三角パズルに挑戦! 第26回(2015年第4回)  「条件付き確率」で出願は考えましょう

この時期にいつも私のところに「センター試験で○○大学○○学部○○学科のボーダーに○○点足りなかったんです。合格できると思いますか?」という相談が来ます。

こんにちは、数学・教育ライターの鍵本です。

先週、大学入試センター試験が終わって、私が関係する学生さんもいよいよ自己採点をもとにしたデータが送られてきています。各予備校が発表した「ボーダーライン」を元に、自分が行きたい大学に出願するかどうかを決定する運命の瞬間です。

この時期にいつも私のところに「センター試験で○○大学○○学部○○学科のボーダーに○○点足りなかったんです。合格できると思いますか?」という相談が来ます。学生さんとしては、少しでも自分の希望通りの大学に出願して、望みを託そうというわけですね。その気持ちは非常によくわかります。

こんなときに、いつも思い出すのが「条件付き確率」という概念です。次の確率の問題、少し考えてみてください。

問題:箱の中に1から9の数字が書いてある9個のボールが入れてあります。ここから1個ずつ、2個のボールを取り出して並べます。

(1)2個のボールの数字の和が10以上になる確率はいくらでしょう?

(2)1個目のボールが「2」だったとき、ボールの数字の和が10以上になる確率はいくらでしょう?

読者のみなさまにも少し考えていただけたらいいのですが、とりあえず以下に解説をしておきます。

(1)は、まずすべての起こり得るパターンの場合の数を求めます。

1個目のボールの出方が9通り、2個目は残りの8個からボールを取り出すので8通り、よって、

9×8=72(通り)

です。次に、そのうち和が10以上になるパターンを求めましょう。

1個目が「1」なら、2個目は「9」が出ないといけません。...1通り

1個目が「2」なら、2個目は「8」「9」のいずれかが出ないといけません。...2通り

1個目が「3」なら、2個目は「7」~「9」のいずれかが出ないといけません。...3通り

1個目が「4」なら、2個目は「6」~「9」が出ないといけません。...4通り

1個目が「5」なら、2個目は「6」~「9」が出ないといけません。...4通り

1個目が「6」なら、2個目は「4」「5」か「7」~「9」が出ないといけません。...5通り

1個目が「7」なら、2個目は「3」~「6」か「8」「9」が出ないといけません。...6通り

1個目が「8」なら、2個目は「2」~「7」か「9」が出ないといけません。...7通り

1個目が「9」なら、2個目は何が出てもOKです。...8通り

よって、1+2+3+4+4+5+6+7+8=40(通り)

となります。よって求める確率は、 40/72=5/9 となります。結構確率が高いですね。

(2)は、少し考えてください。すでに1個目で偶数の「2」が出てるので、2個目は「8」か「9」が出る必要があります。2個目のボールの出方は8通りで、そのうちの2通りなので、答えは 2/8=1/4 となります。かなり確率は低いですね。

すなわち、2個のボールを1個ずつ取り出すときに、まだ1個も取り出していないときの確率と、1個目だけ取り出したときの確率は大きく変わるのです。この(2)のように、ある条件の下での確率を、確率の世界では「条件付き確率」と呼びます。1個目のボールの数字が「条件」で、条件がつくことで状況がまるっきりガラッと変わるわけですね。

センター試験を受ける前まで「自分は○○大学○○学部にかなりの確率でいけると言ってたじゃないか」とおっしゃるみなさまに一言。センター試験の結果で、状況は大いに変わります。センター試験を失敗した段階で、確率がぐっと低くなることも大いにあります。上の問題の「1個目のボール」がセンター試験で、「2個目のボール」が2次試験だというわけです。

また、センター試験で思った点数がとれなかった方へのアドバイス。センター試験と2次試験の点数の比率によっては、挽回はまず不可能、ということもありえますし、意外と挽回がじゅうぶん可能、という場合もあります。一般的な言い方をすると、次のようにまとめられます。

○2次試験の比率が多いほうが挽回できる可能性が高い

難関大学によっては、センター試験の5点が2次試験の1点分ぐらいにしかならない場合もあります。

ただし、2次試験の実力がそこそこある学生でないときついです。

○2次試験の高低の得点差が激しい場合は挽回できる可能性が高い

科目で言うと、数学や理科はかなり高低差が激しいです。センター試験で失敗した分を、2次試験の数学1問でじゅうぶんにカバーできる場合があります。

また、難しい問題が出題されたほうが、平均点が下がる分、挽回できるチャンスが広がります。

逆に小論文や面接、国語などの科目では点数の差があまりつかないことが多いので、そんな場合は挽回には不利になります。

よくある痛々しい例としては、センター試験の結果でD判定の大学を避けて、少し簡単な別のC判定の大学に志望校を変えて出願したものの、実は元の大学の方が挽回のチャンスが大きくて、変えた大学の方が挽回の幅が狭いというのをよく見かけます。ボーダー判定だけを見るのではなく、自分の2次試験の実力や入試の相性、浪人できるのか、行きたい大学なのか、など、多面的に見る必要があります。

人生をたかがセンター試験ごときで決定されるのもどうか、とは思いますが、それがこの世の現実であり、そこをうまく切り抜けていくのが、人生の知恵だということもできると思います。すべての受験生にGOOD LUCK!

さて、今回もα4(従来ルール)1問とβ4(変化球ルール)1問の合計2問です。

1問目はα4です。ルールはこちらをご覧ください。解答は下のほうのリンクをクリックしたら出てくるようにしておきますので、解けたら答え合わせをしてみてください。

2問目のβ4は、10個の○の中に1から10の異なる数字を入れて下さい。周りの矢印の数字がその列の数字の和であることは同じです。数字が大きくて少し難しいかもしれませんが、頂点の3つは数字が入ってるので、実際には7個の数字を入れるだけです。

それではいよいよ問題です!制限時間はあくまで目安です。

1問目、従来のルールです。制限時間5分。

2問目は1から10までの異なる数字を○の中に入れていきます。制限時間5分

解答はこちら。

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