【パプアニューギニア・ダイビング 古見きゅう 連載第2弾!】

はっきり言ってどこにいるのか分からない。親切なガイドが「ここだ!ここ!」と指をさしてくれても分からないこともある。

はっきり言ってどこにいるのか分からない。親切なガイドが「ここだ!ここ!」と指をさしてくれても分からないこともある。

 自然界に生きる動物たちは外敵から身を守るために、生息する環境にあわせ身体の色を変えたり、形までも変化させてしまうものも少なくない。この生き物たちの護身術のことを僕たちは「擬態」と呼んだりする。海の中にも、かなり手の混んだ擬態を披露してくる生き物がたくさん存在するのだが、今回はその中でもトップクラスの擬態マスターを紹介したい。

 タツノオトシゴという魚の存在をご存知だろうか?と、訊くまでもなく知らないという方の方が少ないかも知れない。水族館などでもよく目にするし、いわゆる魚らしくない姿が特徴的で、海水魚の中でも幅広く周知されている魚のひとつだろう。ちなみにこのタツノオトシゴの仲間は漢字で書くと「海馬」となり、英語では「Sea horse」(シーホース)と呼ばれる。ひょろりとした伸びた身体と面長の顏。たしかに海馬とは良く言ったものだ。

 タツノオトシゴの仲間は世界に中の海に生息していて、特別に珍しい生き物という訳ではないのだが、その中にはとんでもない種類がいる。それが写真のピグミーシーホースだ。タツノオトシゴが体長15cmほどだとしたら、こちらはおよそ1cm。数種類知られている極小サイズのタツノオトシゴたちを、総称でピグミーシーポースと呼ぶ。この種は特定のヤギ類(柔らかいサンゴの仲間)や海藻などを宿主として生活し、見事なまでに身体の色を同化させる。さらにヤギ類のポリプのようにポコポコとしたコブを身体につけてものもいる徹底した擬態っぷり。たたでさえピント合わせが難しいのに、ゆらゆらとウネリに揺られ顏は常にうつむき、なかなかこっちを向いてくれない。不意に顔を上げる瞬間があるので、それをじーっと待つのみ。

 老眼の方は特に厳しいと聞くがピグミーシーホースを撮影するには「一に忍耐、ニに我慢、三が根気で、あとは運。」そこまで粘る価値があるのか無いのかは分からないけれども、個人的にはぜひ一度は見てもらいたい面白いお魚。こんな出会いがパプアの海にはたくさんいるのですね。

◯ Text by 水中写真家 古見きゅう

東京都出身。本州最南端の町、和歌山県串本にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。 現在は東京を拠点に国内外の海を飛び回り、独特な視点から海の美しさやユニークな生き物などを切り撮り、 新聞、週刊誌、科学誌など様々な媒体で作品や連載記事などを発表している。著書に海の生き物たちのコミュニケーションをテーマとした写真集「WA!」(小学館)などがある。 2012年には自身初となる海外での個展も開催した。

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*パプアニューギニア*

パプアニューギニアは、赤道のすぐ南に位置しており、日本から直行便で約6時間30分の距離にあります。世界で2番目に大きな島、ニューギニア島の東半分をはじめとする600の島々からなり、南太平洋最後の楽園と言われ、そこには美しい海と、山々の深い緑、長い歴史の中で受け継がれた伝統の文化が息づいています。自然と触れ合う旅、文化を探訪する旅など、パプアニューギニアでは、様々な旅の楽しみ方が皆様をお待ちしています。

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