戦後70年 悲劇の記憶を語り継ぐ ~広島~

連合は毎年6月から9月を「平和行動月間」と位置づけて、沖縄・広島・長崎・北海道(根室)にて「平和4行動」を展開し、日本全国からの参加を呼び掛けている。

2弾:広島からのメッセージ

連合は毎年6月から9月を「平和行動月間」と位置づけて、沖縄・広島・長崎・北海道(根室)にて「平和4行動」を展開し、日本全国からの参加を呼び掛けている。

戦後70年を迎え、今、次世代に何を継承していかなければならないのか。

第一弾に続き、広島の「語り部」坪井直さんと畠山裕子さんのお話にあわせて、連合広島から寄せられた平和への思いについてメッセージをご紹介します。

原爆投下のその時 〜広島〜

坪井 直さん 8月6日、原子爆弾で大けがをした坪井さんは、救援に来た軽トラックで病院に搬送され、一命をとりとめた。

せめて火のない所に逃げてくれと

その時、救援の軽トラックは10人も乗ればいっぱいでした。小2くらいの女の子が足を掛けて乗ろうとしたら、助手席にいた軍人が「乗れるのは若い男性だけだ!子どもや女、年寄りは乗るな! 戦争に役に立つ者だけ乗れ!」と言うて怒るんです。

その子は泣きながらトラックから降りて燃える広島の街の中へ逃げていった。私は、けがで立つこともできなくて、助けることができなかった。せめて、火のない所へ逃げてくれよと思うだけが精いっぱいで...。それが、死ぬまで続く私の負い目です。胸にいつもあるんですよ。

畠山裕子さん 爆心地から北に3・5㎞の安佐郡長束村(当時)の長束国民学校で被爆。当時6歳。

恐怖の記憶を削り取って生きてきた

あの日は月曜日で学校があったんです。家では手伝いばかりでしたが、学校に行けば、先生は優しいし、友達と遊べるし、天国のようでした。

8月6日8時15分、私は友達とおはじきの取りっこをしていて、ぴかっと光ったのは覚えていません。気が付いたらドーンという音とともに体がピンと上がって、必死で目と耳を押さえて口を大きく開けました。そうするよう教えられていたんです。真っ暗な校庭に行くと、先生が血を流している友達を抱きかかえていました。よく見ると校庭全体の人がぐるぐる回っていました。今でもどうしてか分かりません。

広島の水道局に勤めていたおばさんは、だるい、だるいと言って傷も何もないのに16日に亡くなりました。私の家は農家で、おじいちゃんは道行く人にわら草履とトマトをあげていました。私も一緒にトマトを渡していたんですけど、皮膚を垂らして血だらけの人たちの記憶はまったくないんです。恐怖の記憶を削り取ってかろうじて生きてきたんだと思います。だから今でも資料館に入るのがとてもつらい。「核兵器は絶対なくそうと思って頑張った」と言いたいけど、核兵器が広がるばかりで死ぬに死ねません。

~「平和4行動」連合広島からのメッセージ~

山崎幸治連合広島 事務局長

平和を求める声をともに上げよう

連合広島では、被爆地の地方連合会として、平和の尊さを社会へ広くアピールするため、「平和学習会」「ピースウォークガイド研修会」をはじめ、「なくそう核兵器!平和行進」「核実験への抗議の座り込み」など、さまざまな取り組みを積極的に推進している。特に今年は被爆70年の節目を迎えることもあり、被爆体験の「次世代への継承」を最重要課題として位置づけて、広島県被団協とも連携しながら、大学生や高校生も交えた講演会活動などに取り組んでいる。


70年という年月を経て、戦争の悲惨さや原子爆弾の脅威の実相が風化してきているとも言われる。しかし、連合の平和行動に参加して「語り部」の体験談を聞き、平和記念資料館を見学することによって、すべてのものを奪い尽くし、長年にわたり被爆地・被爆者を苦しめている原子爆弾の非人道性を知り、戦争の悲惨さや平和の大切さを肌で感じていただけると思う。

国民軽視のやり方は極めて問題

安倍内閣は、国民への十分な説明や議論を行うことなく集団的自衛権の行使容認の閣議決定を強行し、18年ぶりに「日米防衛協力のための指針」改定に合意した。集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を前提に、自衛隊の米軍への協力を地球規模に拡大するものであり容認できない。国会審議の前に既成事実化をはかるという政府のやり方は、国民を軽視するものであり極めて問題だ。このような状況があるにもかかわらず、大きな批判の声が上がらないことについても危機感を覚える。

戦後70年の今夏の平和行動では、戦争・被爆の記憶を次世代に引き継がなければならないということを強く訴えていきたい。一人でも多くの組合員の皆さんに「平和4行動」に結集していただき、戦争の悲惨さを学び、「社会の平和と安定」を求める声をともに上げるよう呼び掛けたい。



※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年6月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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