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2018年07月20日 21時03分 JST | 更新 2018年07月20日 21時03分 JST

拡大する所有者不明土地-求められる対策とは?:研究員の眼

民間の利活用が可能となる仕組みも同時に考えていかなければならない。

reneh9999 via Getty Images

1――所有者不明の土地、増加中

日本全国で所有者不明土地が増加している。所有者不明土地とは、不動産登記簿等の公簿情報などをもとに調査しても所有者が判明しない、または判明しても所有者と連絡がつかない土地のことだ。

国土交通省の資料によると、2016年度の地籍調査をもとにした推計で私有地の約2割が所有者不明、その規模は九州の土地面積(約368万ha)を上回る約410万haに達しているという。

根本的な問題は、日本の土地制度が所有権や利用実態を補足するのに十分な体制を整備できていないことだ。所有権の把握には、不動産登記簿情報が通常使用される。しかし、権利登記は義務でなく任意であり、所有者情報が更新されないまま放置されることが少なくない。法務省の調査によると、50年以上登記が更新されていない土地は地方で26.6%、大都市圏でも6.6%存在している(図表1)。

情報が更新されないまま相続が発生すると複数の相続人が権利を継承し、相続が重なることで権利はさらに枝分かれする。さらに、日本の人口動態もこの問題を助長している。

人口減少や高齢化は土地の利活用ニーズを減少させており、都市への人口流出は土地に対する権利意識を希薄化させている。また、登記にはコストも掛かるため、価格の低い土地を相続しても登記すればその分の費用が持ち出しとなってしまう。

国税庁の統計では相続財産における土地の割合は約4割。2025年以降、人口の多い団塊の世代で相続が発生すれば、所有者不明の土地はさらに増加することが見込まれる。

2――災害復興、地域創生の障害に

所有者不明土地の増加は、災害復興や地方創生の妨げとなっている。災害大国日本では、南海トラフといった大規模災害の発生が指摘されており、危機管理体制の構築が進まないことでリスクが残された状態が続く。

また、所有者不明土地の増加は、森林管理や農地集約など公共事業の妨げとなり、住民サービスを低下させてもいる。課税面では徴税が難しいため、地方公共団体の税収が減少して地方財政の悪化にもつながる。これは、地方創生にとって明らかにマイナスである。

今後、大量の相続が団塊の世代で発生し、問題がさらに深刻化する可能性が高い。そうなる前に土地の所有権を明確化し、権利の移転を漏らすことなく把握する仕組みを構築する必要がある。

3――所有権を把握し管理する仕組み

1第1弾となる対策法制が成立

政府も事態の打開に向けて動き出している。2018年6月6日、参議院本会議で「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が可決された。

同法が施行されれば、公益性の高い事業における所有者不明土地の利用が可能となる。土地の収用手続きは簡素化され、最大10年間の土地等使用権の設定をすることも可能だ。

所有者が現れなければ、この期間を延長することも認められる。所有者が現れて引き渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復をして、土地を所有者へ返還すれば良い。同法は2019年6月までに施行される予定である。

同法が成立したことで、今後、公的分野の所有者不明土地の利活用が進むことが期待される。再開発や復興事業などの障害が取り除かれれば、政府の進める地方創生やコンパクトシティの形成にはプラスとなるだろう。

ただし、九州の土地面積よりも大きいと推計される所有者不明土地の利活用には、公的分野の開放だけでは不十分だと見る。民間の利活用が可能となる仕組みも同時に考えていかなければならない。今回の法案は、同問題に対処するための第1歩(喫緊の取組み)と捉えるべきだろう。

2抜本的な対策はこれからが本番

公益確保の応急処置は同法成立で可能となった。次は、所有者不明土地の根本的な問題に踏み込まなければならない。所有者不明土地の増加をこれ以上進めないためには、土地の所有権移転を確実に捕捉する仕組みが必要だ。政府は、相続登記の義務化や登記官への所有者特定に関する調査権限の付与など、2020年までに不動産登記法や民法など関連法の改正を目指す方針である。

また、土地の所有権を手放す際の要件設定(放棄制度)や手放された土地の受け皿作り(ランドバンク制度)などの検討も進んでいる。コスト面や課税面での課題は多いものの、導入されれば所有権の捕捉率が劇的に改善することが期待される。

2018年骨太の方針で示された「行政手続きのデジタル化推進」との絡みでは、所有者情報をマイナンバーと紐付けて情報を電子化し、自治体間の相互利活用ができる体制を整備することで行政コストを削減することも可能だろう。既存の仕組みを強化するだけでなく、新たな仕組みを考え構築していくことも求められる。

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(2018年7月18日「研究員の眼」より転載)
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