開始から1年、プレミアム・フライデー~利用は3%、雇用形態で非利用理由に差、生産性向上と施策に柔軟性が必要:基礎研レター

当初は期待?、最近は下火。
Toru Hanai / Reuters

1――当初は期待?、最近は下火のプレミアム・フライデー

昨年の2月24日から開始されたプレミアム・フライデー。今月で12回目、来月で1周年となる。

プレミアム・フライデーは、月末の給料日直後の金曜日に早帰りを促進することで、個人消費の活性化を狙った施策だ。当初は報道でも大きく取り上げられていたが、最近は下火の印象が強い。

ここで、あらためて、調査を踏まえて、プレミアム・フライデーの課題を考えてみたい。

2――認知度は95%だが利用率は3%、利用者は公務員や大企業正社員、インフラ企業で比較的多い

ニッセイ基礎研究所の調査(*1)では、プレミアム・フライデーの認知度は全体で94.5%と非常に高い(図1)。70代を除けば、いずれの層も認知度が9割を超えており、性別や年代、職業によらず、広く認知されている。

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一方で利用率は非常に低い(図2)。開始直後の昨年2月および3月の利用状況は、全体(無職を含む)で「勤務先では導入されなかった」(51.2%)が過半数を占め、「1回以上利用した」は3.0%に過ぎない。

なお、民間企業の正規雇用者に限定して見ると、「勤務先では導入されなかった」が80.7%、「1回以上が利用した」が4.2%である。プレミアム・フライデーは、高い認知度に対して利用者はごくわずかだ。

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利用の多かった層は、旗振り役でもある「公務員」(7.1%)や民間企業の正規雇用者のうち「大企業」(7.0%)、業種別には「電気・ガス・熱供給・水道業」(9.0%)である。

電気やガスなどのインフラ企業では、デパートや飲食店などのサービス業とは違い、プレミアム・フライデーによって顧客対応が増えて業務繁忙が予想されるなどの課題が少なかったのだろう。

大半の組織が導入を躊躇したようだが、当初からプレミアム・フライデーによって消費者の行き先となるような業種では、むしろ人手が必要となるために早帰りが難しくなることが懸念されていた。また、いずれの業種においても、日常の業務量が減らない中では、早帰りだけを導入することは難しい。

(*1)「家計消費と生活不安に関する調査」、調査対象:全国の20~70歳代の一般個人、調査手法:ネットリサーチ、実施時期:2017/4/6~4/13、調査機関:(株)マクロミル

3――「利用したかったが利用しなかった」も3%、正規は仕事終わらず、非正規は対象外?・収入減イヤ

図2では勤め先で導入されたが「利用したかったが利用しなかった」(2.8%)も利用者と同程度存在し、「利用する気はなく、利用しなかった」は5.5%である。

両者に対して利用しなかった理由を尋ねると、民間企業勤め全体では、「特に意識していなかった」(50.2%)が最も多く、次いで「仕事が終わらなかった」(38.5%)、「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」(16.7%)が多い(図3)。

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なお、利用しなかった理由は雇用形態によって異なり、正規雇用者では「仕事が終わらなかった」(56.2%)や「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」(21.9%)が多く、非正規雇用者では「特に意識していなかった」(63.0%)や「収入が減ってしまうのが嫌」(21.7%)が多い。

正規雇用者では、やはり業務量が減らない中では早帰りは難しい様子が窺える。一方で非正規雇用者では、制度の導入の仕方にもよるが、そもそも施策の対象外になっている可能性もある。また、時間給などで働いている場合は収入減少に直結するため、むしろ休みたくないという声もあるようだ。

4――利用者は「食事」や「買い物」が多いが「自宅で過ごした」も多い、過ごし方は可処分所得で違いが

利用者の過ごし方を見ると、「食事」(46.3%)や「買い物」(44.6%)が多いが、「自宅で過ごした」(30.5%)も多い(図4)。図は省略するが、未既婚や子の有無などのライフステージによっても大きな違いはない。一方で世帯年収別には、高年収層で「食事」や「買い物」が多く、低年収層で「自宅で過ごした」が多い。過ごし方はライフステージより可処分所得の影響が大きいようだ。

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消費額は、「3,000~5,000円未満」(32.0%)が最も多く、次いで「1,000~3,000円未満」(18.9%)、「5,000~10,000円未満」(16.8%)が多い。5,000円以上は、ライフステージ別には既婚で子のいない層や未婚層、世帯年収別には高年収層で多い。

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5――今後の課題~早帰りだけでなく生産性の向上もセット、実施日をずらすなどの柔軟性も必要

プレミアム・フライデーの利用を拡大させるためには、まず、業務の生産性向上をセットで進める必要がある。「働き方改革」が推し進められているところだが、仕事量が減らないことには、他の日の残業につながりかねず、早帰りだけを導入することは難しい。

また、業種や職種によって繁忙期は異なるため、プレミアム・フライデーの実施には柔軟性も必要だ。例えば、業種によっては客の少ない別の曜日にする、同じ会社の中でも一斉に早帰りが難しい場合は部署ごとに実施日をずらすといった工夫ができるだろう。

景気は緩やかな回復基調にはあるが、労働者一人当たりの実質賃金は伸び悩んでいる。また、ますます高齢化が進む中、国民全体で漠然とした将来不安も漂っている。消費意欲に火をつけるためには、合わせて可処分所得の引き上げなども進める必要がある。

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(2018年1月22日「基礎研レター」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 主任研究員

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