iPS細胞用いた再生医療の障壁除去する技術開発

iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)を用いた再生医療の障壁とされている腫瘍形成の恐れを排除する技術を、国立研究開発法人産業技術総合研究所と和光純薬工業が共同で開発、10日発表した。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)を用いた再生医療の障壁とされている腫瘍形成の恐れを排除する技術を、国立研究開発法人産業技術総合研究所と和光純薬工業が共同で開発、10日発表した。

この技術は、産業技術総合研究所(産総研)と和光純薬工業がこれまで研究開発してきたrBC2LCNと呼ばれるレクチン(糖結合タンパク質の総称)の一種を用いている。これまでの共同研究開発で、rBC2LCNがiPS細胞やES細胞の表面に結合することが突き止められていた(2013年3月28日ニュース「ヒトiPS細胞を生きたまま可視化」参照)。

産総研創薬基盤研究部門の舘野浩章主任研究員、平林淳(じゅん)首席研究員、幹細胞工学研究グループの小沼泰子主任研究員、伊藤弓弦(ゆずる)研究グループ長と和光純薬工業試薬化成品事業部 開発第一本部ライフサイエンス研究所による今回の成果は、rBC2LCNがiPS細胞やES細胞の表面に結合した後、細胞内に取り込まれるという現象を利用した。細胞内に取り込まれるとタンパク質合成を阻害し細胞死を引き起こす毒素をrBC2LCNの末端に融合させた組み換えタンパク質(薬剤融合型レクチン)をつくり、iPS細胞の培養液に添加した結果、iPS細胞が死ぬことが確かめられた。ES細胞でも同様の結果が得られた。

iPS細胞やES細胞を用いた再生医療では、iPS細胞、ES細胞をまず目的の細胞に分化させる手順が必要となる。ところが全てを分化することは困難で、未分化のiPS細胞、ES細胞が残ってしまうことが起こりうる。そのまま患者に移植した場合、残存するiPS細胞やES細胞が腫瘍を形成してしまう危険があるため、これらを取り除く必要がある。

薬剤融合型レクチンは、移植する細胞にわずかに含まれているiPS細胞やES細胞を選択的に除去することができることから、再生医療に用いる移植用細胞の製造や、創薬スクリーニングのための細胞調製など、さまざまな用途への応用が期待されるという。

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