自国の政治利用を無視して日本のオリンピック精神を批判する中国

オリンピックの政治利用、商業利用は既に周知のことであり、これを今更きれいごとで日本を批判する中国の態度も何とも言えません。

『人民網日本語版』が掲載していた「オリンピック精神の原点とはかけ離れた東京の五輪招致」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

普段だと要約をさせてもらうのですが、興味深いところの引用の方が面白そうなので、引用で紹介させてもらいます。

周知のように、戦後の日本経済のテイクオフは3段階を経た。まず1954年から1961年の第1期は設備投資が経済発展を牽引した。

1962年から1965年の第2期では経済モデルの転換に成功した。1965年から1973年の第3期には輸出が経済を牽引し、1968年には西ドイツを抜いて世界第2の経済大国となった。この座は2010年に中国に追い抜かれるまで42年間維持した。

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日本経済は1990年代初めのバブル崩壊以降再起不能となり、1955年から長期政権の座にあった自民党も1993年に下野した。日本は経済、政治両面で不安定な状況に陥った。これがいわゆる「失われた10年」、より正確に言えば失われた20年である。

1964年の東京五輪は多くの日本人の心の中で、戦後の高度経済成長を象徴する記念碑的な意義を持つ。そして長期的な経済低迷にある日本は庶民を再び奮い立たせる契機を必要としている。そこでオリンピックは、一部政治屋によって手中の「政治資源」と見なされるようになった。

昨年末、自民党内の保守派を中心とする政治勢力が衆議院総選挙で勝利し、政治舞台の中心に返り咲いた。まさに自民党の選挙スローガン「日本を、取り戻す」のように、昔日の威風を取り戻すことが保守勢力共通の目標となったようだ。

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近代オリンピックの趣旨は「平和、友情、進歩」だ。ビジネスとリンクせず、政治利用されないオリンピックこそがオリンピックの精神と原則を真に体現することができる。

2008年北京五輪のスローガンは「One World,One Dream」、2012年ロンドン五輪のスローガンは「Inspire a generation」だった。

両五輪の舞台は主催側が世界各国に提供し、世界各国が共同で創造し、最終的に全世界の認可を得られたものであることは明らかだ。「オリンピックの夢」は全世界の夢、全人類共通の夢であるべきだ。

2 日本に対する認識

典型的な中国人の日本に対する理解です。つまり、日本はかつて高度経済成長を謳歌し、世界第2位の経済大国となりましたが、バブル崩壊後、「失われた20年」と呼ばれる長期低落傾向に陥り、第2位の地位を中国に明け渡し、それが日本の中国に対する大きなコンプレックスになっているという発想です。

こうした経済低迷やコンプレックスが日本の保守化の根本的な原因という発想もかなり根強いものがあります(不景気に苦しみ政治に失望している日本はファシズムが台頭している?)。そして、「保守化」であるが故に、かつての栄光を取り戻すために日本はオリンピックを誘致しようと考えているとなります。

これは裏を返せば、それだけ中国が世界第2位の経済大国になったこと(GDPで日本を抜いたこと)を如何に誇らしいことと思っているかという話で(中国の軍事費の増加は他国に恐怖を与えていない?)、私的にはそちらの方が興味深いということになります。

3 オリンピックに対する認識

中国で保守派の代表とされる石原都知事(自民党と日本維新の会が連携して日本は軍国主義の道を歩む?)がどのような思いであれほどオリンピックに拘ったのか私はわかりませんが、こうした懐古主義的風潮からオリンピック誘致を考えておられる方はそう多くはないのではないかと考えます。

オリンピックが開催されれば経済効果がある、お祭りはやはり近くで開催された方が楽しい位の認識で(「バルス」とアイドルとお祭り)賛成されている方が多いのではないでしょうか。

ただ、その一方でオリンピック開催に伴う負の部分、長野オリンピック後の財政赤字など、必ずしも地域経済に貢献しないことなども広く知られるようになってきており、そうしたことがオリンピック誘致が今一盛り上がりに欠ける原因となっていると思います。

4 中国の認識

オリンピックの政治利用、商業利用は既に周知のことであり、これを今更きれいごとで日本を批判する中国の態度も何とも言えません(中国も署名しない声明に日本が署名しないことで憤る中国人)。

こうした本音と建て前のかい離は中国で結構良く見られる話で、売春などもあれだけ蔓延している実態(本音)がありながら、法律では禁止されており(建て前)、恣意的に買春者を捕まえることもよくあります(日本人売春容疑で逮捕?)。

ま、(実際に中国が行っている)実態を無視しながら、建前論で日本を批判するというのは中国の良く使う手段で、いつまでこうしたことを続けるのかと思ったが故の今日のエントリーでした。

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