藤井市長を人質に籠城する検察

藤井美濃加茂市長の収賄事件で、昨日(8月15日)、3回目の保釈請求が却下された。公判前整理手続で、中林の贈賄供述以外、すべての検察官請求書証に同意しており、もはや「罪証隠滅のおそれ」はないはず。しかも、一昨日夕刻の、裁判官と面接した弁護士の話では、裁判官も好印象で、保釈金の話まで出たということだったので、今回の保釈は間違いないだろうと思っていた。予定の時間をかなり過ぎた時刻に出たのは、全く予想外の却下だった。

藤井美濃加茂市長の収賄事件で、昨日(8月15日)、3回目の保釈請求が却下された。公判前整理手続で、中林の贈賄供述以外、すべての検察官請求書証に同意しており、もはや「罪証隠滅のおそれ」はないはず。しかも、一昨日夕刻の、裁判官と面接した弁護士の話では、裁判官も好印象で、保釈金の話まで出たということだったので、今回の保釈は間違いないだろうと思っていた。予定の時間をかなり過ぎた時刻に出たのは、全く予想外の却下だった。

その後、今回の保釈請求について裁判官からの保釈求意見に対する検察官の意見書を閲覧し、検察が保釈に対して必死の抵抗をしていることがわかった。

これまで検察は、検察官側の立証に対する「罪証隠滅のおそれ」を主張していたが、それがなくなったことから、弁護側が予定している主張立証に関して「被告人と関係者が口裏合わせをする」などと主張しているのだ。

公判前整理手続に付された事件では、その手続の間に、主張立証を明示しておかないと、公判開始後には追加することはできない。そのため、第1回の公判前整理手続において、弁護側が主張立証しようとしている事項を、可能な限り明らかにした。その主張立証が「罪証隠滅」だなどと言いだしたら、公判前に主張立証を尽くさせ、公判で迅速な審理を行おうとする公判前整理手続という制度自体が成り立たなくなる。

検察は、なぜ、そんな無茶苦茶な主張までして藤井市長の保釈に反対するのか。

それは、検察が土俵際まで追い込まれているからだろう。

開示された証拠を見る限り、検察官請求証拠はあまりに希薄だ。中林の供述調書は、全く説明のつかない変遷だらけで、警察、検察の辻褄合わせの誘導が歴然としている。

しかも、中林が述べている「同席者がドリンクバーに席を立った間の現金授受」は、座ったテーブルとドリンクバーとが極めて近接している現場のファミリーレストランの状況からは、到底不可能だ。(このような全く信用性のない検察官調書の詳細な内容を、どういう経緯で入手したのかわからないが、現場の状況との不一致を無視して、詳細に掲載した新聞がある【8月13日付け朝日朝刊】。その見識を疑わざるを得ない。)

市長が保釈されたら、当然、記者会見を行うことになる。愛知県警の取調官の「こんなハナタレ小僧を選んだ美濃加茂市民の気がしれない」「美濃加茂を焼け野原にしてやる」などの美濃加茂市民を侮辱する暴言が、市長自身の口から明らかにされるかもしれない。そして、私が初回の接見で市長の潔白を確信したように、会見での市長の姿勢、表情、態度から、多くの人が潔白の印象を強めることになる。検察が最も恐れていることは、市長が保釈によって人前に出ることになり、世論が動かされることだろう。

検察がやっていることは、「藤井市長を人質に籠城している」に等しい。人質解放は、そのまま落城につながると考えているからだろう。

かくなる上は、検察官の主張立証が崩壊していることを、公判前整理手続の中で具体的に明らかにしていくしかない。

次回期日(8月19日)に向けて、主任弁護人の私を中心とする弁護団は、検察官立証を壊滅させ、藤井市長を奪還すべく、総攻撃を敢行する。

(2014年8月16日「郷原信郎が斬る」より転載)

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