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2018年06月05日 12時10分 JST | 更新 2018年06月05日 12時10分 JST

裁判員制度「市民からの提言2018」〈提言⑬〉 裁判員裁判の控訴審にも市民参加する「控訴審裁判員」の仕組みを導入すること

日本の刑事裁判では三審制が採られており、1つの事件について、原則として3回まで審理を受けることができます。

裁判員制度は5月21日でスタートから丸9年となり、制度開始10年目を迎えています。裁判員ネットでは、これまでに345人の市民モニターとともに650件の裁判員裁判モニタリングや裁判員経験者へのヒアリングも実施し、裁判員裁判の現場の声を集める活動を行ってきました。この「市民からの提言」は、裁判員制度の現場を見た市民からの提案です。裁判制度の現状と課題を整理し、具体的に変えるべきと考える点をまとめました。今回は提言⑬を紹介します。

〈提言⑬〉

裁判員裁判の控訴審にも市民参加する「控訴審裁判員」の仕組みを導入すること

1 現状と課題

⑴三審制と裁判員裁判

日本の刑事裁判では三審制が採られており、1つの事件について、原則として3回まで審理を受けることができます。

裁判員裁判は、第一審である地方裁判所で行われますが、その判決に不服がある者は、高等裁判所に不服申立て(控訴)をすることができます。

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平成28年における裁判員裁判対象事件の判決人員は1,104人、控訴人員は400人です(控訴率約36%)。また、同年の裁判員裁判対象事件の控訴審の終局人員総数は376人であり、平均審理期間(記録の受理から終局まで)は、5.5か月です(ただし、後者は、裁判員裁判対象事件のうち15罪名に限った統計)。※1

⑵控訴審への市民参加を

控訴審の審理は職業裁判官3名のみで行われます。

控訴は、事実認定や量刑判断に不服があった場合にも行うことができるため、第一審で裁判員が加わってなされた事実認定や量刑判断を職業裁判官のみで覆すことができます。そのため、控訴審の審理を職業裁判官のみで行うことは、裁判員制度を導入した趣旨を没却してしまうおそれがあるのではないかとの指摘がなされています。

この点について、控訴審は、あくまでも裁判員が参加してなされた第一審の判決を前提として、その内容に誤りがあるかどうかを、事後的にチェックするだけであると位置づければ、職業裁判官のみで控訴審を構成するとしても、裁判員制度を導入した趣旨に反しないと説明されています。※2

また、平成28年における控訴審終局人員376人のうち、破棄差戻しとなったのは5名、破棄自判となったのは44名であり、控訴審は、事実認定と量刑判断の両面で、裁判員裁判の一審判決を尊重する傾向にあるといえます。※3

しかし、市民参加の意義を強調するのであれば、第一審の内容に誤りがあるかについても市民がチェックすべきですし、一審判決を尊重する傾向が行き過ぎると公正性で慎重な審理を行い、誤りを防ぐための三審制が形骸化する恐れもあります。

そのため、控訴審においても市民が裁判員として参加する制度(控訴審裁判員制度)を設けるべきです。

2 市民からの声(裁判員経験者意見交換会議事録より)

・やっぱり私の事件でさえもその被告人の顔というのが結構思い出しますね、いまだに。それこそ、どうしてるのかなと。その後、来たんですよ。こういう結果になりましたと。そしたら、最高裁に控訴ですか、されたみたいで、ちょっとそれも、私達あんなに一生懸命、一応2人の方のことを考えたのに、何だったんだろうってちょっとがっかりしました(東京地方裁判所平成26年10月27日)。

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3 具体的な提案

控訴審においても市民が裁判員として参加する控訴審裁判員制度を設けることを提案します。

控訴審は、一審と同じ立場で判断するのではなく、第一審に誤りがないか事後的にチェックする役割(事後審)を果たします。具体的には、控訴趣意書に記載された控訴理由を参照し、第一審判決に誤りがないかを審査します。取り調べも、一般的には第一審の訴訟記録と証拠物の点検・調査が中心となります。そのため、控訴審においては、現在も書面審理が中心です。

制度は異なりますが、事後的に判断を行うという点では検察審査会制度に類似することから、同制度を参考に、控訴審裁判員は任期制とし、任期は6か月程度とすることを提案します。

<検察審査会制度とは>

20歳以上で選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を裁判にかけなかったことの善し悪しを審査します。検察審査員の任期は6か月です。

2017年における新件受理件数は申立てによるものと職権によるものとを併せて2,544件となっています。

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※1 平成28年における裁判員裁判の実施状況等に関する資料(最高裁判所事務総局)

※2 司法研修所編「裁判員裁判における第一審の判決書及び控訴審の在り方」(法曹会)

※3 最高裁判所の考え方については、最判平成24年2月13日(事実認定)、最判平成26年7月24日(量刑判断)参照。

裁判員制度「市民からの提言2018」

1.市民の司法リテラシーの向上に関する提言

<提言①>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を理解できるような法教育を行うこと

<提言②>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を遵守するように、公開の法廷で、説示を行うこと

2.裁判所の情報提供に関する提言

<提言③>裁判員裁判及びその控訴審・上告審の実施日程を各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること

<提言④>裁判員だけではなく、裁判員裁判を担当した裁判官も判決後の記者会見を行うこと

3.裁判員候補者に関する提言

<提言⑤>裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと

<提言⑥>裁判員候補者名簿掲載通知・呼出状の中に、裁判を傍聴できる旨を案内し、問い合わせ窓口を各地方裁判所に用意すること

<提言⑦>裁判員候補者のうち希望する人に「裁判員事前ガイダンス」を実施すること

<提言⑧>思想良心による辞退事由を明記して代替義務を設けること

4.裁判員・裁判員経験者に関する提言

<提言⑨>予備時間を設けることで審理日程を柔軟にして、訴訟進行においても裁判員の意見を反映させる余地をつくること

<提言⑩>裁判員の心のケアのために裁判員裁判を実施する各裁判所に臨床心理士等を配置すること

<提言⑪>守秘義務を緩和すること

5.裁判員制度をより公正なものにするための提言

<提言⑫>裁判員裁判の通訳に関して、資格制度を設けて一定の質を確保するとともに、複数の通訳が担当することで通訳の正確性を担保すること

<提言⑬>裁判員裁判の控訴審にも市民参加する「控訴審裁判員」の仕組みを導入すること

<提言⑭>市民の視点から裁判員制度を継続的に検証する組織を設置し、制度見直しを3年毎に行うこと