北陸新幹線で地方創生の優等生に-北陸新幹線開業で注目を浴びる小京都・金沢

「京都vs小京都・金沢」と話題にあがるのは、2015年3月14日に開業する北陸新幹線によるものだ。
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「小京都・金沢」とよく呼称されるが

広辞苑によると「小京都」とは、「古い街並みが残り、京都のような趣きを持つ小都市」を指すようだ。また現在「全国京都会議」という組織体が存在する。京都に似た自然と景観があることや歴史的つながりがあるなどの要件を満たせば当会への加盟を承認される。当会に小京都として加盟している都市は全国に49ヶ所ある。

金沢は1988年に加盟したが、城下町として武家文化が栄えた金沢は、公家文化の京都とは異なるとして2009年に脱会した経緯がある。現在、金沢は国から歴史都市の認定を受けており、「城下町金沢」としての魅力を発信している。したがって、「金沢は小京都に入っていた」というのが正確な表現だろう。

しかし、「小京都・金沢」という呼称に違和感を覚える方は少ないようだ。事実、11月に発売された「日経消費インサイト」では、2015年日経ヒット商品・サービス予想ランキングの中で、「京都vs小京都・金沢」が第12位にランクインしている。脱会から5年経過しているが、金沢の小京都というイメージはそのまま残っている。

「京都vs小京都・金沢」と話題にあがるのは、2015年3月14日に開業する北陸新幹線によるものだ。

北陸新幹線が開業すると、東京‐金沢間は、現在の路線と比べ、料金は12,750円から14,120円と1,370円割高にはなるが、所要時間は現在の約3時間50分から2時間28分 となり、なんと約1時間22分短縮される。その結果、金沢は、東京から京都までと同等の所要時間と料金を手にするのだ(図表1)。

また、先述の2015年日経ヒット商品・サービス予想ランキングでは、「北陸新幹線」が堂々第1位に選ばれ、注目の的になっている。すでに駅周辺では開業を見越した開発が進み、沿線都市の地価は上昇に転じており、特に金沢駅周辺は全国の商業地の中で対前年伸び率が全国1位に躍り出ている。

チャンス到来で地方創生の優等生になれるか

安倍政権は、重要課題として「東京一極集中の是正」、「地方活性化」いわゆる地方創生を掲げ、各地域がそれぞれの個性を活かした自律的で持続的な社会作りを目指している。

こうした中で北陸新幹線の開業は、金沢にとって千載一遇のチャンスだ。金沢は、東京から京都までの同等の所要時間と料金を手にした。しかも、北陸新幹線の年間席数は往復約1800万席と、小松―羽田間の航空便約300万席の6倍に相当し、金沢への輸送能力が飛躍的に拡大する。これを活かすには、まずは観光客を増やすことだろう。

ここで都道府県別の延べ宿泊数をみてみると、企業数や定住人口だけではなく東京に滞在する延べ人数は突出している(図表2)。

外国人の延べ宿泊数も東京が圧倒的だ。さらに円安などの追い風で日本を訪れる外国人が増加している。2014年の訪日外国人旅行者数は、12月には1300万人を突破し過去最高を記録している。成田・羽田空港に着く外国人が増加しているのだ。作戦は東京を起点として国内観光客はもとより外国人観光客を取り込むことだ。

金沢では京都とは異なる文化で形作られた日本らしい古都の街並み、日本有数の温泉旅館街、そして近江町市場の鮮魚はもちろん金沢郷土料理など、独自の魅力を存分に堪能できる。

北陸新幹線(長野―金沢間)の総工費は、約1兆7800億円と概算されている。金沢に限らず北陸新幹線の沿線都市は、北陸新幹線を使い倒し、地方活性化につないでいかなければならない。

北陸でいえば、「KANAZAWA(金沢)」ブランドの確立を通して、例えば「NOTO(能登)」、「FUKUI(福井)」、「TOYAMA(富山)」、そして「HOKURIKU(北陸)」とそれぞれの観光ルートを広げていくことがその一手だろう。

小松空港、能登空港に北陸新幹線が加わり、その実現可能性が高まったように思う。

*2 金沢市は、平成20年11月6日「金沢市歴史的風致維持向上計画」を国に申請し、平成21年1月19日に認定されている。歴史まちづくり法第1条によると、歴史的風致とは、地域固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境と定義されており、ハードとしての建造物と、ソフトとしての人々の活動をあわせた概念である。

*3 日経産業地域研究所が各界の専門家ら80人に実施したヒット予想調査結果。

*4 料金は時期によって変動する。

*5 石川県は、新幹線開業を見据えた誘客目標として「首都圏誘客500万人構想」を掲げ、取り組みを進めている。

*6 例えば、能登空港から石川県に入り、能登から金沢を経由したのち、北陸新幹線を使用して帰路に着くという旅行プランが考えられる。

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(2014年12月29日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

経済研究部 研究員

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