人生いろいろ

子供が保育園に通っていた5年ぐらい前のことだった。次男がとある先生のことを大好きになった。

子供が保育園に通っていた5年ぐらい前のことだった。次男がとある先生のことを大好きになった。用務員の先生で、臨時雇用だったと思う。

50代前半ぐらい、すらっとしたきれいな方だった。カエル大魔王に魔法をかけられて今の姿にされ、この保育園でお掃除の仕事をしているのだとその先生に教えられた次男はすっかりそれを信じ込み、それだったらボクも手伝うと、一緒になって草刈りだの掃除だのをせっせとやっていた。

先生の雇用期間が終わりに近づいた頃にはすっかり懐き、退職の日には保育園のとりはからいで、二人で手を繋いでおさんぽに行き、記念撮影までした。

最後の日に先生に挨拶すると目に涙をためて、私のことを好きになってくれてうれしかったですと言ってくれた。

さて、話はここから。

今日、子供たちを予防接種のために病院につれて行った。会計の待ち時間に売店に行くと、レジにいたのはその用務員の先生だったのだ。私はすぐに気づいたのだけれど、なんとなく先生の様子が変わっていて話しかけにくく声をかけなかった。だが、先生が長男と次男に気づいたことは見てとれた。二人を交互に見て、(あまりに成長したから)驚いた表情をしていたのだ。お金を払って会計に戻ったがなんとなく気になって次男に「いま売店にいた人、あのカエル大魔王の先生だよね?」と聞くと「え? ほんと?」と言って驚いた。次男は今だにその先生のことをよく覚えているのだ。「聞いておいでよ。カエル大魔王の先生ですか?って」と促すと、照れて「イヤだなあ」と言う。「でも、間違いないよ、あのレジにいた人、カエル大魔王の先生だよ。ママは自信がある」と言ったら、次男は勇気を振り絞って売店に戻った。

20分ぐらい待っただろうか、次男がニコニコ笑いながら戻って来た。確かに、カエル大魔王の先生だったのだ。「〇〇保育園にいましたか?ぼく、村井です。おぼえていますか?」と聞く次男に、「とても大きくなったね、覚えているよ」と答えてくれたそうだ。

次男は「ママ、カエル大魔王の先生と話ができて本当によかったよ。感謝してる。すごく元気そうだったし、やさしかった。いろいろな話をしたんやで」と言うので、どんな話をしたの?と聞くと、「保育園の時に仲がよかったのはオレだけだったんだって」とか、「お掃除を手伝ってくれてありがとうねって言ってくれた」とか、「すごく背が高いね、5年生ぐらいかと思ったってさ」などなど、うれしそうに次男は教えてくれた。

「でも残念なことがひとつある」と次男が言うので、「え?なにが?」と聞くと、「先生、もう結婚してないんだって......」

「そっかぁ、人生は色々あるからな!」と答えるのに精一杯。この5年の間に先生にも色々あったんだね。私も色々あったのだけれど。

今日はビールが進みそうだ。