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2015年12月30日 16時58分 JST | 更新 2016年12月29日 19時12分 JST

2016年日本経済の課題~アベノミクス新三本の矢を考える:エコノミストの眼

新三本の矢の本格始動

10月に内閣改造を行った安倍総理は、「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、「一億総活躍社会」の実現を目的とする、「強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新三本の矢」を発表した。2016年は、この政策が本格的に動きはじめることになる。

「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」という、旧三本の矢の間の関係は簡明だったが、「一億総活躍社会」の実現ということが、新三本の矢をどう束ねる意味を持つのかは分かり難い。多くの人が、子育て支援と高齢者介護という、第二、第三の矢に唐突な印象を受けたことは理解できる。

新三本の矢には、それぞれ名目GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロという、極めて意欲的な目標数値が掲げられている。このため、目標が達成できるかどうかに注目が集まってしまったが、このような目標が登場した理由を考えるべきだ。

長期にわたる経済的な不振の間に、日本経済の状況が大きく変わり、対応すべき問題の質が大きく変わっていることが大きな理由であると考える。

「一億総活躍」の意義

2015年11月の有効求人倍率は1.25倍という高水準になっていた。これは1992年1月以来の水準で、需要不足による失業問題の改善が課題となっていた状態から、人手不足が経済活動のネックとなりつつあることを示している。このようなことが起こっているのは、「人手不足が変える日本経済」でも書いたように、少子高齢化が原因だ。

2014年の年齢別の人口構成を見ると、ここ数年の間に65歳に達して勤労生活から引退し始めている団塊の世代の人口規模が各歳220万人程度である一方、毎年新たに働き始める20歳前後の人達の人口は120万人程度と大幅に少ないことが分かる。

このため、今後人口構造の高齢化がさらに進む中で、日本に住む人達の生活水準を維持・向上させていくためには、現在よりもはるかに多くの高齢者や女性が社会の中で活躍できるようにすることが必要になる。

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経済成長の果実を子育て支援や高齢者の介護などの分野に投入するということでは、経済成長率が高まらないのではないかという批判もある。しかし、経済の成長が子育てや介護政策の充実を支えるだけではなく、子育て支援や介護政策の充実が経済成長を支えることにも注目すべきである。

中長期的対応への転換

そもそも経済成長をするのは我々がより安心で豊かな生活をできるようにするためだ。所得が増えても、欲しいものが買えず、必要なものが手に入らないというのでは経済成長しても意味が無い。

多くの人が子供も欲しいが仕事を通じて自己実現も図りたいと考えているにもかかわらず、多くの障害に阻まれている。自分や家族の介護が必要となったらどうしようかと大きな不安を抱えている人も少なくない。経済成長の果実の一部を、多くの国民が望んでいるものに向けることは当然のことだ。

安倍内閣は3年間が過ぎ、全力を注いできたデフレからの脱却は完全に実現したとは言えないまでも、もう少し政策の視野を広げる余地が生まれていると言えるだろう。

維持可能な社会保障制度や財政・金融をどう実現するのか、2016年の日本経済は緊急事態への対処から中長期的なビジョンを持った政策への転換が課題ではないだろうか。

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(2015年12月28日「エコノミストの眼」より転載)

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株式会社ニッセイ基礎研究所

経済研究部 専務理事

櫨(はじ) 浩一