免疫細胞が感染を感知する仕組み解明

病原体を貪食(どんしょく)する免疫細胞の感染局所への集積に重要な役割を担う分子を、筑波大学医学医療系の渋谷彰(しぶや あきら)教授らが突き止めた。病原体の感染を免疫細胞がコントロールする仕組みの一端を分子レベルで初めて解明したもので、さまざまな重症の感染症に対する新しい予防法や治療法の開発につながる成果といえる。8月19日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

病原体を貪食(どんしょく)する免疫細胞の感染局所への集積に重要な役割を担う分子を、筑波大学医学医療系の渋谷彰(しぶや あきら)教授らが突き止めた。病原体の感染を免疫細胞がコントロールする仕組みの一端を分子レベルで初めて解明したもので、さまざまな重症の感染症に対する新しい予防法や治療法の開発につながる成果といえる。8月19日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

細菌やウイルス、寄生虫などの病原体が人体に侵入して感染すると、血液中を流れている炎症性単球と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し、感染局所に集積する。炎症性単球は、そこで病原体を貪食するなどして感染から体を守る重要な働きをしている。しかし、この免疫細胞がどのような仕組みで感染局所に集積するかについては長い間、謎だった。

研究グループは、感染した細菌から放出される菌体成分を感知した炎症性単球が、トル様受容体(TLR4)とメア2(MAIR2)と呼ばれる炎症性単球の細胞膜上に存在する分子を介して、炎症局所の血管の内壁に強固に接着し、感染局所に集積することを発見した。マウスの炎症性単球で詳しく解析すると、細菌から出るエンドトキシンをトル様受容体がキャッチしてメア2に結合し、その結果が細胞内に伝わり、最終的に接着因子のVLA4を不活性型から活性型に変え、炎症性単球が血管の内壁に強固に接着することがわかった。

血管内皮細胞に接着した炎症性単球は回転しながら、すり抜けて組織内に入った後、マクロファージに成熟して、細菌を貪食するシナリオが浮かんだ。トル様分子とメア2をそれぞれ欠損させたマウスで、細菌の感染に伴う敗血症を誘導すると、野生型マウスと比べ、約10倍も高い確率で死亡することを確かめ、今回の発見を裏付けた。

渋谷彰教授は「メア2を見つけていたことが重要な鍵になり、免疫細胞が病原体の感染局所を感知して集まってくる仕組みがわかった。その意義は大きい。炎症性単球の浸潤は感染症だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、がんなど多くの病気とも関連している。炎症性単球がそれぞれの局所への集積を自由に制御できれば、これらの病気の予防や治療の手がかりにもなるだろう」と話している。

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・筑波大学 プレスリリース

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