2度あることは3度あるか~マイナス金利導入後の入札波乱:研究員の眼

マイナス金利政策導入後、金利が大きく低下した日が2日ある。

マイナス金利政策導入後、金利が大きく低下した日が2日ある(*1)。

1回目は、2月9日で、この日は10年長期国債金利が史上初のマイナス金利を付けた。2回目は3月8日で、この日は国内債券マーケットの代表的なベンチマークであるNOMURA-BPI総合が史上初のマイナス金利を付けた。マーケット全体の平均金利もマイナスになったことになる。

また、10年長期国債金利も過去最低を更新し、政策金利と同じマイナス0.1%を付けた。

1回目は中期(3~6年)ゾーンを中心に8bp程度低下し、2回目は超長期(11年超)ゾーンを中心に10~20bp程度低下している。

マイナス金利政策導入前の1年間で長期金利が5bp以上変動した日は7日間しかなかった。そのため、この低下幅は債券マーケットにとって非常に大きなものであることが分かる。

2つの日には共通点がある。

30年国債の入札である。国債は期限が来ると償還され、国はお金を返さなければならない。そのため、国は国債を定期的に発行して資金調達している。これはマーケットにとっては大きなイベントになる。

マーケットは売りと買いが均衡して値段が決定されるが、通常の売買であれば、数億~数百億という単位のため、それほど大きなインパクトはない。しかし、国債の償還や発行は数千億~数兆円という単位で行われる。

償還はマーケットから見れば売り、発行はマーケットから見れば買いと同じことである。更に、償還は残存期間がなくなっているためそれほどインパクトはないが、発行は債券の残存期間が長いため大きなインパクトがある。

そのため、国は事前に国債発行スケジュールや金額を公表し、できるだけマーケットへの影響が予想しやすいようにしている。それでも大きな金額が発行されることに変わりはなく、予想通りに行くとは限らない。これまでも、国債入札後に金利が動くということはよくあった。

2月9日は30年国債の入札結果が事前予想よりも良く(落札された平均の金利が、事前予想よりも低く)、入札後に金利全体は大きく低下した。この頃は短中期ゾーンにまだ低下余地(*2)があったため、短中期ゾーン中心に金利は大きく低下した。

3月8日はやはり30年国債の入札結果が事前予想よりも良く、入札後に金利全体は大きく低下した。この頃は既に長期ゾーンまでマイナス金利になっていて、長期ゾーン以下の低下余地は少なくなっていたため、超長期ゾーンを中心に金利は大きく低下した。

どちらも翌日には金利が上昇しほぼ元の水準まで戻っているが、30年国債入札は市場が動く大きな契機になっている。

次の30年国債入札は4月14日である。これまでと同様に金利全体が大きく低下するのか、既にマーケットに折り込まれて無難に過ぎるのか、非常に注目されるところである。

(*1) マイナス金利政策発表当日と翌日は政策による影響を吸収するため大幅に低下しているが、その日は除いている。

(*2) マイナス金利政策は日銀当座預金金利をプラス0.1%からマイナス0.1%へ変更したため、その差は0.2%である。そのため、国債金利全体はマイナス金利政策導入前の水準より0.2%は低下余地があると考えられる。

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(2016年4月12日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 チーフ債券ストラテジスト

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