日本企業の外国人社員は皆「弱者」か?

最初に言えることは、日本企業で働いている外国人を皆ひとくくりにするのはおかしいということです。

11月28日に、ゼロイチ・フード・ラボのCEOである藤岡久士氏がダイアモンド・オンラインに「日本企業に採用された外国人が「日本人化」してしまう理由」と言う記事を投稿しました。その記事を見てみると、最初の部分は良くある話で別に違和感を感じなかったのですが、もっと進んで読んでみるとその後はだんだん賛成できなくなっていきました。そして「日本企業で採用された外国人は"弱者"である」というフレーズに辿り着いたとき、思わずポカンと口を開けてしまいました。正直に言うと、頭にきたのです。

私は23年間日本企業に対して人事コンサルティングをして来ました。尚、私の最初の本である『雇用摩擦』は日本の企業の外国人社員をテーマにしたものです。このように、長年私は日本の企業で働いている外国人を観察してテーマにしてきました。さらに私自身、過去に日本の企業で働いた経験があります。そのため、日本企業で働いている外国人が皆「弱者」かどうかについても、様々な考えを持っています。下記ではそれを紹介させて頂きたく思います。

まず、最初に言えることは、日本企業で働いている外国人を皆ひとくくりにするのはおかしいということです。様々な会社にいる世界中の何十万人のことをひとくくりにするということです。確かに日本企業の多くが、日本においても海外においても、優秀な外国人の採用に苦しむことが多いのは事実です。しかしそれには複数の理由があります。その中でも大きいものとして挙げられるのが、給料をケチっているという理由です。日本企業は日本国内の低い賃金になれてしまっているため、外国人に「市場レート」並の給料を払いたがりません。特にスキルを持っているプロフェッショナルが高い給料を払われる市場(例えば、技術者の場合シリコンバレーやデトロイト)での一般的な給料の額ならなおさらです。高い給料を払いたくないため、多くの日本企業は低い給料で採用できる人で何とかしようとしているのです。

もう一つの問題は、日本企業が優秀な外国人を採用しても、彼らを定着させることに苦労しているということにあります。外国人が一定期間日本の企業で働いても、給料が低く、昇進が遅く、企業文化が固く、非効率でお役所的な風土に困惑し、そして文化的な難しさもあるので、疲労困憊して辞めてしまうというケースが多くみられます。私の著書『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』でもこれについて言及しています。

最も優秀な人は社外での機会が最も多いので、最初に辞めてしまいます。尚、多くの日本企業は日本国内にも海外事業にも、できる限り人をクビにすることを避ける傾向にあるので、外国人社員の中で成績の低い人の割合が多くを占めるということになりがちです。(人事のコンサルタントとして、こういった問題を抱えている企業を沢山目にします。)

もう一つの気になることとして、日本企業、特に日本企業の海外拠点が研修やトレーニングなどの人材育成に十分投資していないという傾向が挙げられます。その結果、日本企業で働く人はトレーニングをたっぷり受けた外資系で働いている人と比べて、成長が遅いのかも知れません。

日本国内で働くことに関して、最近の調査結果で明らかになったのは、能力の高い外国人にとって、日本の魅力度はアジアの中で一番低いということです。要するに、外国人はあまり日本に働きに来たくないということなのです。この記事はその現象を詳しく説明しています。

そのことを踏まえると、「日本企業で採用された外国人は"弱者"である」と書いた藤岡氏と彼の周りにいる日本人ビジネスパーソンが、自分の会社で働いている外国人が「弱い」と本当に思っているのであれば、まさしく自業自得だと思います。

上記で触れた日本企業の様々な課題を考慮すると、私は藤岡氏と違った意見を持っており、ましてや日本の企業で働いている外国人が皆「弱者だ」とは絶対思いません。私自身コンサルタントとして日本企業顧客との接触機会が多いのですが、そこで働いている外国人には優秀な人がたくさんいます。日本企業では優秀な外国人がすでに沢山働いているし、また日本企業は彼らをもっと引き寄せて定着させるようにもっと頑張る必要があると思います。そのために、上記に挙げた課題に対して対策を打つことは必要です。

外国人社員が皆「弱者」であると信じるのではなくて、今自分の会社で働いている外国人を大事にして、優秀な外国人が働きたくなる会社にするように努力することが適切だと思います。そうしないと、日本企業がグローバル競争で勝つことはかなり厳しくなるでしょう。

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