方向に回り続ける。

Nature534, 7606

2016年6月9日

原著論文:

doi:10.1038/nature18013

【関連記事】

新しいタイプの粒子加速器 Nature503, 7474 2013年11月7日

ナノ粒子結晶の3D観測 Nature496, 7443 2013年4月4日

注目記事