好奇心のままに造る。飲む。世界的ブームのクラフトジンはなぜこんなに人々を惹きつけるのか

とっておきのクラフトジンに出会えるお店もご紹介。

ジントニックやジンライムなど定番のカクテルでおなじみのジン。カクテルやスピリッツに詳しくなくても、誰でも一度は飲んだことがあるのではないでしょうか?

実は今、小規模生産者によって造られている"クラフトジン"が、世界的なブームとなっています。その波は、一昨年前あたりから日本にもじわじわと押し寄せてきて、レアなクラフトジンが楽しめるバーも続々と登場しているのだとか。

そもそもジンってどんなもの?それぞれに違いはあるの?そんな疑問に飲料専門家の江沢貴弘さんに答えてもらいつつ、とっておきのクラフトジンに出会えるお店もご紹介。

これからますますアツくなるであろうジン。まだ詳しくない人も、もうその魅力にハマっている人も必見です!

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話を伺った人

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江沢貴弘

飲料専門家&開業コンサルタント。あらゆる飲料のスペシャリストとして活躍。レコールバンタン、日本ドリンク協会など、カリキュラム構築や講師として活動。カフェ、BAR、レストランと様々な業態の飲食店で従事し、バーテンダーとしても研鑽を重ねる。

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薬草を思わせる匂いも納得、ジンはもともと薬だった

「ジンが一般的に認知されたのは、17世紀のオランダです。ジンに必ず入れる薬草ジュニパーベリー(ネズの実)には利尿作用があり、解熱やデトックス効果があると考えられ、オランダの医師が考案したのが始まり。その爽やかな風味が美味しいと、病気でない人も嗜むようになり、嗜好品としてヨーロッパに広まっていったのです」(江沢貴弘さん、以下同)

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「原料はライ麦、大麦、とうもろこしなどの蒸留酒で、ジュニパーベリーが入っていれば、ジンと定義されます。ジュニパーベリーの他、コリアンダーなどの香草が入っているのが特徴ですね。これらの香草のことを『ボタニカル』と呼び、その配合によってジンの個性が創られるんです」

なぜ今、クラフトジンがブームに?

「2008年にドイツの醸造所から生まれた、南ドイツのブラックフォレスト原産の珍しい47種類のボタニカルを使用した『MONKEY 47(モンキー47)』や、2009年に発売されたイギリスの『SIPSMITH(シップスミス)』。

それまでのジンとは違う個性豊かな味わいが、ブームに火を付けたと言われています。以降、じわじわとヨーロッパ中に広がっていきました。私が3年前にドイツのデパートに行ったときには、既に酒売り場は高価で個性あふれるクラフトジン一色でしたね」

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「顔の見える小規模な造り手の、クラフトマンシップが感じられる味わいが、酒好きのツボを刺激したんでしょうね。またクラフトビールもすでにブームになっていたので、クラフトジンというものを受け入れる土壌もできていたと考えられます。

ちなみに、ジンとは、蒸留酒にジュニパーベリーが入っていればOKなもの。そのため、あとはボタニカルを自由に組み合わせて造る、つまり創意工夫のしがいがある飲料なんです。また時期を選ばず、一年中生産ができます」

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「ヨーロッパでは家族経営の生産者も多いため、そうした点から小規模生産者にクラフトジンというものが向いているのも、広まった一因だと思われます。

また、その土地で作られている農産物、特産物を使うことも多いのも特徴。ハチミツやクランベリー、ローズと、好奇心のままにクラフトマンシップを追求できるのも、多くの生産者を虜にしているんでしょう。入れるボタニカルの量を倍にしたり、蒸留方法を変えてみたりと、個性の出し方は千差万別です」

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「一般的に、通常のジンは、連続式蒸留*を繰り返すことで、アルコールの純度を上げていき、限りなく原料の風味がなくなっていくのですが、クラフトジンは、原料の風味を残すため単式蒸留*をしている所が多く、原料の旨味や風味が感じられます。原料の個性が出ているのもクラフトジンの魅力ですね」

単式蒸留...古くから用いられている伝統的な蒸留方法。1回の蒸留ではアルコール度数は低く20度程度で、2、3回蒸留(40〜90度)を行う場合もある(蒸留の回数が増えると風味が減りよりアルコールが強くなる)。主に、原料の風味をしっかりと残したい時に用いる方法。

連続式蒸留...1回の蒸留で何度も蒸留を行うため非常に高濃度のアルコールが作れる。単式蒸留酒と比べて、スッキリとクリアな味になる。主に、原料の風味はなくなり、より純粋なアルコールを作りたい時に用いる方法。

クラフトジン、どうやって飲む?

「クラフトジンならではの、個性豊かな原料やボタニカルの風味を楽しむためには、ストレート、ロック、トニックウォーターと、シンプルに飲むのがオススメです。まずは、香りが開く常温のストレートで、クラフトジン自体の味を楽しんでみてください。

次にロックにします。ジンのアルコール度数は通常40度以上あるので、少しずつ氷が溶けることでアルコール度数を抑えられ、今まで感じなかったフレーバーも楽しめるようになります」

こだわりのクラフトジンを飲むならココ

「ここ数年、クラフトジンの盛り上がりとともに、種類豊富なジンを取り揃えたバーも登場し、人気を呼んでいます。本来、個性豊かな風味のジンはシンプルに味わうべきかもしれませんが、プロのバーテンダーがその個性を活かしてアレンジしたカクテルを飲めば、さらにその魅力が深まるのではないでしょうか」

Good Meals Shop (グットミールズショップ)

「200種類以上のクラフトジンを揃え、ブームの火付け役ともいうべきお店。ジンだけでなく、クラフトマンシップにこだわり、ソーセージやパンなど手作りの食材を使った、ヘルシーな食事が楽しめます」

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Bistro&Bar Chelsea(ビストロ&バー チェルシー)

「こちらも100種を超える豊富なクラフトジンが揃っています。ビストロなので、ただお酒を飲むだけでなく、食事とマッチングしながらクラフトジンのおもしろさを伝えてくれるお店です」

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nokishita 711(セブンイレブン)

「クラフトジンを使ったカクテルが楽しめる京都のお店。世界中から取り寄せた種類豊富なクラフトジンは、味わいも個性的。プロのバーテンダーがその個性を活かしてアレンジしてくれるので、新しいジンの美味しさを発見できるはず」

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BAR JUNIPER(バー ジュニパー)

「店名のジュニパー(ネズ)からもわかるように、こだわりのジンを300種以上揃え、レアなクラフトジンが飲める、大阪北新地のバーです。こちらのバーは、『ファースト』と隣接する姉妹店の『セカンド』に分かれていて、『セカンド』では、クラフトジンのカクテルが楽しめるんです。価格も『ファースト』よりもお手頃に楽しめるのが嬉しいですね」

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国産も続々と登場!ますます熱くなるクラフトジンブーム

「実は、最近日本でもクラフトジンが造られるようになりました。海外と同じく、その地域で作られている特産品を使った、その土地ならではのジンが登場しています。これからますます国産のクラフトジンは増え、ブームもさらに盛り上がっていきそうですね」

季の美 京都ドライジン

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「日本初のジン専門の蒸留所、京都蒸溜所のクラフトジンです。ライススピリッツをベースに、ボタニカルは、ジュニパーベリー、オリス(香草)、檜、柚子、レモン、玉露、生姜、赤しそ、笹、山椒、木の芽と11種をブレンド。京都の特産物が入った日本らしいエッセンスを感じさせるクラフトジンは、海外からも注目されています」

クラフトジン岡山

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「岡山で造られている米焼酎から造られたジンです。ボタニカルはジュニパーベリー、コリアンダー、レモンピール、アンジェリカなど、スタンダードなハーブが使われています。そこにシナモンやラベンダーが加わることで甘美な風味を感じさせ、さらに焼酎用の樫樽を使用することで、普通のボタニカルには無い、豊かな香りを醸し出しています」

クラフトジン岡山http://www.msb.co.jp/ptag/craftgin/

Japanese GIN 和美人

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「鹿児島の米焼酎をベースに造った、ほのかな甘さを感じさせるジンです。柚子、レモン、金柑など鹿児島の名産である柑橘類をボタニカルに使用。他にも緑茶やシソをブレンドした、まさに日本で造る日本ならではのクラフトジンです」

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日本でも海外でも盛り上がりを見せるクラフトジン。なかなかに奥が深く、個性豊かな味わいをぜひじっくりと楽しんでみてはいかがですか?

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