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2018年11月13日 11時49分 JST | 更新 2018年11月13日 11時52分 JST

Stop!セクハラ:ラオスでの安全でジェンダー平等な学校づくり

ラオスの山岳地域でも、学校でのセクハラを含むジェンダーに基づく暴力について啓発し、被害を減らす活動を行っています。

セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)を告発し、世界中で性暴力について議論する大きなきっかけになっている#MeToo運動。#MeTooなんて遠い世界の話、と思うようなラオスの山岳地域でも、学校でのセクハラを含むジェンダーに基づく暴力について啓発し、被害を減らす活動を行っています。その活動の詳細についてお伝えします。

話す場づくりからスタート

Plan International
教師を対象としたジェンダートレーニングの様子

2016年にラオスの北部に位置するボケオ県パウドン郡の中学校と高校で、「学校でのジェンダー平等促進」プロジェクトを開始した当初は、学校で起きるジェンダーに基づく暴力についての実態が十分につかめていませんでした。活動開始後は、最初に「ジェンダー平等で安全な学校づくり」を目指した教師へのジェンダートレーニングを行いました。教師たちは、一般的な暴力(ラオス語での暴力は精神的暴力も含む)やジェンダーに基づく暴力※について参加型の活動を通して学んだあと、暴力が生徒に及ぼす影響や学校での事例、対応について話し合いをしました。トレーニングの場では、参加した教師たちが驚くほどオープンに発言をしました。たとえば、男子生徒が女子生徒の胸を触る、酔った先生が女子寮に行き女子生徒の身体を触った、男子生徒が携帯電話で女子生徒のスカートの中を撮影した、トイレの覗き見など、タブー視されるトピックであるにもかかわらず、実際に学校で起きているジェンダーに基づく暴力の実態が浮かび上がってきたのです。

※ジェンダーに基づく暴力:性暴力だけでなく、女性だから、男性だからということで受けるあらゆる形態の暴力。男女の社会的な力の不均等やジェンダー規範が原因となり、起こる暴力

「大したことではない」から「暴力」への認識の変化

教師トレーニングに続く次の活動として、生徒間で意識啓発を行うための子どもクラブを各校に結成しました。教師からあげられた事例をもとに、生徒たちが主体となって意識啓発活動を行うためのツールとして、紙芝居型イラストカードを作成しました。

Other Space Original Series
おー胸でかいな!とからかう
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携帯電話でスカートの中を撮影する
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携帯で胸を撮影しSNSに掲載する
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女子生徒の身体に触る先生
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カードの裏には話し合いをするための質問やまとめを記載

11~18歳ぐらいまでの子どもクラブのリーダーたちの男女に、このツールの有効性について試してもらうことにしました。かなりデリケートな内容のため、当初はリーダーたちの反応を心配していましたが、恥ずかしいのかイラストが面白いのか、リーダーたちはなぜかイラストを見て大笑い。意外と楽しそうに議論がすすんでいきました。「このイラストの中の女の子はどんな気持ち?」という質問に、女の子たちが「傷つく!」とか「怒ってる!」と勢いよく回答します。「こんなこと、ただのからかいだよ」と思っていたかもしれない男子生徒たちが、女子生徒の意見を聞いて何かを学んでくれることを願って観察を続けました。

Provider
イラスカードを使って意識啓発活動の練習をする高校生のリーダー

次に原因に関する質問です。「なぜこの男の子はこんなことするの?」という質問に、ある17歳ぐらいの男の子が「勇敢だと見せつけるため」と言いました。女の子にセクハラできる男の子が勇敢であるという、誤った「男らしさ」を子どものころから刷り込まれているようでした。子どものころの早い段階からジェンダー平等について学ぶことの大切さを改めて実感しました。

男子生徒の行動に変化が

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学校での変化について共有してくれたリーダーの女の子(左から2番目)

こういった活動は、成果を測るのが難しい部分がありますが、子どもクラブのリーダーをつとめる14歳の女の子は「子どもクラブの活動を始めて、男子生徒が以前より紳士的になった感じがします。以前はひとりで歩いていると男子の集団からからかわれることがありましたが、今はもうありません」という学校での変化を共有してくれました。

ほかにも、ある男性教師から「うちの学校では男子生徒が女子生徒の胸を触ったり、スカートめくりをしたりする嫌がらせが減りました。今までこのプロジェクトに関わってきた教師としては、大変うれしい重要な変化です」という話を聞くことができました。以前、対象校で男子生徒が女性教師にセクハラをした事例を聞いた際、「子どもは大人の真似をする」という指摘があがりました。男子生徒が女子生徒を尊重するようになるためには、大人が自分たちの態度や行動を見直さなければならないし、男性中心・優位な社会構造も是正していかないといけません。

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子どもクラブの活動の様子

先日は、生徒がジェンダーに基づく暴力を受けて報告してきたときの教師トレーニングを実施しました。これからは、被害にあってしまった子どもたちがもっと声をあげられる体制を整備するとともに、学校が子どもたちの声に真摯に耳を傾け、適切な対応ができる仕組みづくりに力を入れていきたいと思います。

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長島千野 プラン・インターナショナル プログラム部ラオス駐在
長島千野

プラン・インターナショナル プログラム部 ラオス駐在

神奈川県出身。民間企業勤務を経て、NGOへ転職。カンボジアで児童労働と人身売買防止プロジェクト、ケニアで干ばつ被災者支援、福島で原発事故の被害を受けた子どもへの支援に携わる。イギリスの大学院でジェンダーと開発を学んだ後、2015年から公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンへ入局。ラオスで学校におけるジェンダー平等促進プロジェクトの運営管理を行っている。