ノンアルコール飲料がさらなる健康長寿社会をもたらす!?

ノンアルコール飲料の様々な効用を考えると、成人した人々が、食生活の改善を目指して、アルコール飲料の代替としてノンアルコール飲料を前向きに飲用することは、さらなる健康長寿社会の実現に繋がるのではないだろうか。
Laureen March/Fuse via Getty Images

ノンアルコール飲料の効用を考える

先日、国の消費者委員会が、特定保健用食品(トクホ)の認可申請を受けた2種類のノンアルコール飲料について、「未成年者が飲酒するきっかけになる可能性があり、必ずしも食生活の改善に寄与しない」等の理由で、トクホとして不適切だという答申を消費者庁に行なったという報道があった。

認可申請された2種類のノンアルコール飲料については、消費者委員会が、「成分の有効性や安全性に問題はなかったが、特定保健用食品にノンアルコール飲料が適切なのか、社会的見地から判断を行った」結果、不適切という答申が出されたのである。

消費者委員会からトクホとして不適切とされたノンアルコール飲料だが、市場では、車を運転する前でも飲めることや、妊娠・授乳中でも飲めること、また、アルコールの飲み過ぎを防げること、さらには、お酒の味や気分を味わえること等々を理由に、大きく需要を伸ばしている。

実際に、2013年のノンアルコール飲料の市場規模は、アルコール度数0.00%のノンアルコールビールが発売された2009年と比べ、約4倍にもなっているのである(*1)。

私自身もノンアルコール飲料の効用を痛感した経験を持っている。

実家に帰省し、夕食を共にした際に、肝臓を患っていた父が、ノンアルコールビールを飲みながら、『久し振りに子供たちと飲むお酒は本当に美味しい』といって、こぼれるような笑顔を見せたのである。その笑顔は、父に認知症の症状が現われて以降、まったく見たことのなかったものであり、私は、一瞬、父の認知症が治ったのではないかと錯覚したほどだった。

日本人の約4割は、遺伝子の関係でアルコールに弱いといわれている。一方、日本の一人当たり年間平均アルコール消費量は、平成21年のデータで6.99リットルとなっており、米国やカナダとほぼ同レベルで、中国やインドに比べるとはるかに多くなっている(*2)。

このような国民の飲酒状況を踏まえて、現在国は、「健康日本21(第二次)」の中で、「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を目指して、飲酒に関して数値目標を掲げ、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少」、「未成年者の飲酒をなくす」、「妊娠中の飲酒をなくす」の3つのことに取り組んでいる。

ノンアルコール飲料の様々な効用を考えると、成人した人々が、食生活の改善を目指して、アルコール飲料の代替としてノンアルコール飲料を前向きに飲用することは、さらなる健康長寿社会の実現に繋がるのではないだろうか。

*1 サントリーホールディングス株式会社ニュースリリース(2014.6.25)より。

*2 厚生労働省ホームページ掲載「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」より

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株式会社ニッセイ基礎研究所

常務取締役 社会研究部長

(2014年8月29日「研究員の眼」より転載)

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