期待される共働き世帯の消費と、政府統計の整備~現在の世帯・収支構造を捉えた消費統計を:研究員の眼

共働き世帯数は、すでに1990年代半ばから、専業主婦世帯数を上回っています。

最近の若い共働き世帯では、男性同様に働き、収入が多い女性も増えている。

こういった世帯が利用するのだろう。月10万円の塾機能つきの学童保育や1回5千円の子どもの習い事送迎タクシー、働く母親向けの小学校受験教室など、これまでにないサービスも登場している。また、これらは高額にも関わらず、数年先まで予約が埋まっているとも聞く。

経済力のある若い共働き世帯の収支を把握することは、低迷する個人消費を上向かせるための一つの活路とも成り得る。しかし、現在の政府統計では、彼らの実態を把握することは、なかなか難しい。

共働き世帯数は、すでに1990年代半ばから、専業主婦世帯数を上回っている(図1)。最近では、保育園待機児童問題の状況からも分かるように、特に若い世代で共働きが増えている。末子が0歳児の母親の就業率は、20年前は2割に満たなかったが、現在では約4割を占める(図2)。

若い世代で共働きが増えている背景には、冒頭のように、①女性の社会進出が進み、キャリア形成につとめる女性が増えていること、また、②景気低迷で労働者の収入が減少し、夫の収入だけでは厳しい世帯が増えていること、などがあげられる。

景気起因の労働者の収入減少はありながらも、女性の大学進学率が男性に追随している事実(図3)や、政府の「女性の活躍促進」政策による環境整備を考えると、今後ますます、①の働く女性が増えていくだろう。すでに現在でも、冒頭の一部の消費場面では存在感をあらわしている。

第二次安倍政権以降、物価上昇率の数値目標や消費増税もあったことから、以前にも増して、個人消費の動向が注目されている。増税後の低迷から抜けきれない現状において、今後、どこに伸びしろがあるかを考えると、可能性の一つに、①の女性による消費があげられる。

①の女性では、男性同様の働き方をするため、収入が多いが、家事・育児に対する時間制約もある。よって、冒頭に並べたもののように、まだ低廉化されていない商品・サービスでも、それらの与える付加価値によっては支出を惜しまない。

さらに、同じ年収の男女を比べると、いずれの年収階級でも、女性の方が男性よりも消費意欲が高いという特徴もあり(図4)、自分のための消費にも期待できる。

属性別の収支構造を把握しようとした場合、政府統計では、総務省「家計調査」が代表的だ。世帯主の年齢階級別に、勤労者世帯の収入や消費支出の状況が分かる。しかし、世帯構造の変化により、最近では、収支構造を把握しにくい部分もでてきているようだ。

「家計調査」は、昭和21年に開始された「消費者価格調査」が発展したもので、いくつかの改正がなされたが、家族は働く夫と専業主婦の妻、二人の子供という形が一般的で、家計は母親が一括管理していたような時代に形作られた。

しかし、世帯構造は大きく変わり、専業主婦世帯数を共働き世帯数が上回るようになった。また、未婚の子の親元同居率の上昇(図5)、単身世帯の増加(図6)という変化もある。

「家計調査」で、これまでに述べてきたような妻に経済力のある共働き世帯の状況を見ることを考える。

共働き世帯での収入については、夫の収入は「世帯主の収入(うち男)」、妻の収入は「世帯主の配偶者の収入(うち女)」という項目が該当する。しかし、これらは平均値であり、例えば、30代後半の女性では非正規雇用者が約半数であるため、男性同様に働く女性の状況は薄まってしまう。

ただ、この点については、女性の収入条件を指定するなどして、総務省にオーダーメイド集計を依頼すれば、妻の収入階級ごとの世帯数分布などを把握することもできるだろう。

しかし、有業人員が複数の家庭における家計の個別化(個計化)の進行についての指摘は多く、保育園の夫婦を対象に世帯の収入管理形態を尋ねた調査では、夫婦の収入を一体管理している世帯は半数に満たなかった(*1)。

つまり、残り半数の一体管理していない世帯では、一体化していない収入については調査回答を得にくい。

また、消費支出についても課題がある。「家計調査」で把握しているものは、主に世帯全体の消費支出であり、個人的な消費は把握しにくい。「何を、誰が、何に使うか」を記入するように案内しているようだが、個計化も進む中、詳細な記入を徹底することは難しいだろう。

また、調査方法にも課題がある。

「家計調査」では、紙の家計簿に記入し、調査員が回収する方式を取っているが、スマホの普及で若い世代ではアプリを利用した家計管理も広がるとともに、共働き世帯や単身世帯の増加で世帯の在宅率が低下する中では、現在の方式では、将来的にも調査協力者の確保は難しいだろう。

翻って、民間の事業会社では、POSデータや電子マネー、ポイントサービス等のビッグデータの集積が進んでいる。

これらは、個人の消費状況を詳細に、かつ、タイムリーに把握することができ、非常に魅力的な分析対象である。また、個計化が進む中で個人の消費状況を補完し得るデータでもある。

しかし、これらは消費支出のみのデータで収入との結びつきがなく、収支構造としては捉えられないこと、また、今後の広がりも予想される「民泊」などのシェアリング・エコノミーによる個人間取引はビッグデータにはなりにくいことを考えると、やはり、世帯に収入と支出を尋ねるという「家計調査」は貴重なデータ資源であり、現状を的確に把握できるような調査方法等の改変が望まれる。

「一億総活躍社会」では、より個人が活躍する時代になる。個人が収入を持ち、それぞれに消費をしていく時代を迎える中では、十分に個人消費の実態を把握でき、有益な消費政策の実施にもつなげられるような消費統計の整備を望みたい。

(*1) 神谷哲司(2010)「育児期夫婦における家計の収入管理に関する夫婦間相互調査」、東北大学大学院教育学研究科研究年報、第58集、第2号、pp.135-151

関連レポート

(2016年9月28日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 主任研究員

注目記事