原子力安全確保は不断の見直しから OECD原子力機関が報告書

報告書は、福島原発事故後これまでにNEAが指摘した改善項目に対し、加盟各国の取り組みが進んでいることを認めている。

経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)は2月29日、原子力安全確保は経験と研究を通し学ぶ中で進化し、不断に規制と実践を見直すことによって発展し続けるものであることを強調する報告書を公表した。

報告書「福島原子力発電所事故後5年の原子力安全」は、福島原発事故後これまでにNEAが指摘した改善項目に対し、加盟各国の取り組みが進んでいることを認めている。原発そのものに起因する内的ハザードだけでなく、津波のような外的ハザードに対する評価手法のさらなる発展・向上や、極端な自然事象時でも炉心から熱を除去できるような代替経路での冷却水の提供、受動的冷却機能の整備などさまざまな対応だ。

その上で「安全とは、運転経験の評価と研究を通じてわれわれが学ぶことにつれて発展するプロセスである」として、重大事象の際に利用できる多重的かつ多様な電源を確保する追加的な可搬型電源や新型または改良された固定設備の導入、格納容器ベントや水素の低減に関して原発の能力を向上させるための取り組み、使用済み燃料プールの水位と温度表示機能の多重性や冷却水供給の多様性確保、といったさまざまな課題に対して今後も引き続き努力を続ける必要を挙げている。

また「極限の状況下における確実なヒューマンパフォーマンスの重要性」も福島原発の重要な教訓として挙げ、原子力安全文化の重要性について理解し、根付かせる努力の必要をあらためて強調している。さらに深層防護やリスクの知見の活用の重要性もあらためて指摘した。

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