東西カレー異文化交流始まる2017年夏!東京・大阪・福岡...全国カレー愛が止まらない

意外に知らない。日本の外食カレーってどう誕生してどう広まった?

いよいよ夏本番が近づいてきました。そうなると、魂そのものが「食べたい!」と叫び出す料理、それがカレー。

先日Retty株式会社での調査では、外食カレーを月1回以上食べる人が約5割、しかもカレーをよく食べる店は、「インド料理やタイ料理といった各国料理店を含む専門店」が約8割と言う結果が。日本人にとって、外食・本格カレーはすっかり日常に定着したと言っても過言ではないでしょう。

国民食とも言われるほどのカレーが、今大きな変化を迎えようとしているらしい。そんな2017年夏のカレー現代事情を、Retty TOP USERのMatsuさんに伺いました。

【TOP USER紹介】

3000軒のカレー屋を食べ歩いた通称「カレー細胞」。生まれついてのスパイスレーダーでカレーはもちろんのこと、食のトレンドウォッチャーとしても分析力・発信力は折り紙付き。 カレー専門のブログ「カレー細胞-TheCurryCell-」を運営。H.MatsuさんのRettyアカウントはこちら

意外に知らない。日本の外食カレーってどう誕生してどう広まった?

「日本の外食にカレーが登場したのは、明治時代。『上野精養軒』や『日比谷松本楼』に夏目漱石が通ったように、まさにこの頃のカレーは文明開化の証。イギリスやフランスと言った憧れの西洋文化の象徴の一つとして、人々に受け入れられていったのです」(H.Matsuさん)

最初は、カレー=洋食だったんですね。

「昭和になり、インド独立戦争の機運の中、日本との文化交流が生まれて、インドのカレーが直接日本に伝わります。

その代表例が新宿の『新宿中村屋』と東京・東銀座の『ナイルレストラン』。この2つのお店によって、外食ジャンルではインドカレーという流れが生まれるのです」

「その後、本格インド料理の『アジャンタ』(現在は麹町店のみ)が登場します。南インド料理がメインのお店なのですが、スパイスへのこだわり、本場の食材の使用など外食だからこその味わいをカレーで表現していくんです。ここから、カレー名店のシェフも多数輩出され、インドカレーが外食業界でどんどん広がっていきます」

「そして、80年代の激辛ブーム到来、2001年の横濱カレーミュージアムの誕生など、外食カレーはマスメディアの情報に乗って、一気に注目度が高まります。おかげで外食カレーにはさまざまなジャンルがある、職人の技術と個性で多彩な味が表現できると、一般の人々が認知していくんです」

カレーとはなんぞや。絶対外せない「大阪スパイスカレー文化」とは

「そもそも、カレーとはなんだと思いますか?」

スパイスを使ったもの?汁けのあるもの?具が入っていること?

「カレーを明確に定義づけること、それは簡単ではないと思うんですよ。どれがカレーでどれがカレーじゃないか、判断基準は民族や文化によって異なる。例えばタイカレーをタイ人はカレーと思っていなかったり、インドカレーをインド人はカレーと思っていなかったり。

麻婆豆腐はカレーなのかどうなのか?など、日本人が言う『カレー』の定義って実に曖昧なんです。

きっと私たちの判断基準は、子供のころの記憶にある『カレー』というイメージ。そこにリンクすれば、それはカレーである。リンクしなければカレーではない。

実は日本の『カレー』の定義とはそんな抽象概念なのではないでしょうか?」

ああ、なるほど。すごくわかります。

「だからこそ、ヨーロッパ、インドといった異文化交流の中で生まれた日本のカレーは、各人のイメージによって自在に変化し、進化していけるんです。その代表ともいえるのが、昨今の大阪スパイスカレー文化かもしれません」

[画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE92/SUB9203/100000031828/11937096/]

▲H.Matsuさん撮影のカシミールのカレー。「飲み物といって良いほどシャバシャバです」

「音楽やアートなどサブカルチャーの文脈に近いところで、独自のカレーを作り出したのが大阪・北浜にある『カシミール』。その衝撃的な個性に、これは正しいカレーなのか?と議論がわくほど。でもここからカレーは独自に進化させていいんだという機運が高まり、大阪界隈で様々な独自のカレーが生み出されていくことになるのです」

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北浜(大阪)(大阪府)カレー

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「一方で、大阪花博・スリランカ館シェフが来日後、大阪に残りスリランカ料理を伝えます。同じころ日本人によるスリランカカレーのお店『カルータラ』も登場。和食にも通ずる鰹だしを用いたスリランカのカレーが大阪にじわじわと受け入れられていきます。大阪は出汁文化ですからね。」

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE91/SUB9103/100000055276/1070962/

▲H.Matsuさん撮影のカルータラのカレー。「で、これが実に旨い」

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肥後橋(大阪府)カレー

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「この2つの流れがクロスオーバーし、スパイスを独自調合したり、昆布や鰹、鯛など和だしを使ったりした、さらに独自感覚を推し進めたカレーが大阪の中で大きなムーブメントとなっていきます。

これがいわゆる"大阪スパイスカレー"と呼ばれるものなんです。

でも明確な定義はあるようでないようなもの。関西人の気質ゆえに、隣のカレーとは違うことを!というモチベーションがあり、店ごとに見た目も、味も、作り方も変わっていく。

何でもありだからこそ、ここ数年でどんどん新しいお店が増えて、どんどん盛り上がってきた。今やカレーの首都=大阪と言っても過言ではないほどに。

そして、それを後押ししたのは、グルメサイトとSNSの存在です」

インターネットはやはり、食の世界も大きく変えていくんですね。

「異文化交流というものを本質に据えるカレーは、変化、進化することによってさらに多様性を帯びていきます。そして人々の"まだ食べたことのないカレーを食べてみたい"という欲求を掻き立て、満たすものとして、インターネットの情報は必要不可欠な存在となりました。

さらに、スパイスカレーの俯瞰からの見た目の美しさが、いわゆるインスタジェニックだったのも、ますますSNSで拡散され盛り上がる大きな要因となったはずです」

2017年は東西カレー文化の融合というエポックメイキングな一年に

となると、カレームーブメントは大阪が一人勝ちという感じなんでしょうか?

「いえ、今まさにその状況が変化しようとしているんです」

おお!

「東京はここ数年大阪とは真逆に、カレーという料理をより正しく、よりクオリティを高くという点がもっともフィーチャーされて、本格カレー・本場カレーというものを極めていく流れにありました。でも、そんな中で面白い流れも生み出されてきているんです。

例えば、東京・喜多見に登場した『ビートイート』というお店。ハンター兼シェフの女性が、自ら狩った獲物をカレーで提供するお店なんです。今まで聞いたことのない新しさにクラクラしますよね。そして、本当に美味しいんです」

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE22/SUB2204/100001283430/17151152/

▲H.Matsuさん撮影のビートイートのカレー。「いやぁ、やられましたね。」

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喜多見(東京都)インドカレー

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そしてもう一つ、新大久保の『スパイシーカレー 魯珈』。南インドカレーと台湾の屋台飯・魯肉飯を組み合わせたものなんです。この2つを組み合わせようなんて、どうやったら思いつくんだろうって思いませんか?

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE1/SUB108/100001311677/22254501/

▲H.Matsuさん撮影のスパイシーカレー魯珈のカレー。「カレーに正解はない。ただただ、発見が続くのみ」

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大久保(東京)(東京都)カレー

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日本独自の食材を自ら手に入れインドカレーと組み合わせる、台湾の人気メニューをインドカレーと合わせるなど、まさに異文化交流というカレーの本質を体現した、新しいカレーが登場している東京の勢いを絶対見逃してはならないんです」

東京・大阪、2大勢力なんでしょうか?

「新興勢力として勢いを増しているのが福岡です。『KALA(カーラ)』『106 southIndian(106サウスインディアン)』『ポラポラ食堂』といった南インド料理店のヒットに加え、東京都も大阪とも異なる、南インド料理とスパイスカレーの掛け合わせのお店が登場し始め、注目を集めているんです。この流れも、なかなかに見逃せません」

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筑豊中間(福岡県)インド料理

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西鉄福岡(天神)(福岡県)インドカレー

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赤坂(福岡)(福岡県)インド料理

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「こんな風に各地域が盛り上がっている中、大阪スパイスカレーの中心的存在ともいえる『旧ヤム邸』が、満を持して東京・下北沢に出店します。

下北沢は、北海道のスープカレー『マジックスパイス』が東京に出た時に初出店した場所でもあり、まさに異文化交流の要となる場所とも言えます。

大阪スパイスカレーの進出に、東京のカレー文化が新たにどう変わるのか、はたまた東京や福岡の刺激を、大阪はどう受け止めていくのか。

東西それぞれ独自に進化した文化が、今まさに融合し、新しい流れを生み出そうとしているのが2017年夏という時なのです。

でも、難しく考えすぎず、自分好みのカレーを求めて色々と楽しんでみて欲しいですね。

そんな時期だからこそ、すぐにカレーの楽しさ、面白さ、美味しさ、そして奥深さを満喫できると思いますよ」

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