日本国内における「国際結婚・この20年の推移」-未婚化社会データ考察-「その先に在る運命の人」:研究員の眼

日本人男性の国際結婚は“アジア妻が約8割“、一方で女性は“多様“

【はじめに】

学際的な少子化対策研究のひとつとして結婚に関する研究も行っている立場上、「国際結婚ってどうなっているのでしょうか」という質問を受けることが少なくない。

特にこの質問はいまのところ100%、男性読者からの質問となっている。

男性の50歳時点・結婚経験なしの割合が4人に1人まで増加し、男性の未婚化が加速している状況の中、男性読者からの国際結婚への期待議論は当然、あると思う。

そこで本稿では、国のデータから、日本国内で婚姻届が提出されるケースの国際結婚(日本国内における国際結婚)の推移、ならびに最新状況をお伝えしてみたい。

本稿中のデータは、外国人の方と結婚した日本人が外国籍になる場合を含まないため、広義の日本の男女の国際結婚の状況ではない。あくまでも外国人と結婚し、日本の役所に書類を提出するケースを分析している。

本稿が日本における未婚化を背景とした「それでは外国人との結婚を通して日本における未婚化を変えることが出来るか」という意識からくるであろう筆者への質問を端緒としているため、取り扱うデータの範囲としては特に問題が生じないといえるだろう。

【意外と少ない国際結婚割合】

日本は四方を海に囲まれた島国であることから、国境が陸続きであるヨーロッパやアメリカの人々のようには、外国人と出会うことができない。

地図上、日本列島の西側には中国・韓国など大陸があまり遠くはない位置にあるが、東側は太平洋が広がっており、海を超えた出会いには限定的な地理条件の国である、といえるだろう。

そのような地理的条件からか、この20年間の推移を見てみると、国際結婚の割合はあまり多いとはいえない状況が続いている(図表1)。

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ここ5年間、国際結婚割合は3%台で推移している。10年前に一時的に増加はしたものの、20年前の割合に再びもどって推移していることから、日本における近年の国際結婚割合はほぼ3%台であると見ることが出来るだろう。

【国際結婚の上位の組み合わせから見えてくるもの】

国際結婚といえば「フィリピン妻」と浮かんだ読者は、データからは、感覚が20年前にとどまっているということができるだろう(図表2)。

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図表では単純に20年前と2016年を比較しているだけであるが、ここ5年間の推移をみても、1番多い組み合わせは「日本人夫と中国人妻」であり、全国際結婚のうち30%前後で推移している。

フィリピン妻との組み合わせはその半分の15%前後で推移しており、データ的に正確なイメージとしては、日本人男性の国際結婚についてみると「アジア妻との結婚が約8割で、最も多いのは中国人妻」となっている。

一方、日本人女性の国際結婚の方はどうであろうか。一言で言うならば、多様である。ここ5年間の推移を見ると「その他の国」の夫が最も多い状況が続いている。

この傾向は10年前の2006年でも見られているが、全国際結婚の割合の中で見ると20年間で6%台から9%台へとその割合を伸ばしている。

妻が日本人のパターンの中の割合で見ると、2016年単年では、その他の国の夫の割合が32%、韓国・朝鮮・フィリピン・タイの近隣アジア夫が41%、アメリカ・イギリス夫が21%となっているが、この5年間の傾向で見ても、割合の多様さはあまり変わらない。

韓国・朝鮮・フィリピン・タイの近隣アジア夫が約4割、アメリカ・イギリス夫が約2割、その他の国の夫が約3割で固定化している。

このことから、アジア妻が8割で固定化している日本人男性の国際結婚に比べて、日本人女性の国際結婚は、かなり多様性をもっている、と指摘できる。

【この20年間で見られる大きな変化の兆しとは】

この20年間で見られる日本における国際結婚の大きな変化は、パートナーの国籍の詳細の変化の話ではない。この20年間で全結婚における国際結婚の割合はあまり変わらないものの、その中身において「日本人妻と外国人夫」(日本人女性の国際結婚)の割合が実は着々と増加している、ということである(図表3)。

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10年前は国内における日本人男性の国際結婚と日本人女性の国際結婚が8:2であったのに対し、最近では日本人女性の国際結婚が増加傾向にあり、7:3へと変化してきている。

少なくともこの5年間を見る限りでは、日本人女性の国内における国際結婚での割合は増加の一途である。これまでは日本国内における国際結婚の主役はあくまでも「日本人男性とアジア妻」であったが、現在では約3組に1組は日本人妻と外国人夫のカップルの国際結婚へと変化してきていることが図表からはみてとれる。

【特に男性の結婚のイメージへの多様化が鍵となるか】

筆者はこれまで、夫婦調査に見る「学歴上位妻の台頭」-生涯未婚データ考-男性が背負わない結婚、という選択や「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方において、現実のデータ上では、今までの結婚のイメージを大きく覆す結婚形態が増加していることを示してきた。

大卒女性の夫の約3割が大卒未満であるデータなど、結婚支援の現場の大半の方にとっては「目からウロコ」という状況であった。

本稿での結果も含めると、やはり女性側においては結婚への価値感が、大きく変わってきているのではないか、ということが示されているように思えなくもない。

「男性が年下だったり、自分の学歴未満の学歴であったり、いろいろな国の国籍の方であったりしても、別にいいのかも」そんな声が聞こえてくるようにも思われる。男性が思うほどには「伝統的価値観上の勝ち組男性がいい」と思っていないのかもしれない。

国勢調査における50歳時点での結婚経験なしの最新状況を見ると、男性が4人に1人、女性が7人に1人である。

この未婚化データと照らしあわせて考えるならば、日本の未婚男性が「女性が年上だったり、学歴が上だったり、いろいろな国籍の方だったりしても、とりあえず多様な女性に積極的にあってみよう、チャレンジしてみようかな」という気持ちをもったその先に、もしかすると待ち望んだ運命の人がいる可能性は、低くはないのではないだろうか。

関連レポート

(2017年10月16日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 研究員

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