都内の会社にリモート勤務している齋藤有子さん。現在は都内在住ですが、つい最近まで新潟でもリモートワークをしていたそうです。
2人の子どもを育てながら、社員として社長室に所属し、秘書業務やプロジェクト管理などを担当、さらにワーママ&ワーパパのためのWEBメディア「LAXIC(ラシク)」の事業部長も兼任。
リモートワークで複数のプロジェクトを円滑に進めるために、齋藤さんが実践しているワークスタイルについてうかがいました。
齋藤有子(Saito Yuko)
株式会社ノヴィータの社長室に所属し自社事業のプロジェクト管理を行う一方、2015年8月にオープンしたワーママ&ワーパパのためのWEBメディア「LAXIC(ラシク)」の事業部長を兼任。
福岡県生まれ、青山学院大学法学部卒業。車載音響機器メーカー法務部で3年勤務した後、新規事業部にて携帯課金コンテンツのプロモーションを担当。業務に従事するかたわら、2007年には社会人として東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムにて学ぶ。2008年よりIT企業2社にて携帯コンテンツの企画プロモーションを担当後、現在に至る。プライベートでは2児の母として仕事と子育ての両立に奮闘中。
LAXIC(ラシク)http://laxic.me/
私らしく働くためのリモートワーク
-現在どんなスタイルで、どんなお仕事をされていますか?
齋藤さん(以下敬称略):2010年産まれの女の子と2012年産まれの男の子の子育てをしながら、リモートワークで働いています。
担当業務は3つあります。弊社会長の秘書業務、そして自社事業のプロジェクト管理、それからWebメディア「LAXIC(ラシク)」の運営をしています。
それぞれについてもう少し詳しく説明すると、秘書業務は会長のスケジュール管理と、さらに会長が考えていることを文章化して伝えるといった社内のコミュニケーションも担っています。
自社事業のプロジェクト管理は、全体の進行状況を確認し、予定通りに進んでいない場合は原因を確認し、問題解決をはかるという業務です。
そしてLAXIC(ラシク)はご存じですよね?
-はい(笑)。LAXIC(ラシク)は、ワーママ・ワーパパに向けて情報を発信しているメディアで、私もライターとして参加していますので。
齋藤:LAXIC(ラシク)のネーミングには、「私らしく働く」という意味が込められているんです。
現在の女性の生き方は非常に多様で、それぞれの環境が違うのは当たり前。働き方には「正解」はありません。だからこそ、誰かと比べるのではなく自分らしくあればいい、そう思っています。
-自分らしく働く、というコンセプトが素敵ですね。
齋藤:大切なことだと思います。私がまだ結婚も出産も具体的に決まっていない22歳のころ、1歳のお子さんを抱えながら在宅ワークをしている人に出会ったんです。その人はweb企画とライティングをされていたんですが、その姿を見て漠然と「私もいつかはこんな働き方ができたらいいな」と憧れていました。
はなから「できるわけがない」と考えるのではなく、「リモートワークっていいな」と思うことがまず大切だと思います。「できる」とわかれば、そのためにどうすればいいか考えて、その方向に進むことができます。でも、周りにそういうケースがないと方向性を定めることが難しいので、私たちのメディアを通じて伝えていきたいと思っています。
-齋藤さんご自身のリモートワーク歴は?
齋藤:私の実家は福岡なんですが、2007年に母が亡くなったとき、仕事などで忙しくそばにいてあげられなかったことをとても後悔したんです。
それがリモートワークを含め「働き方」を真剣に考えるきっかけとなりました。その後転職し、父が病気になったときには当時の会社にリモートワークを許してもらったこともありました。
父を見送った4年後、2012年にノヴィータに入社しました。その際の条件が「業務に差し障りのない範囲で在宅勤務も可能」だったので、そのころからリモートワークをしていましたね。
2014年11月から家庭の事情で夫の実家の新潟に移ると決まったとき、いつでも会いに行ける都内とは違ってそれなりの覚悟が必要でした。
新潟の企業への転職も考えましたが、社長(現在は会長)の小田垣が「成果に対して報酬を出しているので、成果が変わらないなら働く場所はどこでもかまわない」と言ってくれたんです。そこで2015年12月まで新潟でリモートワークを経験して、2016年からまた東京にいます。
-ご家族の方の反応は?
新潟の家族、親戚は「そんな仕事あるの?」と驚いていました。地方にいながら東京の仕事ができるのが理解できないようでした。
東京への出張時に子どもたちを預かったりしてくれるなど、義理の両親のサポートにも助けられました。
これからのスタンダードは場所にとらわれず働くこと
-仕事は1日のうちいつされているんですか?
齋藤:新潟の時は、平日は朝8:15に保育園のバスが自宅前に到着していました。子どもたちを見送ったあと、8:30ごろから仕事開始。16:00に子どもが帰宅するまでが勤務時間でした。
少しでも仕事時間を作りたいので、近所の歩いて通える保育園ではなく、ちょっと遠いけれど園バスがあって家まで送迎してくれる保育園を選びました。
現在は8:30頃保育園に2人を送り、その後18時のお迎えまで仕事をしています。
-リモートワークで困ったことはありますか?
齋藤:すぐ近くにパソコンがあるので、つい労働時間が長くなりがち、ということですね。それから、自宅にいるので子どもの「ママ!」「遊んで!」がすごいです。でも、それは時間を気にせず仕事をしてしまう私にとっては「子どもが帰ってくるまでに終わらせないと!」「今日は早く寝かしつけて仕事をしないと」というメリハリになっているかもしれません。
仕事が終わらないときは、子どもを寝かしつけてから再開するので、どうしても夜型になりがちな部分はありますね。
-私も子どもが小さいころは、深夜業になりがちでした。
齋藤:私はメールを送る際には「送信時間」に気を配ります。最近は会社のメールを自分の携帯に転送している方も多いので、22時以降は「予約送信機能」を使い、翌朝8時にメールが相手に送信されるようにしています。
「齋藤さんは朝早いんだな」と思われがちですが、実は夜中の1時に送ったものだったりします。
-まさに「齋藤さん、朝早いんだな」と思っていました(笑)。ほかに気をつけていることはありますか?
齋藤:リモートワークで一番大事なのは信頼関係です。相手にはこちらの状況がわからないので、自分宛てのメールには読んだことを示すために「あとで連絡します」だけでもすぐに返信するよう心がけています。
また、家に引きこもりがちになるので、極力身だしなみには気をつけて、Skype会議では、実際に出勤するのと同じ身なりで臨んでいます。......と言いながら、先日、上だけきちんとした格好で、下はジャージ姿でいたら、まんまとバレました(笑)。
-コミュニケーションは大事ですね。
齋藤:なんでもリモートがいいわけではなく、大切な話し合いは直接の方がいいと考えています。ネットを介したミーティングでは人数が増えると声が聞き取りづらいですし、回線が切れたりしたら致命的です。
新潟にいたころは、会長と社長の時間が空いているタイミングに合わせてスケジュールを調整して、月1、2回は東京に行くようにしていました。
-これからのリモートワークの可能性についてどうお考えですか?
齋藤:かつて「在宅」といえば、プログラマーやエンジニア、電話オペレーター、カスタマーサポートなど専門的な職種限定で、いわゆる私のような「総合職」は対象外でしたので、リモートワークができる職種が広がっているのはいい傾向だなと思っています。ネット環境がさらに整備されて、ますますリモートワークは増えていくと思います。
出産や介護、家庭の事情など「場所」の制約でやむなく仕事を辞めるしかないと思い込んでいる方に、リモートワークを含め、いろんな選択肢があることを伝えたいですね。
リモートワークは、単に通勤時間がなくなるとか、家事をしながら働けるというだけでなく、物理的に離れていても信頼されたり、マネジメントできることを可能にするのです。社会人としてオフィスで必要なスキルがあれば、向いている人、そうでない人というのも特にないと思います。
私自身もロールモデルとなる先輩ママたちを見てきたことで、「子育てと仕事の両立はできるはずだ」と考えるようになったんです。
どんな仕事でも、ある程度の犠牲や制約は当然つきものですが、不必要な犠牲は避けるべきです。リモートワークの長所と短所をきちんと理解し、多くの方が働き方を使い分けるようにすれば、いまの社会が直面しているさまざまな問題が解決するのではないでしょうか。
-先輩ワーママのスタイルを参考に「自分らしい働き方」を見つけて実践している齋藤さん。そのワークスタイルを見て、さらに若い世代が「その人らしさ」を輝かせていく。そんな連鎖が続いていく素敵な未来はもうすぐそこまで来ているのでしょう。どうもありがとうございました。
この記事の著者:曽田照子(Teruko Soda)
ライター。広告プロダクションでコピーライター経験後、1992年よりフリー。書籍、広告、WEB、フリーペーパー、情報誌など、多彩な媒体に執筆。得意分野は子育てと生活、女性の生き方。著書「ママが必ず知っておきたい!子どもに言ってはいけない55の言葉」メイツ出版、「『お母さんの愛情不足が原因』と言われたとき読む本」中経の文庫、「お母さんガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気を失う言葉66」学研パブリッシングなど。
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