北海道新十津川町で半世紀以上前に発見されたイルカの頭骨化石を再調査したところ、世界最古のマイルカ科の化石とわかったと、早稲田大学教育・総合科学学術院の村上瑞季(みずき)助手らが7月2日発表した。マイルカ科としてはこれまで、イタリアなどの鮮新世(533~262万年前)から見つかっている化石種が最古とされてきたが、今回の化石は少なくとも850万年よりも前で、マイルカの起源を一気に300万年以上さかのぼらせる発見となった。
北海道開拓記念館所蔵

北海道新十津川町で半世紀以上前に発見されたイルカの頭骨化石を再調査したところ、世界最古のマイルカ科の化石とわかったと、早稲田大学教育・総合科学学術院の村上瑞季(みずき)助手らが7月2日発表した。マイルカ科としてはこれまで、イタリアなどの鮮新世(533~262万年前)から見つかっている化石種が最古とされてきたが、今回の化石は少なくとも850万年よりも前で、マイルカの起源を一気に300万年以上さかのぼらせる発見となった。

秋田大学鉱山博物館の嶋田智恵子研究員と北海道・中川町エコミュージアムセンターの疋田吉識(よしのり)学芸員、北海道開拓記念館(札幌市)の添田雄二学芸員、早稲田大学の故平野弘道教授との共同研究で、5月6日付の米古脊椎動物学雑誌Journal of Vertebrate Paleontologyに発表し、世界最古のマイルカ科の化石であることを世界の古生物学者に宣言した。

この化石は1961年以前に、新十津川町の増毛層(850~1300万年前)から住民によって採取された。イルカの頭骨化石で、77年にスジイルカ属の化石として専門家によって記載され、最終的には北海道開拓記念館に所蔵されていた。

村上瑞季さんらは、この化石が出た地層が古いことから、世界最古のマイルカの化石の可能性が高いと見て、化石のクリーニング作業をやり直して骨の形態などを詳しく調べ、属や種の分類も見直した。

その結果、マイルカ科の中でも、既存の分類に当てはまらず、まったく別の新属であることがわかった。新しい化石の学名を「(新十津川町周辺の)樺戸地域から産出した暁のイルカ」という意味から、エオデルフィス・カバテンシスと名づけた。

分子系統学の研究で、マイルカ科の共通祖先は900~1100万年前にさかのぼると考えられており、最古の化石が530万年前という従来の古生物学とのギャップが大きかった。今回の研究で最古の化石が少なくとも850万年前と古くなったことから、このギャップは解消された。また、マイルカ科の系統樹を基に、古生物地理的にも解析し、マイルカ科が太平洋から大西洋など世界の海に進出していったことを跡付けた。

研究グループの村上瑞季さんは「6年がかりの研究で、化石を徹底的に解析した。頭骨と耳の骨の保存がよく、きれいに残っていたのがよかった。マイルカの仲間の起源や進化、世界の海洋への進出ルートなどを研究する手がかりになる」と話している。実物の化石は「北海道庁別館赤れんが庁舎2階・北海道の歴史ギャラリー」で7月2日~8月18日に展示されている。

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