そのCM、辞めませんか? 多様性が叫ばれる時代に必要なもの

「こんなクレームが増えるから、面白いことがやりづらくなった」とかの問題ではない。

最近、CMが「差別的だ」とインターネット上で炎上し、CMの放映や公開が中止されたり、CMを制作した企業が「差別しようという意思はなかった」「不快に思う方がいたら申し訳ない」という謝罪になっていない謝罪文を公開したりすることが多くあるように思う。

今年10月には、大手化粧品メーカー・資生堂のインテグレート CMシリーズがインターネット上を中心に「セクハラではないか」と話題になった。

現在「セクハラ」と批判を受けたCMは、インテグレートHP及び資生堂のYouTubeチャンネルで閲覧できなくなっている。

CMの炎上が増えた背景として、インターネットの普及によって「CMを不快に感じる人」の声が可視化されてきたことがあると思う。

これまでは声を上げる機会がなかった、もしくは、声を上げても拾ってもらえていなかったのではないだろうか。

CMを制作した企業からしてみれば、せっかく制作したCMに「差別的!!」「セクハラ!!」とただクレームが付けられ迷惑だな、と思っているだけかもしれない。

しかし冷静に考えてみれば、「可視化されるほど多くの人が不快に感じている」と知ることができるいい機会とも考えることが出来る。

CMの影響力は大きい。だからこそ、CMとしての意味があるし、制作側への責任も発生する。

すなわち、自社の製品をアピールする絶好の機会でもあるし、差別やハラスメントを助長する最悪の機会にもなってしまうのだ。

・・・というブログを更新しようと考えていたところに、新たな話題が飛び込んできた。

世界的大企業・マクドナルドのCMで「ゲームに負けた男性芸能人が、ゲームに勝った男性芸能人から罰ゲームとしてキスされる」というシーンが見られたのだ。

マクドナルドの海外CMには「少年が父親にゲイであることをカミングアウトする」という感動的なCMもあれば、「ゲイであることをカミングアウトできずにいる少年」を登場人物にしたLGBTフレンドリーと言われるようなCMもある。

これまでの日本であれば、「罰ゲームとしてオネエから無理矢理キスされる」様子や「男性芸能人が男性芸能人にキスされてとても嫌がっている」様子は、どこの局のバラエティ番組にも見られるような「誰もが面白いと感じる」という普遍的な「笑うべきシーン」だったのかもしれない。

でも、今は違う。

このシーンを見て傷つく人もいれば、このシーンが「男性同士のキスは笑うべきもの」という差別を助長するのではないか、と不安に襲われる人もいる。

何より、「男が男にキスしてるよ!ね!こんなシーンってとても面白いでしょ?」という姿勢はとても不快である。

これらの問題は決して「あの頃は許されていた」とか、「こんなクレームが増えるから、面白いことがやりづらくなった」とかの問題ではない。

あなたたちがCMを作るべき相手は、「今の日本」を生きる私たちだ。

「あの頃」の「罰ゲームとして男同士でキスをする」ということに何の疑いもなく笑っていた人達、では決してない。

日本には、これからもっと人種や国籍・宗教など様々に異なる背景を持つ人達が増えていくだろう。

より多くの生き方が肯定され、私たちの価値観もより多様化していくだろう。

だからきっと、今よりもずっと「差別的だ」という批判は増えるだろうし、多くの人に評価されるCMの制作はもっと難しくなるだろう。

だからこそ、CMを制作している最中に誰か一人でもいいから不快感を示して欲しい。

「この表現、辞めませんか?」

その一言で救われる人は、きっとたくさんいる。

奇しくも資生堂が炎上した今年10月より開催している、名古屋あおぞら部

多くの方にご参加いただき、無事に続いています。

次回は12月17日(土)午後2時~5時(途中入退室OK)、参加費は300円です。

場所はこれまでと同じく名古屋市東区 矢田コミュニティセンターをお借りしています。

一人でも多くの方のご参加をお待ちしています。

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