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2018年07月18日 11時54分 JST | 更新 2018年07月18日 11時54分 JST

W杯ロシア大会、Yahoo!ニュースはどう読まれた?データから読み解く熱狂のうねり

写真:ロイター/アフロ

2018年6月14日から7月15日まで開催された、サッカーワールドカップ(以下、W杯)ロシア大会。日本代表はベスト16まで進み、この1カ月、多くの感動と興奮が世の中を包みました。しかし、開幕当初から世間の注目度や期待値が高かったかというと、そうとは言い切れません。

「いっぱい批判されたし、おっさんおっさん言われて、だいぶ胸縮こまったから、帰国時は張り裂けるくらい胸張って帰ります」――。長友佑都選手の帰国直前のツイートには、50万もの「いいね」が集まりました。日本代表に関連するニュースはどのように視線を浴び、ベスト16の熱狂まで至ったのでしょうか。Yahoo!ニュースの「届け方」「読まれ方」から読み解いていきます。

電撃解任から笑顔の帰国まで、熱の高まりを追う

W杯2カ月前、日本サッカー界に衝撃が走った解任報道(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

前監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(以下、ハリル氏)の解任報道があったのは、開幕2カ月前の4月8日。そして西野明監督就任、代表メンバー発表、国際親善試合のガーナ戦、スイス戦、パラグアイ戦。開幕後はグループリーグのコロンビア戦、セネガル戦、ポーランド戦と続き、7月3日の決勝トーナメント1回戦・ベルギーとの対決で、日本代表は敗れ、ロシアの地を去りました。4月8日から、日本代表が帰国した7月5日までの動きを振り返っていきます。

熱狂は、「じわじわ」ではなく突然訪れる

まず、日本代表のニュースに関連したYahoo!ニュース トピックス作成本数をまとめました。

開幕までの期間で特に突出しているのは5月30~31日。0-2で敗れたガーナ戦と、W杯メンバー23人の発表がありました。ガーナ戦後は「3バック」という戦略がうまく機能しなかったことへの批判や懸念が相次いで報道され、Yahoo!ニュース トピックスでも、【3バックはトライ 西野氏強調】【西野J完敗 見えた厳しい現実】などの厳しい論調の記事のCTRが高く出ました。

開幕後にひときわ本数が伸びているのは、セネガル戦、ポーランド戦、ベルギー戦の3日間。ハリル氏解任からベルギー戦まで徐々に熱を帯びていくのではなく、関心は「急騰」していたことがわかります。Yahoo!ニュース トピックスも、【大迫抑えられず 敵将が脱帽】といった相手チームの評価や、【長谷部 気持ち整理する時間を】【涙の昌子 足引っ張ったかも】といった選手のコメントなどのCTRが高く、"試合後の当事者の声"に強い関心が集まっていると感じられました。

ベルギー戦後、昌子選手の悔しさにじむコメントに、熱は最高潮に(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

Yahoo!ニュース 意識調査では、期待値の上昇が浮き彫りに

解任報道の4月8日から閉幕の7月15日までに作ったW杯関連の意識調査は41本。合計投票数は6万4000票超に至りました。意識調査では、ユーザーの注目度や期待値が如実に変化していったことが見て取れます。

5月31日、代表メンバーが発表された際、「どこまで勝ち進めると思うか」と聞いた意識調査では、「予選敗退」が87.3%。代表メンバーに「納得できない」と答えたユーザーも8割近くに達しました。

W杯ロシア大会のメンバーを発表、この23人でどこまで勝ち進めると思う?

W杯ロシア大会の日本代表23人に納得?

しかし、コロンビア戦を2-1で勝利したことにより、空気は一変。勝敗予想を問う意識調査では、試合が行われるごとに「勝利」の割合が増えていき、ついにはポーランド戦で「勝利」が「敗北」を上回りました。ベルギー戦の勝敗予想はわずかに「敗北」が上回る結果でしたが、当初のコロンビア戦予想と比べると、期待がどんどんと高まっていった印象がうかがえます。

ベルギー戦後に実施した「サッカー日本代表のW杯ベスト16をどう評価する?」という総括の意識調査には29万票が集まり、「大いに評価する」が7割を超えました。

Yahoo!ニュース トピックスはどう届け、どう読まれたか

ヤフーでW杯の情報を届けているのは、Yahoo!ニュースだけではありません。開催期間中は毎日、スポーツナビ、Yahoo! JAPANのトップページ担当者とミーティングを行い、どの情報をいつ、どう出すかを議論していました。

ミーティングは17時から30分。夜中の試合に備えてテンポよく進める

「午前2時半には、スポーツナビのアプリで、スタメン発表のプッシュ通知を送る」「同じく2時半からYahoo! JAPANアプリのW杯特設タブを目立たせる」「夜中なので、Yahoo!ニュースアプリでは事前にプッシュ通知は送らない」――それぞれのユーザーの特性にあわせた対応をすりあわせ、動きを細かく確認します。試合終了は明け方となるため、自宅などから遠隔で業務を行う社員がほとんどでした。

Yahoo!ニュースで取りまとめを行っていた山内浩太は、「スポーツナビにはスポーツが好きなユーザーが集まっていますが、Yahoo!ニュースには、スポーツに興味がないユーザーもいます。さらにヤフーのトップページには、ニュース以外のヤフーのサービスを使うために訪れるユーザーもたくさんいます。それぞれ、サービスを訪れる目的が違うなかで、どう出面で連携していくかが非常に大切でした。4年に1度のビッグイベントを盛り上げるためには、お互いの領域に入りながらも、『やらない』ことを決めるのも重要でした」と振り返ります。

スポーツはやっぱり「リアルタイム」ハーフタイムで顕著な動き

Yahoo!ニュースが注力したのは、リアルタイム性。試合中はスポーツナビが展開する「テキスト速報」への誘導をかけ、いまどうなっているのかが一目でわかるようにしました。

▼例:ベルギー戦のYahoo!ニュース トピックス、掲出した時間と展開

02:56 速報W杯 日本vs.ベルギー
└(別立て)03:56 前半0-0 猛攻しのいだ日本
04:08 速報ベルギー戦 原口が先制弾
04:12 速報ベルギー戦 乾が追加点
└(別立て)04:21 原口と乾 劣勢跳ね返すゴール
04:34 速報 日本は追いつかれ2-2
04:43 速報 2-2から日本は本田投入
04:59 日本は8強ならず 逆転負け

スポーツナビが提供する「テキスト速報」

速報の見出しは、国際親善試合でA/Bテストを繰り返して「勝ち筋」を探りました。例えば、試合開始時の速報見出しは「日本」入りのほうがよく読まれる(【速報 日本vs.パラグアイ】>【サッカー速報 パラグアイ戦】)など...。日本戦だけでなく、グループリーグから注目カードは速報を掲出し、W杯全体の盛り上げを図りました。編集部ではあらかじめ注目選手が共有され、何か動きはないかを逐一チェックしていました。

日本代表の4戦中3戦をリアルタイムで対応した中上芳子は、「スマホユーザーの反応が、リアルタイムの試合展開と連動して動くのが興味深かったです」と振り返ります。「テレビで観戦しながらスマホでも展開を追っているのかな? それともテレビを見られない人が見ているのかな?――と想像しながら作業していました」。


テレビに釘付けとなる試合中、ニュースが読まれるタイミングは...(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

事実、試合展開とYahoo!ニュース トピックスの読まれ方は、くっきりと相関関係にありました。顕著だったのは、ハーフタイム時のYahoo! JAPANトップページのPVの上昇。スキマ時間に情報収集をするユーザーの動きが見て取れました。この現象は、国際親善試合の際にはなかったW杯特有の動き方で、ユーザーが試合にかなり集中している様子がうかがえます。

決勝トーナメント進出がかかったポーランド戦の際も、興味深い動きがありました。同じ時間帯で、同じグループHのセネガルvs.コロンビア戦が行われており、その速報のYahoo!ニュース トピックスは、日本vs.ポーランドよりも読まれていたのです。テレビで日本vs.ポーランドを観戦し、Yahoo!ニュース トピックスでセネガルvs.コロンビアの情報を見ていた可能性が高いといえます。

試合終盤、日本の「パス回し」の時間帯に入ると、さらにPVが大きく上昇。セネガルvs.コロンビア戦が気になるユーザーの需要をつかんだ結果となりました。

リアルタイムに効く試合の速報、総PVランキングではほぼ入らず

6月14日のW杯開幕から、7月5日の日本代表帰国まで、スマートフォンで最も読まれたYahoo!ニュース トピックスをランキングにしました。

総PVで抽出しているため、試合終了から朝まで長く掲出していた「結果」のニュースが上位を占めました。前述した「速報」でランクインしたのは、3位のセネガルvs.コロンビアのみで、日本戦は入らず。速報は、試合のリアルタイムな情報なので、掲出した瞬間はものすごい勢いで読まれます。しかし、試合展開によりどんどん見出しを変えるだけでなく、掲出時間も短いため、総PVのランキングには食い込みませんでした。その特徴を考えると、セネガルvs.コロンビアがどれだけ読まれていたかがよくわかります。

4位、9位に入ったのは、ポーランド戦の「パス回し」に関連したニュース。日本中で議論となったあの戦略に、海外やセネガルはどう反応したのか、注目が集まりました。

SNS発の「バズ」、Yahoo!ニュースは深く理解する一助に

選手自らによる発信も珍しくなくなり、ニュースとSNSの関係は非常に緊密なものになってきています。W杯でバズった(=インターネット上、主にSNS上で話題になること)ネタは、ニュースでどのように昇華されたのでしょうか。

Yahoo!ニュースが「バズに応えた」例と「バズの起点になった」例、ふたつの視点からみていきます。

まず、バズに応えた例として特筆できるのが、流行語としても期待される「大迫半端ないって」。そのキャッチーさから、Yahoo!ニュース トピックスでも多くの関連ニュースを掲出しました。

漫才で「半端ねぇ」を連呼するお笑い芸人・トータルテンボスさんの反応や、「生みの親」滝川二高の元サッカー部監督のインタビュー。大迫選手のこれまでを分析する【大迫 ずっと半端なかった実力】といった切り口も、ユーザーの関心に応える一助となりました。

あの夜、日本中が大合唱した「大迫半端ないって」(写真:長田洋介/アフロスポーツ)

「バズに応える」ために気を付けているのは、背景や裏話を取り上げた記事を掲出し、バズを深く理解する手助けをすること。ベルギー戦後、日本代表の控室が掃除されていてとてもきれいだったという話題については、【きれいな控室 長谷部「誇り」】と、選手側の反応を取り上げました。セネガル戦で同点弾を叩き込んだ本田圭佑選手が、岡崎慎司選手と「敬礼」をしたシーンについても、【本田の敬礼 即興で岡崎に提案】と、なぜ敬礼を行ったのかについて触れました。「バズった」ことだけを伝えないことが、ニュースの役割なのかもしれません。

Yahoo!ニュース トピックスが起点となりバズが起きた最たる例は、試合結果を予想したミズダコのラビオ君が、予想を的中させたにもかかわらず、出荷されてしまったというニュースでした。


「でも出荷」という遊び心を加えた見出しに、多くのユーザーから反応をいただきました。

また、ポーランド戦前夜にスタメン情報が流出したことについて、長友選手が非公開練習時の報道を控えるよう異例のお願いをしたニュースも、多くのユーザーに拡散されました。

1万RTを超えたW杯関連ニュースは、ラビオ君のみ。Yahoo!ニュースはさまざまなジャンルを総合的に扱うため、サッカーなどの特定ジャンルに特化したアカウントと比べると、どうしても拡散力に差が出ます。スポーツに特別関心のないユーザーにも「刺さる」「興味を持ってもらえる」情報を届けられるかが、Yahoo!ニュースの編集の腕の見せ所だと感じています。

ラグビーW杯、東京五輪を盛り上げるために

開幕から閉幕まで、社会の関心がどんどんと変化していくのを肌で感じた1カ月でした。スポーツの祭典は、始まるまでは少し落ち着いた様子ですが、日本代表が活躍すると、最大瞬間風速のような、ものすごいエネルギーを持っています。2019年のラグビーW杯、そして2020年の東京五輪に向けて、その強烈な関心にうまく応えられるよう、準備を進めていきたいと思います。