「アジアンビューティー」とは?

ティーン雑誌の編集者からA、B、C、Dのラベルが貼られた4枚のアジア人の写真を見せられ、「好みの一人を選んでください」と言われた時には度肝を抜かれました。
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私は、東京に住むイギリス人男性として、多くの新しいことや奇妙なことを経験しましたが、ティーン雑誌の編集者からA、B、C、Dのラベルが貼られた4枚のアジア人の写真を見せられ、「好みの一人を選んでください」と言われた時には度肝を抜かれました。その記事の最終的な目的は、どうすれば効果的に外国人の彼氏を作ることが出来るかを、日本人の若い女性読者に伝授することでした。私は、この時代になってもなお、自身の価値基準を信じるのではなく、男性の好みに合わせて美の照準を定めなければいけない(または、喜んでそうしている)日本人女性を不憫に思いました。

この時感じた疑問は数ヶ月私の中にわだかまり、それが「リアルミー(本当の自分)」と名付けられたウェブサイトを立ち上げるきっかけとなりました。このサイトは、日本人女性の模範となるような人の体験を取り上げ、彼女たちがいかにして自分自身を表現しながら美しくあるかを紹介することによって、日本人女性を鼓舞し、励ますことを目的としています。そこでは、社会によって課せられた障害を乗り越えて、真の可能性を追求すると決意した時に、全ての女性が体験できる素晴らしいストーリーが展開されています。

日本は、世界で3番目の経済大国でありながら、男女平等に関しては低水準の記録を保持していることで知られ、2013年の「世界男女格差指数」は、カンボジアに続いて136国中105位となっています。2012年10月の内閣府による「男女共同参画社会に関する世論調査」では、ほぼ70%の回答者(男女)が、あらゆる社会において「男性が優遇措置を受けている」と感じていおり、また、「夫が外で働き、妻が家事をすることに期待する」という認識を持つ男性の数は、それに異論を唱える男性を上回っています。このことからも明らかなように、日本は世界の水準から遅れを取っています。しかし幸いなことに、状況は少しずつ好転し、かつては「男性の一歩後ろを歩け」と言われていた女性は、現在急激にその頭角を現してきています。

その最初の例として、桐衣朝子さん(62)をご紹介します。朝子さんが若い頃、彼女は母親に「女に学問はいらない。さっさと嫁にいけ」と言われ、大学に進学することが出来ませんでした。2人の娘を育て上げ、46歳でようやく特待生として大学に進学するという長年の夢を果たした時でさえも、ある教授からは「若い人なら将来大学のプラスになるだろうが、中年のおばさんに奨学金をあげても無駄だ」と言われたといいます。

しかし、彼女は「自分を信じ、自信を持つこと」に対する批判に耐え抜き、大学を卒業し、ついには「薔薇とビスケット」を執筆するに至ったのです。特別養護老人ホームの介護士を主人公としたこの感動的な物語により、彼女は「第13回 小学館文庫小説賞」を受賞しました。

1999年には男女共同参画社会基本法が制定されましたが、それも社会における女性の立場向上や出世促進の大きな助けにはなりませんでした。東京を拠点とする「アフリカの花屋」を経営する萩生田愛さん(32)は、「そのような差別は、文化に深く根ざした側面としていまだに残っていると思います。昇進や転職が男性にとってそれほど難しくないのに対し、多くの企業は女性の出産や育児に対するサポートの準備が整っていません」と述べています。

結果として、日本ではおよそ70%の女性が第一子の出産後にそのキャリアを断念します。人生の転機となる多くの出来事に直面した30代の女性のうち、ほんの一握りの女性しか、それらの出来事と仕事を両立することができないのです。それ以外の女性は、妥協し、キャリアを諦めることが強いられています。

しかし、インタビューの間も終始前向きで、笑顔を絶やさなかった愛さんは、それらの社会的圧力に屈する代わりに、読者に「どのように人々の記憶に残りたいか、どのように社会に貢献したいか」を考えるよう促しています。また、「最大の敵は心配や恐怖心です。もちろん人生にリスクは付きものですが、未知のリスクへの恐れと、潜在的な失敗についての懸念は危険です。それは、あなたが得られるかもしれなかった最高のチャンスを奪ってしまうかもしれないからです」と語っています。

幸運にも、男女不平等を感じたことがない女性もいます。政治記者として成功し、尊敬を集めている三重綾子さん(35)にお会いした時、彼女は今まで一度も女性だからといって差別されたことはないと話してくれました。それは、「自分にできない事があったとしても、自分の性別を言い訳にしないから。女性だからといって出来ない事はあまりないと思うし、言い訳をする必要もないから」だと言います。そして、さらに「自分が有能な人間だという事を証明しなければいけません。もしあなたが賢明で才能のある人だったら、それを達成できるでしょう。一つ問題になることがあるとすれば、それはあなたがそれをどれだけ求めているか、ということです」と語っています。

たくさんの輝かしい、成功した日本人女性にお話を伺った後、もう一度「アジアンビューティーとは何か」を考えました。

ビューティーとは、逆境に直面したとしても、自由に自分の真の姿をさらけ出し、自身の無限の可能性を信じる、ここに登場したような女性のことではないでしょうか。誰かが本当に美しくなれるのは、彼女たちが本物の、正直で誠実な「自分」でいる時だと思います。彼女たちは、社会に「順応する」ためだけに他の誰かを演じる必要がないし、またしないでしょう。ビューティーとは内に秘めた強さと自分を信じること、他人への思いやり、謙虚さ、そして表面的な価値基準で他人を判断せずに相手を深く理解することです。そして、自分がこの世界にどのように存在し、何が達成できるのかを熟知し、それを追い求めることなのです。

日本中、そして世界中に存在するこのような「ビューティー」こそが、認知され、賞讃されるべきではないでしょうか。

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