外国REITと外国債券からの資金流出が続く~2018年4月の投信動向:研究員の眼

全体的に資金流入が鈍化
Yuya Shino / Reuters

全体的に資金流入が鈍化

2018年4月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入をみると、国内株式、外国株式、バランス型へ資金流入していた。ただ、3資産クラスとも流入金額は3月と比べて減少した。特に国内株式への資金流入は4月が700億円程度と3月の約3,000億円から大幅に減少した。

一方、外国株式への資金流入は2,000億円を超え、流入金額は3月の約2,700億円から小幅の減少であった。

外国株式の中では、引き続きテーマ株ファンドの人気が高かった。ただ、4月はめぼしいテーマ株ファンドの設定がなかったこともあり、最も資金を集めた「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド」でも300億円を下回った【図表2】。

好調だった米ハイテク関連株が3月中旬から4月の上旬に急落したことが、テクノロジー系のテーマ株ファンドへの投資意欲を削いでいるかもしれない。

国内株式への資金流入の大幅減少は、株価上昇の影響と思われる。3月は日経平均が21,000円前後まで株価が下落した翌営業日を中心にパッシブ・ファンドへ資金流入し、パッシブ・ファンドには月間で1,200億円の資金流入があった。

それが4月は5日以降、株価が上昇傾向になる中、流出基調となり、パッシブ・ファンドから月間で150億円の資金が流出した。特に、日経平均株価が22,000円台に乗った19日と20日の2日間の資金流出が顕著であった。

また、中小型株アクティブ・ファンドについても資金流入は継続したが、4月は600億円台で3月の800億円からやや流入が鈍化した。

低収益な資産クラスの毎月分配型が解約されている

4月は3月と比べて国内株式、外国株式、バランス型への資金流入が鈍化する一方で、外国債券と外国REITからの資金流出が加速した。外国債券が3月700億円台から4月1,400億円弱に、外国REITが3月1,000億円弱から1,200億円の流出となった。

資金流出のうち、外国債券は900億円程度が、外国REITについては1,200億円弱が、毎月分配型ファンドからの資金流出であった。

主な資産クラスごとに毎月分配型ファンドの資金動向の推移を見ると、人気ファンドが分配金の引き下げを発表した翌月の2016年12月から外国REITの毎月分配型ファンドから大規模な資金流出が継続している【図表3:赤棒】。

それに加えて、2017年10月以降は外国債券の毎月分配型ファンドからの資金流出も顕著であった【黄棒】。

その一方で、バランス型の毎月分配型ファンドへは、流入金額こそ小さいものの一貫して資金流入していることが分かる【紺棒】。4月に100億円以上の資金を集めた「スマート・ファイブ(毎月決算型)」がまさにバランス型の毎月分配型である【図表2:赤字】。

つまり、毎月分配型ファンド全体で見ると資金流出が続いているが、毎月分配型ファンドだからといってすべてのファンドが解約されているわけではないといえよう。では、なぜ外国REITと外国債券の毎月分配型ファンドからの資金流出が続いているのであろうか。

外国REITと外国債券の毎月分配型ファンドからの大規模な資金流出が続いているのは、運用成績が関係していそうだ。資産クラスごとの毎月分配型ファンドの累積した(純資産加重)平均収益率をみると、多くの外国REITのファンドが2017年以降、低迷していたことが分かる【図表4:赤線】。

また、外国債券のファンドについても2017年10月以降は軟調であった【黄色線】。低調な運用成績が続いていることが、解約を促進させている面もあるだろう。

外国REITや外国債券が低収益化している要因の一つは、米国の利上げである。今後も米国の利上げが継続される見通しのため、引き続き厳しい運用環境が続く可能性が高い。ゆえに、外国REITや外国債券の毎月分配型ファンドからの流出傾向は今後も続くと思われる。

エネルギー関連ファンドが好調

4月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、パフォーマンスが良かったファンドは全てエネルギー関連ファンドであった【図表5】。中東情勢の悪化に伴い原油価格が大きく上昇したため、原油価格上昇の恩恵を受けやすいファンドが好調であった。

ただ、好調だった10ファンドのうち5ファンドは、4月に10%程度上昇したにもかかわらず、過去1年の収益率はマイナスであった。4月こそ高パフォーマンスだったが、この1年(厳密には2017年5月~翌年3月)いかに低迷していたかが分かる。

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

関連レポート

(2018年5月10日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 研究員

注目記事