がれきの隙間から入り込み被災者の呼吸などを検知できる災害調査ロボットの実証実験を、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が始める。
このロボットを開発したのは、株式会社タウ技研。細長い虫のような動きが可能なワーム型機構を備えた実用レベルのロボットとしては世界初という。トンネル災害や倒壊した建物のがれきなどの内部を探索するのに適した機能を持つ。通常はクローラ(無限軌道車)型の移動ロボットで走行し、急斜面、段差の箇所やがれきの隙間などになるとクローラ型の多関節ロボットの出番となる。先端に搭載されたセンサーが、崩落したがれきの下で身動きが取れなくなっている被災者の呼吸などの情報を収集する。
実証試験は、相模原市を中心とした生活支援ロボットの実用化と普及を目指した地域活性化総合特区「さがみロボット産業特区」内にある消防学校の模擬がれき施設で9月10日と17日に実施される。さがみロボット産業特区では、本来は規制されている屋外でのUWB(超広帯域無線)レーダーを用いた実証実験が可能。UWBレーダーは人間の呼吸や心拍を検出でき、災害時の生存者の探索に活用が期待されている。
2012年12月に山梨県大月市で起きた笹子トンネルの崩落事故をはじめ、1950年代~70年代の高度成長期に大量に整備された道路など社会インフラや産業インフラの老朽化に対する関心が高まっている。NEDOは2014年度に「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を立ち上げ、老朽化の状態を把握できるモニタリングシステムの技術開発と維持管理を行うロボット・非破壊検査装置の技術開発に加え、人の立ち入りが困難なインフラ災害現場で情報収集できるロボットの技術開発を進めている。
関連リンク
・新エネルギー・産業技術総合開発機構プレスリリース「立ち入り困難な崩落現場で活躍するロボットの実証実験を開始-実用レベルでは世界初のワーム型機構で被災者発見が可能に-」
サイエンスポータルの過去の関連記事
・2015年8月19日ニュース「橋梁点検ロボット開発の実物大実験施設完成」
・2013年9月18日ニュース「"戦略的イノベーション創造"の10課題」
・インタビュー・広瀬茂男 氏・東京工業大学 大学院理工学研究科 卓越教授(現株式会社ハイボット 取締役 CTO)「ロボット研究開発は目的を明確に」
第1回(2011年5月19日)「頓挫した原子力事故用プロジェクト」
第2回(2011年5月25日)「真に役立つロボットを」