merankorishinwagata

1945年の3月10日は東京大空襲が行われ、2011年の3月11日には東日本大震災が起きた。どちらも、私たち日本人にとても大きな喪失をもたらした。「過去を振り返らずに明るく前向きに考えるべきだ」という言葉が世間ではよく用いられる。その意味は分かる。それよりも、苦悩に導くような感情や記憶を意識から排除した方が、多忙な日常生活を乗り越えていくためには有用である。しかし、やはり複雑な気持ちになる。
「日本」について考えるのが難しいのは、日本が「西洋近代」という参照枠に対してねじれた関係にあるからである。西洋近代の精神性は、現在のあらゆる信頼のおける学問の基盤になっている。その一方で、明治以来の日本と西洋近代の精神性との関わりは、「和魂洋才」の言葉に表されるように、全体としての受けいれは拒否しつつ部分的には強く同一化を目指すという歪んだあり方が中心であった。