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2015年12月30日 23時33分 JST | 更新 2016年12月29日 19時12分 JST

最近の企業不祥事を考える-不祥事からの再生には社会的責任の視点が不可欠:研究員の眼

2015年は内外で業界を代表する名門企業の不祥事が相次ぎ、創業以来の危機に直面する企業も見られる。これらの企業の多くは、CSR(企業の社会的責任)やコーポレートガバナンスの先進企業と評価されてきたが、実態は、内部統制が機能不全に陥っていたのである。

これらの企業不祥事の直接的な原因は様々であろうが、共通する重要な要素として、目先の利益追求を優先する企業経営のショートターミズム(短期志向)(*1)が挙げられるのではないだろうか。

筆者は、「あらゆる事業活動を通じた社会問題解決による社会変革(ソーシャルイノベーション)は、営利・非営利を問わず、あらゆる組織の社会的責任(SR:Social Responsibility)である。営利企業の存在意義も、単なる財サービスの提供ではなく、それを通じた社会的価値(social value)の創出にこそあるべきであり、経済的リターンありきではなく、社会的ミッションを起点とする発想が求められる」と主張してきた。

筆者は、「社会的ミッションを起点とするCSR(企業の社会的責任)経営」では、「企業が社会的価値の創出と引き換えに経済的リターンを受け取るということがあるべき姿であり、社会的価値の創出が経済的リターンに対する『上位概念』である」と考えているが、相次いだ企業不祥事では、その関係が逆転し、経済的リターンの追求が上位概念に位置付けられてしまっていたとみられる。

目先の利益追求を優先する短期志向の経営が企業不祥事にまでつながってしまうと、企業価値の大きな毀損を招くことは明らかだが、企業不祥事に至らなくとも、経済的リターンの継続的な創出には結局つながらないことに留意すべきだ。

我が国の大企業の多くは、外国人投資家の台頭や四半期業績の開示義務付けなど、資本市場における急激なグローバル化の波に翻弄され、2005年前後を境に株主利益の最大化が最も重要であるとする「株主至上主義」へ拙速に傾いた、と筆者は考えている。

多くの大企業は、短期志向の株主至上主義の下で、労働や設備への分配を削減して将来成長を犠牲にする代わりに短期収益を上げ株主配当の資金を捻出するというバランスを欠いた付加価値分配に舵を切り、リーマン・ショック後には大手メーカーが派遣労働者の大量解雇に走った。

多様なステークホルダーからの共感が得られる「誠実な経営」には程遠く、社会的ミッションが軽視され、社会変革を起こす突破力が沈滞したとみられる。

短期志向の経営は、結局縮小均衡を招くだけで継続的な付加価値創造、つまりGDP成長にはつながらなかったため、日本経済の「失われた10年」を「失われた20年」に引き延ばした主因の1つになってしまったのではないだろうか。

我が国では、2003 年が「CSR 元年」と言われ、CSR という言葉はここ10 年前後で急速に広まったが、企業不祥事は依然として後を絶たず、日本企業はCSR の在り方を問われ続けている。

今年相次いだ名門企業の不祥事を見ると、今となっては「2003年はCSR元年」という掛け声は虚しく響く。2003年はCSR元年であると唱えた当時の有識者等は、CSRの専門部署の設置やコーポレートガバナンス制度の整備など形だけのCSRを評価していたのではないだろうか。

今年不祥事が発覚した名門企業の多くは、CSRやコーポレートガバナンスの先進企業と見られていたため、これらの企業不祥事については、CSRやコーポレートガバナンスの先進的な仕組み(器)に「魂を入れるべきだった」との意見が多く見られるが、ここでの「魂」とは、何を指していると考えるべきだろうか。

経営トップの選任・解任の仕組みに実効力を持たせるといったコーポレートガバナンスの実務運用面も勿論重要だが、ここで注入すべき魂とは、筆者は、社会的ミッションを起点とするCSR経営の実践に他ならないと考える。

経営トップが志の高い社会的ミッションを掲げ、それを全社に浸透・共有させ、組織風土として醸成し根付かせるとともに、社外のステークホルダーからも共感を得て、多様なステークホルダーと一致結束する関係を構築できていれば、企業不祥事など起こる余地はないはずだ。

今後の企業不祥事からの再生には社会的責任の視点が不可欠であり、企業活動の一挙手一投足を「社会への配慮」という「フィルター」にかけることが求められる。これは、「あらゆる企業行動がCSR により規定されるべきである」 と言い換えてもよい。

時間はかかっても、「志の高い社会的ミッションの実現=社会的価値の創出」を企業経営の上位概念に位置付けるCSR経営を、誠実かつ愚直に実践していくことが企業経営の王道であり、信頼の回復と会社の再生に欠かせない。

不祥事を起こした名門企業の多くは、これまで業界を代表する企業として、幾多のイノベーション創出により社会を豊かにし、社会にとって必要不可欠な存在となっていた。

これらの企業がかつての輝きを取り戻し、創造的かつ誠実な会社として再生することは、社会にとっても大きなプラスになるはずだ。幾多の領域でイノベーション創出に愚直に取り組んできた名門企業の今後の再生への取組に大いに期待したい。

(*1) 2014年8月に経済産業省から公表された「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書、いわゆる「伊藤レポート」は、日本企業の短期主義経営への懸念を主要な問題意識の1つとして挙げている。

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(2015年12月28日「研究員の眼」より転載)

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社会研究部 上席研究員

百嶋 徹