【赤ちゃんにやさしい国へ】カラダを気づかっていると、社会も気づかえるようになる〜ヨガ雑誌「Yogini」対談〜

4月のある日、メールをいただいた。「Yogini」というヨガの雑誌の編集者の方からだった。・・・なんでぼくにヨガの雑誌の人からコンタクトがあるの?

4月のある日、メールをいただいた。「Yogini」というヨガの雑誌の編集者の方からだった。

・・・なんでぼくにヨガの雑誌の人からコンタクトがあるの?健康とはおよそ縁のない生活をしてきたおっさんなんですけど。

吉川めい、というヨガのインストラクターでありモデルでもある女性がいて、長らく「Yogini」の表紙モデルをやっていたのだけど、最近表紙は交代して誌面の中で対談記事の連載をはじめた。その対談の相手に吉川めいさんがぼくを指名してきたのだという。・・・え?・・・なんでぼくが指名されるの?・・・

よくよく聞くと、1月末に赤ちゃんの記事をきっかけにtwitterでやりとりしたとのこと。そこで、あーっと思い出した。

「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」の記事を書いた数日後、こういうツイートがメンションで届いた。

ツイートの中にある"昨年の私のブログ"が気になったので読んでみた。

父の話によると、ドイツ連邦議会では2011年に「子供の声を騒音としない」という法律が可決したそうです。騒音には厳しいドイツですが、理由は「子供の発する騒音は、自明な子供の成長の表現として、かつ、子供の正当な発達の可能性を保護するものとして、原則として社会的相当性があり、従って、受認限度内である」というもの。

私はこのことを聞いて、「ドイツって、こういうところがスゴイ!進歩的!」なんて感心したのですが、みなさんはどう思われますか?

へー、そんな法律があるんだ、いいことだなあと思い、こう返信した。

これに対し吉川さんはこう返してくれた。

これだけと言えばこれだけ。ぼくの方はどんな人か気になったのでブログを少し読んだりして、ヨガの先生をやられているらしいことはわかったのだけど、それっきり忘れてしまっていた。失礼な話かもしれないけど、一回だけのやりとりだし、その頃はいろんな人からtwitterであの記事について話しかけられることも多かったし、メールも一杯もらったもので。

そんな吉川めいさんが、ぼくと対談を申し出てくれた。ヨガ雑誌で。・・・どう受け止めればいいの?吉川さんのサイトや「Yogini」について調べると、本格的でまたおしゃれなヨガ雑誌だし、吉川さんはモデルでもあり大変きれいな女性だ。うーん、この美しい健康的な世界にぼくが行っても浮くよね。浮きまくってみっともないんじゃないだろうか。お受けしていいのだろうか。

・・・と悩みつつ、腰が引けているのにも関わらず、受けてしまった。ヨガの世界って知らない。知らないから興味あるし、せっかくのきれいな女性との対談のお話を断るのももったいない。

ということで、対談して撮ってもらった写真がこれだ。

やはり浮いている。違和感放っている。そして恥ずかしい。

恥ずかしい恥ずかしいと大いに緊張しつつ、対談とあいなった。

ヨガのことはあまりよく知らなかった。美容法、健康法としてこの十年くらい一般化しているようだな、その程度の知識。

吉川さんによれば、ヨガは"意識の使い方"なのだそうだ。

例えば、朝のレッスンに通う人びとがいる。朝ヨガをやることで、その日一日の"意識"が変わるものだという。満員電車に押し込まれて人とぶつかったり足を踏まれたりした時、ムカーッとなってキリキリしたりする、それが普通だと思う。ヨガによってそのキリキリがなくなるのだそうだ。自分がキーッとなった時に、ハッと気づくのだ。

"意識が自分の元に戻ってくる"という言い方をしていた。「我に返る」ということと同じなのだろう。ヨガによって自分を取りもどし、我を忘れている状態にならずにすむのだという。

吉川さんはヨガによって"気づき"を持った人が、何かを変えていけるのではないかと考えているそうだ。ここはちょっと驚いた。カラダに関わることを教えている人が、それによって社会にも変化を及ぼせると言っている。カラダと社会。無関係のようで、確かに関係してくるのだと思えた。ひとりひとりが健やかなカラダを持つことで、社会全体も健やかになる。そうかもしれない。

彼女は、インドに何度も行っている。お子さんと一緒に行くと、インド社会が子どもにいかに大らかで寛容かを体験したそうだ。例えば日本では「人様に迷惑をかけてはいけない」と教わって育ったものだが、インドでは「迷惑をかけあうのは当たり前、支え合って生きなさい」と教わる。だから子どもに関しても迷惑をかけあっていいし、支え合おうという文化があるのだそうだ。

ぼくは近々ブログで書こうと考えていたテーマと同じことを言われて驚いた。子育てについて考えていくと、迷惑をかけないでとやみくもに考えない方がいいんじゃないかと、感じていたところなのだった。こんなおっさんブロガーとヨガの先生が似た考え方を持っているとはと、びっくりした。だから対談を申し出てくれたのかな。

それにしても恥ずかしい。最後まで緊張しっぱなしだった。どう見ても、何度見ても、違和感を放っているなあ、このおっさんは。

ただ、ヨガには興味を持った。いまの日本は明治以来百数十年かけて"西洋化"してきた結果で、そこにはいろんな"無理"が凝縮されている。その無理を解きほぐすのはヨガのような東洋的な精神かもしれない。

子育てに関する悩みがもしかして"西洋化の無理"に起因するとしたら、ヨガのような方法論はその悩みを解消するひとつの策になってもおかしくないだろう。

ということで、「Yogini」最新号は5月20日発売なので読んでみてください。対談記事は・・・あまりしげしげ眺めないでね。恥ずかしいので。

コミュニケーションディレクター/メディアコンサルタント

境 治

sakaiosamu62@gmail.com