那覇=粟国(あぐに)路線の運休問題-資金不足なら、ふるさと納税を使ってはどうですか:研究員の眼

那覇=粟国路線の運休と継続が望まれる事情

【那覇=粟国路線の運休と継続が望まれる事情】

来月から、那覇=粟国路線の運休が決まった。当路線は、今年1月に運航が再開したばかりであるが、再開当初から4月以降の運航は不透明であった。

当時の新聞記事(*1)によると、1日1往復かつ片道2時間以上かかる旅客船では、通院するのに少なくとも2泊3日を要する。虫歯やけががあっても、宿泊費がかさむなどを理由に、通院を諦めるお年寄りもおり、島民の中には、継続を望む声がある。

島民の生活に不可欠な当路線が、今年1月まで運休していた原因は、2015年の着陸失敗事故にある。事故後、同区間を運航するヘリタクシーに対する補助が開始された。しかし、事故後2016年度の粟国空港乗降客数(年間)は、事故前2014年度の乗降客数の13%にとどまる(図表1)。このように、航空機とヘリタクシーとの利便性の差は明らかである。

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(*1) 2018/1/23沖縄タイムズ朝刊「ニュース近景遠景」

【運休の理由は資金不足か、安全性の問題か】

当路線を運航する第一航空によると、運休の理由は、運航費の補助がなされないことにある。再開当初から4月以降の運航が不透明であったのも、これが理由だ。

地元紙は社説(*2)を通じて、安全性への不信感が払拭されていないこと、安全性に対する信頼を回復しなければ、搭乗率の向上も望めないことを指摘した上で、「行政もいっしょになって離島振興の観点から安定運航に知恵を出し合ってほしい。」と訴える。

そこで、頼まれてもいないのに、資金不足解消方法について浅知恵を出そうと思う。安定運航のためには、安全性の確保や信頼回復に関する知恵も必要だか、これらについては他の方にお任せする。

(*2) 2018/1/17沖縄タイムズ朝刊

【路線維持の鍵は観光客】

JALグループ(国内線)の平均搭乗率は77%、最も搭乗率が低い路線でも47%である(2017年11月実績)。粟国村の人口は700 人程度と少なく、また、65歳以上が33%を占める。

定員19人の航空機を1日2往復運航し、住民だけで搭乗率77%を達成するためには、全住民が年間15回も往復する必要がある。目標を47%に引き下げても年間9回は往復する必要がある。1日1往復とはいえ、定員270名の船舶があることも踏まえると、路線維持には観光促進が欠かせない。

路線維持に観光促進が欠かせないのは、那覇=粟国路線に限った話ではない。2003年、羽田=能登路線を対象にANAと石川県との間で日本初の搭乗率保証制度が導入された。搭乗率保証制度とは、航空会社と地方自治体とで事前に約束した搭乗率を下回った場合、自治体が航空会社の損失を補填する制度である。

羽田=能登の例では、基準となる搭乗率を70%に設定し、搭乗率が70%を上回った場合は、ANAが石川県に販売促進協力金を支払うといった内容であった。観光客誘致への努力が功を奏し、石川県は、搭乗率保証制度導入初年度に1億円近い販売促進協力金を受け取っている。

また、ANAと石川県の事例を対象に、地域航空路線の持続可能性について分析した研究(*3)も、短期的リスクを排除する搭乗率保証制度と共に、長期的な需要創造の必要性を指摘する。

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(*3) 湊宣明、Morimoto, R (2011)「搭乗率保証制度を用いた地域航空路線の持続可能性を高めるための政策設計」システムダイナミクス学会誌No.10

【観光客誘致と財政負担軽減を実現する方法】

残念ながら粟国村の場合、石川県のような成功事例は期待できないであろう。2014年度の粟国空港の乗降客数12,449人と、航空機を利用する観光客2,364人(1,182人の往復分)の差分は、全住民が年間7回往復した場合に相当する。

「観光客に占める航空機利用率30%」と「全住民が年間7回往復」を前提にすると、年間観光客数1万人の目標が達成しても、搭乗率は57%に留まる。やはり、国及び地方自治体による運航費補助金等が不可欠である。しかし、粟国村は、人口700人程度で、前述の社説によると単年度の予算規模は15~16億円に過ぎない。観光客誘致費用も考慮すると、負担は大きい。

そういった事情があるなら、ふるさと納税を活用して、地域の外から資金を調達すればいい。使途を明確にし、かつ路線維持の必要性をわかりやすく説明することで、返礼品に頼らない寄附を目指してもよい。

さらに、航空機や船舶の往復券を返礼品にすれば、観光客誘致の効果も期待できる。返礼率が3割なら、航空機の往復券に相当する寄附額は49,000円、船舶なら22,000円である。年間観光客1万人の目標が達成できるなら、期待できる年間寄附額を推計すると1,505万円、返礼品に充てる費用を除くと1,050万円程度となる(図表3)。

第一航空が示した赤字見込み額、約2億6千万には程遠いが無いよりはいい。また、搭乗率の上昇により赤字の圧縮も期待できるし、ふるさと納税利用率(ふるさと納税を利用する観光客数の割合)によっては、より多い寄附額も期待できる。

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航空会社による運航コスト圧縮への取り組みと共に、行政によるふるさと納税制度活用の検討を期待する。往復券が返礼品になるなら、微力ながら私もふるさと納税で貢献したいと思う。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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(2018年3月13日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 主任研究員

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