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2018年04月24日 14時21分 JST | 更新 2018年04月24日 14時21分 JST

もっと知ろう!福祉用具や介護ロボットのこと-国際福祉機器展や福祉用具のセミナーに参加してみよう:研究員の眼

私達の日常生活においても、電動車いすなどで活動する人の姿を見かける機会が増えてきている。

英国の世界的な物理学者スティーヴン・ホーキング博士(76歳)が3月14日(現地時間)に亡くなった。博士は「車いすの物理学者」として世界的に知られ、難病(ALS:筋萎縮性側索硬化症)のため電動車いすとコミュニケーション支援用の音声合成装置を活用して精力的な研究活動を行ってきた。

そして幾つもの学説と共に数多くのユニークなメッセージを世界に発信し続けた。その姿を世界中の多くの人々が長く記憶に留めることになろう。

<自走用車いすや電動車いすの利用拡大は街(建物・道路等)のバリアフリー化が重要>

さて本稿では、上記に登場する福祉用具のうち電動車いす等について考察してみよう。

私達の日常生活においても、電動車いすなどで活動する人の姿を見かける機会が増えてきている。電車などの交通機関においては、駅職員が折りたたみのスロープを広げている光景をよく目にするが、これによって車いすを使う人の活動範囲がますます拡大していると感じている。

その背景には過去のバリアフリー新法(2006年12月施行 ※ハートビル法と交通バリアフリー法を一体化)による大規模なビル・ホテル・ホールなどの公共施設や空港・駅などの交通機関等の段差解消やスロープの設置、さらに駅から役所までの一連の経路を含む整備が、大きく奏功したと考えられる。

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催を控えるなかで、より整備が進んでいくと思われる。

<試乗して初めて分かること>

さて一般的には、電動車いすを操作した経験を持つ人はそうは多くないと思われる。筆者は各種展示会で機会あるごとに自走用車いすや電動車いす等に試乗することにしている。それは、試乗して初めて分かることが幾つもあるからだ。

まず、標準型の車いすに座ると座面は路面から40~45cm前後の高さはあるのだが、人が行きかう通路近くに行くと人が大きく感じられることと、目まぐるしく行きかう人々に衝突しないように緊張状態を強いられると思われた。

また、電動車いすに初めて試乗した際にはジョイスティックレバーを緊張から握り締めてしまい、操作が遅れ気味になることで左右に蛇行しながらの前進してしまう。担当者に質問すると、ジョイスティックは握り締めるのでなく、指で挟むようにして操作するのがコツらしい。

このように一度でも体験しておけば、次回の試乗ではスムーズに操作できるように感じた。介助用車いすも同様であり、ブレーキの操作手順等々の基本的な注意事項をも聞いて、それらを実際に体験しておくべきだと強く思った。

<高齢者の歩行能力の維持や移動支援>

高齢者などが、これら自走用車いすや電動車いすの活用に至るまでに、杖や歩行器、歩行車といった移動支援用の機器群を体験するのが一般的である。

介護保険制度では福祉用具貸与などで要介護認定者(要支援含む)は比較的廉価に様々な福祉用具を借りることができる。なぜレンタルかというと要介護者の状態像の変化に合わせて福祉用具の変更も必要になることがあるためである。

近年にはその福祉用具貸与の対象用具のごく一部に介護ロボット(ロボット介護機器)がレンタル対象となってきている。その一例を紹介してみよう(写真-1参照)。

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この移動支援機器(屋外用)はパワーアシスト機能が付いたシルバーカーのような外観を持ち、5キログラム程度の荷物を軽い力で運べる。様々なセンサーと制御技術によるパワーアシスト機能で、坂道の上りは荷物を積んでも軽く、下り坂では加速して前方に倒れ込まないように自動的に制動がかかり、傾いた道路の横断による片流れは自動抑制され直進ができる。

また、坂道でハンドルから手を離しても自動停止する。筆者は高機能の機種である「RT.1」、さらにコンパクト化されたこの「RT.2」を展示会の体験コーナーで、過去から試用してきているが、両機種とも着実にユーザビリティ(使い勝手など)の向上が実感された。また、この例の製品価格は、かなりの努力が払われているのではないかと筆者は思っている。

<歩行能力低下の「転ばぬ先の杖」>

歩行支援の用具としては、最初は杖(1点支持から4点支持)の活用が一般的で、転倒や躓きの可能性が高まれば歩行器や歩行車、買い物にはシルバーカーの活用へと、機器のサイズや機器の種類の変更が必要となってくる。

しかし、歩行の残存能力低下が意識され始めた当初からこうした機器を活用すれば、歩行能力を一定維持しながら、比較的長い間、1種類の介護ロボット(移動支援機器(屋外用))でカバーすることも不可能ではないかも知れない。

勿論、利用者の都合によって機器の置き場がないお店へ買い物に行くときには、カラフルな花柄の杖を活用するなど、時と場合に応じた福祉用具や介護ロボットの活用が不可欠である。

「転ばぬ先の杖」ということわざがある。転んだ後にいくら杖を提供されても意味が無いということだが、この分野でもまさにそうである。

脚力が衰えて転んだり、つまずいたりして器具を使っても遅きに失するように思うのである。むしろ、このような状態になる前に積極的に器具を活用し、それを通じて脚力のアップ、維持などを図った方がいいと思うのだが、いかがだろうか?

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(2018年3月29日「研究員の眼」より転載)
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社会研究部 准主任研究員
青山 正治