トランプ大統領の弾劾は避けられない

トランプ大統領の行動が無謀になればなるほど、チェック機能は強まる。
U.S. President Donald Trump arrives to nominate Neil Gorsuch, federal appeals court judge, not pictured, as an associate justice of the U.S. Supreme Court during a ceremony in the East Room of the White House in Washington, D.C., U.S., on Tuesday, Jan. 31, 2017. Replacing the late Justice Antonin Scalia, Trump is setting up a showdown with congressional Democrats over a selection that would bolster the court's conservative wing for a generation or more. Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images
U.S. President Donald Trump arrives to nominate Neil Gorsuch, federal appeals court judge, not pictured, as an associate justice of the U.S. Supreme Court during a ceremony in the East Room of the White House in Washington, D.C., U.S., on Tuesday, Jan. 31, 2017. Replacing the late Justice Antonin Scalia, Trump is setting up a showdown with congressional Democrats over a selection that would bolster the court's conservative wing for a generation or more. Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images
Bloomberg via Getty Images

トランプ大統領は、個人的な報復や利益のため衝動や思いつきで法令を発布し、この国を支配しようとしている。この独裁者まがいの手法はうまくいっておらず、バスの車輪が徐々に外れている。就任してわずか1週間なのに!

大統領弾劾の気運が高まっている。弾劾こそが彼をホワイトハウスから追い出す唯一の手段だ。共和党員の心はこの大統領からすでに離れており、彼が精神医学的に無能で何かを行う前にその合法性すらチェック出来ないからだ。

大統領弾劾の気運が高まっているのは、トランプ大統領が不適任なのが恐ろしいほど明白だからだ。側近の大人、彼に最も忠実な人間までもが自分の時間の大半を使って彼を制御しようとするが、無理なものは無理だ。

側近たちは残りの時間で共和党の指導者、ビジネスエリート、外国の指導者からの激しい電話攻勢に大わらわだ。トランプ大統領は何をしでかしたのか? 哀れなラインス・プリーバス(首席補佐官)は権力の頂点を手に入れたが、これでは楽しいわけがない。

候補者がただ喚いているだけだったら、自分だけの現実に生きていれば良い。十分な数の人々を十分な時間をかけて騙し、選挙に勝つことだってあり得るだろう。だが、その方法で支配するとなったら、それは現実と現実が対立する。現実が押し戻すことになる。

トランプ大統領は司法、立法、行政の担当と相談もなく衝動的に大統領令を出してきた。ましてや真剣な政策立案なんてない。しかし、出した直後に政治や法の圧力、そして現実によって大統領令を引っ込めざるを得なくなっている。

トランプ大統領が崇拝するさまざまな独裁政権とは異なり、アメリカが暴君に対して憲法上・政治上のチェックを行う複雑なシステムは健在だ。時にはぎりぎりであったとしても健在だ。トランプ大統領の行動が無謀になればなるほど、このチェック機能は強まる。

トランプ大統領が特定の国の難民受け入れを禁止する(彼がビジネスの利害関係を持つサウジアラビアとエジプトなどは対象外だ)という乱暴な振る舞いをしただけで、トランプ大統領はアメリカの制度には裁判所があるということを発見した。裁判所は存在する。それを想像してほしい。

彼が手を付けられなくなればなるほど、保守的な裁判官たちも今までのように通常の共和党政策の茶坊主であるのを止めるだろう。連邦最高裁がトランプ大統領の売春婦になることに賭けたい人はいるだろうか?

先週、ミッチ・マコーネル(共和党上院院内総務)以下の共和党の議員たちは、プーチン大統領を称えるトランプ氏の考えを否定するのに必至だった。彼らは多くの有権者を詐欺にかけた狂気の主張をあざ笑った。

共和党議員は患者を殺さずにオバマケアを闇に葬る方法、あるいは再選の希望を模索中だ。実情は複雑で、トランプ大統領は発言に微妙な意味合いをもたせるのが得意ではない。カリフォルニア州の共和党議員トム・マクリントック氏がオバマケアの撤廃に懸念を示したが、これは多くの共和党員の気持ちを代弁している。

「我々は、(オバマケア撤廃によって)自らが作った市場を受け入れる準備をすべきです」と、マクリントック議員は語った。

「それはトランプケアと呼ばれるでしょう。共和党はそのすべてに責任を持ち、2年未満のうちに起こる選挙の時、その是非が問われるでしょう」

リンゼイ・グラハム上院議員は、トランプ大統領の狂気的なツイートの習慣を揶揄し、メキシコとの貿易戦争を呼びかけるツイートを送ったことを「ムーチョ・サッド」(とても悲しい。ムーチョはスペイン語で「とても」の意)とあざ笑った。

トランプ大統領の側近は、メキシコとメキシコ人に対する滑稽な十字軍から退却させるのに躍起だ。トランプ大統領はメキシコ大統領に公式訪問のキャンセルを強要し、翌日には電話で一時間にわたりキスをし続けるという有り様だ。

またトランプ大統領は拷問を復活させると主張したが、共和党首脳たちによって否定された。共和党上院ナンバー3のジョン・トゥーン上院議員は、拷問禁止法はすでに成立した法律で、議会共和党は本件のいかなる再審議にも反対すると述べた。ジェームズ・マティス国防長官も同じ見解だ。トランプ大統領は、新たな拷問案が否定されたあと、この件を国防アドバイザーに委ねることにおとなしく合意した

これらすべてが、わずか1週間の間に起こったのだ! 今や連邦判事も彼を制御し始めている。

2週間前、政権移行の期間中に目撃した出来事を基に、私は司法委員会の陰の存在として市民による弾劾委員会の設立を呼び掛ける文章を書いた。トランプ大統領弾劾のための書類作成と公的弾劾運動のための市民によるキャンペーンを始めるためだ。

それ以来2週間で、NPO「フリー・スピーチ・フォー・ピープル」は、トランプ大統領を弾劾する市民キャンペーンを開始。すでに約40万人が弾劾申請に署名した。

超党派団体の「ワシントンの責任と倫理のための市民団体(CREW)」は、詳細な調査を実施中だ。CREWと関連のある上級法律学者は、外国政府から対価を得ることを禁じた合衆国憲法の「報酬条項」にトランプ大統領が違反している複数の例を文書化し、訴訟に必要な詳細な弁論趣意書を提出した。

弾劾にはすでに多くの理由がある。中でも、トランプ大統領が自分のビジネス上の利益を国家利益に優先し、ウラジミール・プーチン大統領と結んだ奇妙で日和見主義的な同盟に至っては反逆罪との境界すれすれだ。報酬条項を上回る内容の、2012年のストック法はあまり広く知られていないが、大統領や議員のインサイダー取引を禁止している。

弾劾は、当然政治的かつ法的なプロセスだ。建国の父たちはそれを意図的に設計した。しかし、就任わずか1週間でトランプ大統領は憲法から逸脱し、彼の熱烈な支持者も離れ始めている。

トランプ氏が奇妙で不気味な存在だとわかっていていも、共和党は当初彼を利用できると思った。しかし、プーチン大統領を擁護し、貿易戦争を仕掛ける彼のやり方は、共和党のやり方ではない。それは共和党議員が個人的に的に表明している警告や警戒から推察するしかないが。

精神科医オットー・カーンバーグは1984年、社会心理学者エーリッヒ・フロムが名付けた「悪性自己愛」という概念を精神科の病名に加えようと提案した。悪性自己愛は通常の自己愛とは異なり、重度の病理現象だ。

悪性自己愛の人間は良心が欠如し、病的な誇大妄想を持ち、権力志向が強く、そして残酷でサディスティックなことに喜びを感じる。

アメリカや共和党に差し迫った危機が来ていることを考えれば、トランプ大統領の弾劾はあるだろう。唯一の懸念は、アメリカが初めて直面する惨事が、どれくらいの規模になるかだ。

ハフィントンポストUS版より翻訳しました。

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