第1四半期のJリート市場は7期ぶりに国内株をアウトパフォーム~海外資金の流入が市場を下支え:研究員の眼

昨年末比1.5%上昇しました。

2018年第1四半期のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、市場全体の値動きを表わす東証REIT指数(配当除き)は概ね1,700を挟んで±50の範囲で推移し、昨年末比1.5%上昇しました。

これに対して東証株価指数(TOPIX)は▲5.6%下落したため、Jリート市場の騰落率は2016年第2四半期以来7期ぶりに国内株式を上回りました(図表1)。

また、月次で3ケ月連続でのアウトパフォームは約2年ぶりのことです。このところJリート市場は株式市場の上昇に全く追随できず両者のパフォーマンス格差は大きく拡がりましたが、久しぶりに一矢を報いることができました。

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第1四半期の需給動向をみると、Jリートの主な買い手は海外投資家で、1月から2月にかけてJリートを656億円買越しました。

一方で、海外投資家は今年に入り国内株式を約2.6兆円売越しています(*1)。国内市場における海外マネーの影響力が強まるなか、「Jリート買い・国内株式売り」の投資行動がパフォーマンスの明暗を分けたと言えそうです。

ところで、海外投資家によるJリート買いの理由の1つに、日米金融政策の方向性の違いに伴うJリート市場の割安感が挙げられます。

米国では金融政策の正常化の一環として政策金利の引き上げが継続的に行われていますが(*2)、日本では現在の金融緩和が当面維持される見通しです。この結果、米国リート市場とJリート市場のイールドスプレッド(対10年国債利回り)を比較してみると、米国の1.9%に対して日本は4.1%と高い水準を確保しています。

さらに今後の日米短期金利差の拡大を勘案すると、為替ヘッジ考慮後のJリート利回りは上昇し海外からみた魅力度がより高まることになります。

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2月以降、世界の株式市場は米国金利の上昇や米中の貿易摩擦問題、米国IT企業の先行き不安を背景に高値波乱の展開が続いています。もちろん株価の下落はJリート市場とってマイナスに働きますが、反面、収益の安定性や高い分配金利回り、リアルアセットの裏付けといったJリートのデフェンシブ性が注目される機会でもあります。

これまでに蓄積した株式市場に対する相対的なパフォーマンスの劣後が今後縮小に向かうことを期待しています。

(*1) 国内株式は2018年1月から3月第3週までの累計(東京・名古屋2市場、1部・2部・新興市場の現物株)

(*2) 窪谷浩『【3月米FOMC】予想通り、政策金利を0.25%引き上げ。18年の年3回利上げ見通しは維持』ニッセイ基礎研究所、経済・金融フラッシュ、2018年3月22日

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(2018年3月30日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 主任研究員

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