2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度に比べ26%削減するという国連に提出した日本政府の目標について知っている人は1割に満たないことが、国立環境研究所の調査で明らかになった。
11月30日に発表された「日本人のライフスタイルについての世論調査」は、今年8月、全国150地点から層化2段無作為抽出法で抽出された成人男女3,000人を対象に実施され、1,481人から回答を得た。温室効果ガスの目標値に関する設問は、11月30日にパリで始まった国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を見越して追加された。
国連に提出済みの日本の温室効果ガス削減目標値は「日本の約束草案」として今年6月2日に地球温暖化対策推進本部(本部長・安倍首相)で決定され、翌3日から1カ月間、国民から意見を募った上で、正式な決定となった経緯がある。「この6月に目標値が発表されたことを知っていたか」という設問に対し、「発表も目標値も知っている」と答えた人はわずか7.0%。「発表されたことは知っている」との答えは52.1%だったが、「発表されたことも数字も知らない」が38.8%、「わからない」が2.1%という結果だった。
地球温暖化問題に対する日本の対応についての質問に対しては、「早めに対応すべきだと思う」が43.3%、「できる限り早めに対応すべきだ」が41.9%で、温暖化に対する危機意識は高いことをうかがわせる結果となっている。気候変動の原因については、「全て人間の活動」9.9%、「おおかたは人間の活動」34.4%、「一部は自然現象一部は人間の活動」40.2%に対し、「全て自然現象による」は5.8%、「おおかたは自然現象」は8.3%にとどまっていることから、人間の活動に原因があるとみる人が多いことを示す結果となった。
国際交渉に当たっての日本政府の方針についての設問に対しては、「将来排出する量も勘案し考える」の回答が39.6%と最も多く、「先進国が『責任』として考える」15.7%や「国内総生産(GDP)をもとに考える」23.7%を上回った。このほか「排出量が公平になる値に設定する」が9.5%だった。国立環境研究所の社会環境システム研究センター環境計画室は、こうした結果について「現在、急速に経済発展をしている途上国を意識しての回答」と解説している。
「環境問題や原発、放射線の問題などについて、信頼できる情報源」を聞いた質問に対する答えで一番多かったのは「ジャーナリスト・評論家」で40%強。大学や研究機関の研究者・学者は、30%に達せず、国や国の外郭団体、環境保護団体よりも信頼度は低いという結果になっている。
関連リンク
・国立環境研究所プレスリリース「日本人のライフスタイルに関する世論調査結果について」
・環境省プレスリリース(2015年7月17日)「『日本の約束草案』の地球温暖化対策推進本部決定について」
・地球温暖化対策推進本部決定「国連に提出する日本の約束草案」
サイエンスポータルの過去の関連記事
・2015年12月1日ニュース「温暖化防止の新枠組みで合意目指す」
・2015年11月26日ニュース「温室効果ガス排出5年ぶり減少環境省発表」
・2015年11月4日レビュー「パリで人類未来に関わる重要会議合意は予断許さないCOP21」
・2015年10月21日ニュース「新目標でも気温上昇2度未満は困難OECDが報告書」
・2015年7月21日ニュース「2030年温室効果ガス26%削減国連への約束草案決定」
・2015年6月5日ニュース「温室効果ガス26%削減政府原案パブリックコメントへ」