はじめに
我々は、自らの年を考える際には、「年齢」で考える。あくまでも誕生日をベースに、今年は何歳になったというような形で考えていくことになる。これだと、例えば誕生日はいつも同じ季節に祝うことになる。
もちろん、自らが生まれた時期に当時の季節の中で、自らの成長を認識することになることから、それはそれで重要なことである。
これに対して、誕生日からの経過を「年」ではなくて、「日」でみる「日齢」の考え方もある。新生児に対しては「日齢」の考え方は採用されているが、ここでは大人の「日齢」について考えてみる。
人生80年は、人生30,000日
「人生80年時代」と言われる。厚生労働省が3月に公表した第22回完全生命表(5年ごとの国勢調査に基づく)によれば、平均寿命は男性が80.75歳、女性が86.99歳となっている。
実はこれを「日齢」に換算すると、ほぼ「30,000日」となり、「人生80年」は、「人生30,000日」ということになる。さらに、ほぼ、最高齢に近くなる110歳が「40,000日」ということになる。
節目の日齢の年齢
このように「日齢」で考えると、自分のライフスパンに対する見方が若干異なって見えるような気がしてくるのではないか。即ち、10,000日単位では、人生は大きく3段階ないしは4段階に分かれてしまうことになる。あまりにも少ない数で段階分けされると、何となく寂しい気持ちもしてくるかもしれない。
一方で「年齢」以上に、現在の自分の齢に対して、より真面目に考えなければならないように感じられてくるかもしれない。
具体的に、「日齢」を「年齢」に換算すると、以下の通りとなる。
「日齢」での10,000日は、27歳4カ月と約15日目
「日齢」での20,000日は、54歳9カ月
「日齢」での30,000日は、82歳1カ月と約15日目
日齢の持つ意味
先の第22回完全生命表によれば、現在0歳の100,000人のうち、55歳まで生存する人は、男性で95,088人、女性で97,166人であり、82歳まで生存する人は、男性で56,311人、女性で76,831人となる。
30,000日を迎えるのは、男性は約半分、女性で約4分の3ということになる。
因みに、20,000日を迎えた55歳の人が、30,000日を迎えることができる確率は、男性で約60%、女性で約80%となる。
その意味で、万日単位での誕生日は、多くの人にとっては、人生で3回程度経験することになる。年齢での誕生日とは異なり、より数限られた形になることから、非常に重要な意味を持つ日であるといえるかもしれない。
個人的には、既に20,000日を過ぎてしまって、節目の日に、こうした意識を有していなかったので、残念なことをしたという気持ちもしている。まだまだ、若い方々は、自分の「日齢」を計算してみて、10,000日目や20,000日目は大切な日として認識しておくことも考えられるのではないか。
一方で、「日齢」を考えると、「1日1日を大切に」ということにもなるが、そんなに毎日毎日を気にして生きるのは、やや狭苦しい気もして、もっと大きなサイクルで考えたいと思う人もいるかもしれない。
その意味で、あくまでも、「日齢」については、一定の区切りを考える上での1つの指標と割り切って考えることが適切であろう。余りにも気にして生きるのは、嫌な気もすると思われるのも理解できる。
日齢の記念日
「日齢」を考えた場合、何も「万日」単位ではなく、「5千日」や、さらには「千日」単位で、記念日を祝うというようなことも考えられるかもしれない。このような考え方が一般的に拡がっていけば、消費拡大につながって、ビジネスチャンスになるかもしれない。
「千日」単位は、ほぼ3年毎であり、3年毎の誕生日を1つの区切りとして、何らかの目標を定めて、取り組んでいくことも考えられる。
「3年」という数字は、「石の上にも三年」「桃栗三年、柿八年」というように、「何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかるという」意味合いで使用されることが多い。その意味で「3年」を日齢の「千日」と結びつけるのもそれなりの意義があるものと思われる。
なお、「日齢」の概念の拡がりを目指す考え方については、これまでもいろいろな方々が主張されているようである。
その中では、「日齢」をベースにした記念日については、例えばラッキーナンバーの7を重ねた「7777日」(21歳7カ月程度)や、同じくぞろ目となる「11111日」(30歳5カ月程度)、さらには数字の連番となる「12345日」(33歳10カ月程度)等を記念日として祝ったらどうかというような考え方もあるようである。
これらの「日齢」を迎える頃の方々は若くていろいろなことに積極的にチャレンジしている時期だと思われるので、そうした日常生活の中で、このような記念日を設けて、人生を楽しんでみるのも一興であろうと思われる。
なお、20,000日の「日齢」を過ぎてしまった私のような人でも、「22222日」(60歳と10カ月程度)や「23456日」(64歳3カ月程度)、さらには「33333日」(91歳4カ月程度)というような日もあるので、こうした日々を気に留めておくことも考えられる。
いずれにしても、毎年の誕生日をベースにした「年齢」の考え方が、あまりにも定例化して、変化のないものになっている面もあることから、これまでとは違った形で、自分の誕生からの経過を祝ってみるのも面白いかもしれない。
【関連レポート】
(2017年3月27日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
取締役 保険研究部 研究理事