農水産業も知の集積・活用の時代に 農水省検討会が中間まとめ

強い農水産業を作り上げるために異分野との連携を推進する新たな産学連携研究の仕組みが必要だとする中間とりまとめを、16日、農林水産省の「『知』の集積と活用の場の構築に向けた検討会」が公表した。

強い農水産業を作り上げるために異分野との連携を推進する新たな産学連携研究の仕組みが必要だとする中間とりまとめを、16日、農林水産省の「『知』の集積と活用の場の構築に向けた検討会」が公表した。

妹尾堅一郎(せのお けんいちろう)特定非営利活動法人産学連携推進機構理事長を座長とする検討会の中間とりまとめは、農林水産・食品産業の競争力強化と若者たちが希望を持てる「強い農林水産業」を実現するために必要とされる知の集積・活用のあるべき姿を提示している。

まず、農林水産・食品分野の関係者に加え、異分野も含めた産学官の研究者と研究機関、生産者、金融、消費者、非営利団体など多様な人材が活躍できる環境をつくる「人のオープン化」が必要だとした。加えて、これまで農林水産・食品分野と異分野にそれぞれ蓄積された成果情報を共有し、多様なステークホルダーが活発な情報交流を行える環境をつくる「情報のオープン化」、さらにこれまでのような公的資金に限ったものではなく、民間資金など多様な資金を柔軟かつ戦略的に活用して研究開発を実施する「資金のオープン化」の必要を唱えている。

具体的な仕組みとしては、研究開発のプラットホーム形成を支援するため、生産者、民間企業、大学、研究機関、非営利団体、金融機関、自治体などから成る「産学連携協議会」と、研究開発プラットホーム内で,個別課題に対応した研究開発を担う組織「研究コンソーシアム」の必要も提言している。研究開発プラットホームが機能するためにプロデューサーの役割をする人材の重要性も強調している。

知の集積・活用の場の構築が急がれる理由として検討会が指摘しているのは、公的研究機関主体で、異分野との連携の動きが一部に留まっている日本の農林水産・食品研究の現状。九州地方とほぼ同じ国土面積で、農林水産物・食品の輸出額が世界第2位というオランダの例も挙げている。中間とりまとめによると,オランダは、ワーヘニンゲン大学が中心となり、世界規模の食品企業など民間企業約1,500社とフードバレーを形成し、農業・食品分野の世界的な研究開発拠点を構築している。オランダ政府は農業・食品、施設園芸を含む重点9分野(トップセクター)を選定し、官民連携の下で研究開発の支援施策を展開している、という。

農水産分野における産学官連携の取り組みとしては、総合科学技術・イノベーション会議が主導するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)10課題の一つとして、「次世代農林水産業創造技術(アグリイノベーション創出)研究開発計画」が昨年からスタートしている。

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・2009年7月1日オピニオン・三野 徹 氏・鳥取環境大学 環境マネジメント学科 教授「21世紀成熟型社会の地域農業

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