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2018年04月12日 17時10分 JST | 更新 2018年04月12日 17時10分 JST

多彩な小型ロボットが活躍する超高齢社会(その2)-介護施設や病院から将来は惑星探査へ同行の可能性も:研究員の眼

パロをベースに「宇宙用」を開発する可能性は高いのではないか。

<メンタルコミットロボット PARO(パロ)>

このアザラシ型ロボット「PARO(パロ)」は、医療・介護・福祉の分野では世界的に知られているメンタルコミットロボットであり、"人の心"のケアを主な目的とするロボットである(写真-3)。

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写真は、寝ていたところを無理に起こしたため、まだ眠い様子である。通常、眠っている時間は口に"おしゃぶり"をくわえて充電を行っているが、その姿も可愛いと筆者は思っている。

現在の「パロ」は改良が継続され第9世代となり、過去、2002年には「世界でもっともセラピー効果が高いロボット」としてギネスブックで認定され、2009年には米FDA(米国食品医薬品局)より医療機器として承認されている。

「パロ」は「タテゴトアザラシ」の赤ちゃんをモデルとしており、見た目はまるで"ぬいぐるみ"だが、中身は様々な機能が組込まれた正真正銘のロボットである。

「ペット用」と「セラピー用」の2種類があり、両者ともメンタルケアに活用できるが、後者はより医療・介護・福祉施設向けに適した仕様となっている。前者の場合、ペットの飼育に制限のあるマンションや利用者(飼い主や家族など)にアレルギーなどがある場合のアニマル・セラピー等に有効である。

複数の機能を搭載しており、スイッチを入れると大きな瞳を開けて視覚センサー(鼻先)によってこちらを見る。頭部をやさしく撫でると気持ちよさそうな声を上げ、全身(体の上の面)の触角センサーで体の撫でられた位置を感知し頭や手足を動かす。

「ペット用」は鼻ひげに触れられるのが苦手で、触ると首を振ってイヤイヤをしたり、利用者の接し方によって性格も微妙に変化するという。このほかにも学習機能により名前を覚え、呼ぶと反応するようになる。基本的に穏やかなコミュニケーションをしてくれるアザラシ型ロボットであり、現在までに世界合計で5,000体が利用されている。

また現在までに、医療・介護領域で多数の実証試験も行なわれ様々なエビデンスも着々と集積されてきている。近年、非言語系のロボット等が多数登場する中、「パロ」の先進性は色あせていないようだ。

この他にも、10年ほど前から、将来の有人火星探査等のミッションで必要になると考えられる「宇宙用パロ」開発へ向けた長期の取組も始められている。その理由は、半年以上の長期間に亘る閉鎖空間の宇宙船内で、生活等を余儀なくされる乗組員のメンタル・セラピーのためである。

そして、数年前からは米国の宇宙関係のシンポジウムでパロの展示や講演などが行われてきている。現状では、まだどのようになるのかは未定である。しかし、パロは医療用で唯一のメンタル・セラピー用のロボットであり、非常に安全性や衛生面等で高い機能を有している。このため、パロをベースに「宇宙用」を開発する可能性は高いのではないかと筆者は考えている。今後の動向を注目したい。

[エンタテイメントや癒やし系ロボットの活躍の場]

(その1)ではエンタテイメントロボットの「aibo」や癒し系ロボットの「qoobo」を紹介した。それらと本稿のメンタルコミットロボット「PARO」の異なる点はどのような点であろうか。

前者は様々なオーナーの個人的なエンターテーナーやパートナー、相棒を目指すといった点に重点が置かれているが、「パロ」はセラピー効果の様々なエビデンス(科学的根拠)の構築を目指し、社会の医療や介護、福祉の現場で広く役立つことに重点が置かれていると思われる。

「PARO」も当初はペットとしての需要が強かったようだが、近年では認知症の人のBPSD(周辺症状)の改善などの効果も徐々に分かってきているという。

いずれにせよそれら小型ロボットは、目指す開発の方向性は少々異なっていても、様々な制約のある環境(ペットの飼育に制限のあるマンションや衛生面で動物の導入が難しい医療機関や福祉・介護施設等)で様々なユーザーがそれらロボットとの触れ合いによって癒しや気持ちの安定、楽しみなど、精神活動を活性化させる効果が得られるのである。

また、宇宙船内のような長期間の閉鎖空間内でのストレスの緩和などに向けた新たな「宇宙用パロ」の開発への取組も注目される動きである。これら非言語型のロボットの活躍と、さらにクラウド・AIを活用した対話型のシステムを組み込んだパーソナルロボットやソーシャルロボットの登場を通じて安全で利便性の高い社会の構築を大いに期待したい。

[ロボット開発とは人間を深く知ること]

また、ロボットがよりオーナーに愛され活用されるためには、オーナーの発する非言語の信号(表情、音声、接触等々)にロボット側をどのように対応をさせるのか、どのように癒しや面白さを提供させるのかが、研究開発上の大きなテーマである。

こう考えていくと結局、筆者を含め数多くの研究者も述べているが、「ロボットを開発するということは人間を深く知ること」という主題に突き当たる。開発者も人間というものをより多角的に研究、観察しなくてはならない点、心しておくべきだろう。

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(2018年3月26日「研究員の眼」より転載)
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社会研究部 准主任研究員
青山 正治