リン肥料は、農作物の生産性向上のために日常的に使われているが、それには代償が伴う。
イネ科穀物では、圃場に投入されたリンの約85%がフィチン酸塩として穀粒中に蓄積されるが、ヒトや非反芻動物はこれを消化することができないため、排出されたフィチン酸塩によって水系の富栄養化が引き起こされている。
富栄養化とは、栄養素の急増で水生植物が急激に増殖することにより水中の溶存酸素が欠乏する過程である。
馬建鋒(岡山大学)たちは今回、イネで穀粒へのリンの配分を制御する輸送体を突き止め、SPDT(SULTR-like phosphorus distribution transporter)と名付けた。
SPDTをコードする遺伝子を欠損させたイネでは、リンの分配が変化して、穀粒中のリン含有量が最大で30%減少し、葉中のリン含有量は増加することが分かった。
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また、圃場試験から、玄米中でのリンおよびフィチン酸塩の総量の減少が、収量や種子発芽、実生活力の変化を引き起こさないことが明らかになったのは重要であり、この戦略の農業における利用可能性を示している。
Nature541, 7635
2017年1月5日
原著論文:
doi:10.1038/nature20610
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